もともと、
フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」に逢いに、
神戸市立博物館で開催されているマウリッツハイス美術館展へ行くのが目的であった。
だが、
〈せっかく遠出するのだから、神戸近郊の山にも登りたい……〉
と、調べているうちに、
〈どうせなら、六甲全山縦走をやってみようか……〉
と考えるようになった。
六甲全山縦走路は、
六甲山系の西端の須磨から、東端の宝塚に至る、全行程56kmの縦走路のことで、
新田次郎の小説『孤高の人』で有名な加藤文太郎が、最初に歩いたとされる。
文太郎は、
早朝5時に、会社の寮があった神戸市和田岬を出発し、
須磨(敦盛塚)から入山。
宝塚までの六甲全山を縦走した後、
街道を西宮経由で神戸に入り、
翌深夜2時に和田岬に帰ってきたそうだ。
その歩行距離は100kmを超えていたとのこと。
にもかかわらず、
翌朝は平気な顔で出勤したというから、驚きの健脚であった。
その後の単独行者としての文太郎の功績を讃える意味と、
関西ハイカーたちのひとつの目標として、
毎年、11月の第2日曜日と、23日(勤労感謝の日)に、
六甲全山縦走大会が開催されている。
1975年に神戸市主催で始まり、
40年近い歴史がある大会ということもあって、
毎年、各日2000名ずつの出場者を募集しているが、
応募者が殺到して、すぐに締め切りになるそうだ。
当然のことながら、
私は六甲全山縦走大会への応募はしていないし、
大勢で何かをやるのは苦手だし、
伝説の単独行者であった加藤文太郎所縁の縦走路なので、
私は単独で歩いてみたいと思った。
まず入手したのは、
神戸市市民参画推進局文化交流部が発行している「六甲全山縦走マップ」。
六甲全山縦走路は、山だけでなく市街地も歩くので、初めて挑む人は必携の地図。
六甲全山縦走大会の公式HPなどを検索してみると、
事前に何度か実地調査(特に夜間となる区間)を積み重ねて、
時間とペース配分をつかむことが必要。
全コースを1/3、または1/2に区切ってトレーニングすることが有効です。
とアドバイスが書いてあるが、佐賀にいる私としては、
地図を見てコースを想像するしかない。
いきなりのぶっつけ本番で歩かなければならないので、
特にヘッドランプを点灯して歩かなければならない区間をよく調査した。
長距離を歩くので、
六甲全山縦走大会に出場する人は、
誰もがトレイルランニングのような格好で、
靴も登山靴ではなく、トレランシューズやアプローチシューズの人が多いそうだ。
しかし私の場合は、単独だし、
いろんな装備を持って歩かなければならないので、
ザックも重くなるし、靴も登山靴の方がイイと思った。
よって、格好は、普段の山登りのものとなった。(笑)
行動食には、
文太郎が好きだったという甘納豆と小魚煮干し(アーモンド小魚で代用)を用意。
11月7日(水)
丑三つ時を少し過ぎた頃、(笑)
須磨の海岸に佇む怪しげな人物。(爆)
登山者の姿で、
海岸をウロウロしている中年男。
まさに「変なおじさん」である。
今は真っ暗であるが、昨日下見したときは、こんな感じであった。
美しい須磨海岸である。
3:47
登山靴を海水に浸す。
いざ、出発。
4:16
六甲全山縦走の本来の起点である須磨浦公園を通過。
4:23
舗装された道から登山道へ。
前日に下見したときには、こんな感じだった。
4:46
「鉢伏山」(260m)山頂に到着。
山頂は、須磨浦山上遊園のすぐ傍にあった。
地図には標高246mとなっているが、どちらが正しいのだろう?
4:58
「旗振山」(253m)山頂に到着。
こちらも地図では標高252.6m。
背後に石に、「正面 鉢伏山」とあるが、
ここでいう「正面」は、向こう側ではなく、手前側の意味である。
5:00
旗振茶屋を通過。
夜景の見える場所があり、しばし見入った。
明るかったら、美しい道ではないかと思った。
5:14
「鉄拐山」(234m)山頂に到着。
山頂にベンチがあった。
5:27
おらが茶屋手前。
地元の毎日登山者のための集会所のようなものがあった。
こんな時間なのに、続々と地元の方々が登ってくるので驚いた。
5:31
おらが茶屋を通過。
5:34
「高倉山」(200.12m)山頂を通過。
ここは地図には載っていない。
長い階段を下って行く。
住宅地を通り抜け、
5:53
400段の階段にとりつく。
階段の途中で振り向く。
次第に明るくなってきた。
6:05
「栂尾山」(274m)山頂を通過。
かなり明るくなってきた。
須磨アルプスは明るくなってから通過したいと思っていたので、ちょっと安心。
6:19
「横尾山」(312.1m)山頂に到着。
6:24
須磨アルプスに突入。
まずは急激な下り。
須磨アルプスの核心部にさしかかる。
注意しながら進む。
写真撮影していたら、地元の人らしい若者が追い抜いていった。
人を入れて撮った方が岩山の大きさが把握できるので、パチリ。
いったん下り、登り返した所で、振り返る。
なかなか素敵な場所だ。
6:40
「馬の背」に到着。
しばし風景を楽しんだ後、馬の背を通過。
距離は短いが、両側は切れ落ちている。
6:54
「東山」(253m)山頂を通過。
7:18
妙法寺を通過。
妙法寺を過ぎてすぐの交差点から、右側にローソンが見えた。
7:20~7:26
ローソンに立ち寄り、デジカメのメモリーカードを購入。
市街地を抜け、
高取山にとりつく。
イノシシ出没注意の看板。
でも、全縦走路において、イノシシとの遭遇はなかった。
山頂が近くなると、歩きやすい道に変わる。
応援の言葉が有り難い。
荒熊神社に三角点があるので、立ち寄る。
8:03
三角点に到着。
高取山山頂は、少し離れた場所にある。
8:12
「高取山」(328m)山頂。
高取山は、加藤文太郎がよく登っていた山。
『孤高の人』にもしばしば登場する。
山頂からは、文太郎が勤めていた三菱内燃機製作所(現在の三菱重工業)と社員寮があった和田岬(クレーンが見える辺り)が見えた。
歴史を感じさせる六甲全山縦走路の道標を横目に見ながら軽快に歩いて行く。
8:19
月見茶屋を通過。
再び市街地に下り、
8:50~8:57
(須磨から出発する場合)六甲全山縦走路においての最後のコンビニに立ち寄る。
ここで、ここから先の分の食料を調達する。
9:09
鵯越駅前を通過。
鵯越駅横から菊水山へ向かう自然豊かな登山道があり、ホッ。
道の横には清流が流れていた。
9:30
鈴蘭台下水処理場を通過。
ここでトイレを借りることができる。(案内プレートあり)
所々に美しく紅葉した木があって、楽しい。
遠くに菊水山の山頂が見えてきた。
9:49
「菊水山頂へあと900m」の看板前を通過。
ここからの急坂が苦しかった。
六甲全山縦走路で一番の苦しさかもしれない。
コウヤボウキの花を発見。
キツイ急坂の途中で出逢ったので、
美しい一輪の花に、心が和まされ、励まされた。
10:17
「菊水山」(458.8m)山頂に到着。
ここまでは比較的順調に来ることができた。
しかし、この後、
仕事疲れ、睡眠不足、歩き疲れなどから、ペースが急激に落ちてしまう。
そして、とうとう、とんでもないミスをおかしてしまう。
迫り来る夜の闇、失われていく体力、焦る心……
果たして、宝塚まで歩くことはできるのか……(②へ続く)
フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」に逢いに、
神戸市立博物館で開催されているマウリッツハイス美術館展へ行くのが目的であった。
だが、
〈せっかく遠出するのだから、神戸近郊の山にも登りたい……〉
と、調べているうちに、
〈どうせなら、六甲全山縦走をやってみようか……〉
と考えるようになった。
六甲全山縦走路は、
六甲山系の西端の須磨から、東端の宝塚に至る、全行程56kmの縦走路のことで、
新田次郎の小説『孤高の人』で有名な加藤文太郎が、最初に歩いたとされる。
文太郎は、
早朝5時に、会社の寮があった神戸市和田岬を出発し、
須磨(敦盛塚)から入山。
宝塚までの六甲全山を縦走した後、
街道を西宮経由で神戸に入り、
翌深夜2時に和田岬に帰ってきたそうだ。
その歩行距離は100kmを超えていたとのこと。
にもかかわらず、
翌朝は平気な顔で出勤したというから、驚きの健脚であった。
その後の単独行者としての文太郎の功績を讃える意味と、
関西ハイカーたちのひとつの目標として、
毎年、11月の第2日曜日と、23日(勤労感謝の日)に、
六甲全山縦走大会が開催されている。
1975年に神戸市主催で始まり、
40年近い歴史がある大会ということもあって、
毎年、各日2000名ずつの出場者を募集しているが、
応募者が殺到して、すぐに締め切りになるそうだ。
当然のことながら、
私は六甲全山縦走大会への応募はしていないし、
大勢で何かをやるのは苦手だし、
伝説の単独行者であった加藤文太郎所縁の縦走路なので、
私は単独で歩いてみたいと思った。
まず入手したのは、
神戸市市民参画推進局文化交流部が発行している「六甲全山縦走マップ」。
六甲全山縦走路は、山だけでなく市街地も歩くので、初めて挑む人は必携の地図。
六甲全山縦走大会の公式HPなどを検索してみると、
事前に何度か実地調査(特に夜間となる区間)を積み重ねて、
時間とペース配分をつかむことが必要。
全コースを1/3、または1/2に区切ってトレーニングすることが有効です。
とアドバイスが書いてあるが、佐賀にいる私としては、
地図を見てコースを想像するしかない。
いきなりのぶっつけ本番で歩かなければならないので、
特にヘッドランプを点灯して歩かなければならない区間をよく調査した。
長距離を歩くので、
六甲全山縦走大会に出場する人は、
誰もがトレイルランニングのような格好で、
靴も登山靴ではなく、トレランシューズやアプローチシューズの人が多いそうだ。
しかし私の場合は、単独だし、
いろんな装備を持って歩かなければならないので、
ザックも重くなるし、靴も登山靴の方がイイと思った。
よって、格好は、普段の山登りのものとなった。(笑)
行動食には、
文太郎が好きだったという甘納豆と小魚煮干し(アーモンド小魚で代用)を用意。
11月7日(水)
丑三つ時を少し過ぎた頃、(笑)
須磨の海岸に佇む怪しげな人物。(爆)
登山者の姿で、
海岸をウロウロしている中年男。
まさに「変なおじさん」である。
今は真っ暗であるが、昨日下見したときは、こんな感じであった。
美しい須磨海岸である。
3:47
登山靴を海水に浸す。
いざ、出発。
4:16
六甲全山縦走の本来の起点である須磨浦公園を通過。
4:23
舗装された道から登山道へ。
前日に下見したときには、こんな感じだった。
4:46
「鉢伏山」(260m)山頂に到着。
山頂は、須磨浦山上遊園のすぐ傍にあった。
地図には標高246mとなっているが、どちらが正しいのだろう?
4:58
「旗振山」(253m)山頂に到着。
こちらも地図では標高252.6m。
背後に石に、「正面 鉢伏山」とあるが、
ここでいう「正面」は、向こう側ではなく、手前側の意味である。
5:00
旗振茶屋を通過。
夜景の見える場所があり、しばし見入った。
明るかったら、美しい道ではないかと思った。
5:14
「鉄拐山」(234m)山頂に到着。
山頂にベンチがあった。
5:27
おらが茶屋手前。
地元の毎日登山者のための集会所のようなものがあった。
こんな時間なのに、続々と地元の方々が登ってくるので驚いた。
5:31
おらが茶屋を通過。
5:34
「高倉山」(200.12m)山頂を通過。
ここは地図には載っていない。
長い階段を下って行く。
住宅地を通り抜け、
5:53
400段の階段にとりつく。
階段の途中で振り向く。
次第に明るくなってきた。
6:05
「栂尾山」(274m)山頂を通過。
かなり明るくなってきた。
須磨アルプスは明るくなってから通過したいと思っていたので、ちょっと安心。
6:19
「横尾山」(312.1m)山頂に到着。
6:24
須磨アルプスに突入。
まずは急激な下り。
須磨アルプスの核心部にさしかかる。
注意しながら進む。
写真撮影していたら、地元の人らしい若者が追い抜いていった。
人を入れて撮った方が岩山の大きさが把握できるので、パチリ。
いったん下り、登り返した所で、振り返る。
なかなか素敵な場所だ。
6:40
「馬の背」に到着。
しばし風景を楽しんだ後、馬の背を通過。
距離は短いが、両側は切れ落ちている。
6:54
「東山」(253m)山頂を通過。
7:18
妙法寺を通過。
妙法寺を過ぎてすぐの交差点から、右側にローソンが見えた。
7:20~7:26
ローソンに立ち寄り、デジカメのメモリーカードを購入。
市街地を抜け、
高取山にとりつく。
イノシシ出没注意の看板。
でも、全縦走路において、イノシシとの遭遇はなかった。
山頂が近くなると、歩きやすい道に変わる。
応援の言葉が有り難い。
荒熊神社に三角点があるので、立ち寄る。
8:03
三角点に到着。
高取山山頂は、少し離れた場所にある。
8:12
「高取山」(328m)山頂。
高取山は、加藤文太郎がよく登っていた山。
『孤高の人』にもしばしば登場する。
山頂からは、文太郎が勤めていた三菱内燃機製作所(現在の三菱重工業)と社員寮があった和田岬(クレーンが見える辺り)が見えた。
歴史を感じさせる六甲全山縦走路の道標を横目に見ながら軽快に歩いて行く。
8:19
月見茶屋を通過。
再び市街地に下り、
8:50~8:57
(須磨から出発する場合)六甲全山縦走路においての最後のコンビニに立ち寄る。
ここで、ここから先の分の食料を調達する。
9:09
鵯越駅前を通過。
鵯越駅横から菊水山へ向かう自然豊かな登山道があり、ホッ。
道の横には清流が流れていた。
9:30
鈴蘭台下水処理場を通過。
ここでトイレを借りることができる。(案内プレートあり)
所々に美しく紅葉した木があって、楽しい。
遠くに菊水山の山頂が見えてきた。
9:49
「菊水山頂へあと900m」の看板前を通過。
ここからの急坂が苦しかった。
六甲全山縦走路で一番の苦しさかもしれない。
コウヤボウキの花を発見。
キツイ急坂の途中で出逢ったので、
美しい一輪の花に、心が和まされ、励まされた。
10:17
「菊水山」(458.8m)山頂に到着。
ここまでは比較的順調に来ることができた。
しかし、この後、
仕事疲れ、睡眠不足、歩き疲れなどから、ペースが急激に落ちてしまう。
そして、とうとう、とんでもないミスをおかしてしまう。
迫り来る夜の闇、失われていく体力、焦る心……
果たして、宝塚まで歩くことはできるのか……(②へ続く)