一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

最近、驚いたこと② ……十朱幸代の自伝『愛し続ける私』を読んで驚いたこと……

2018年11月29日 | 最近、驚いたこと


60歳を過ぎると、
もう大抵のことには驚かなくなる。
それはある意味、哀しいことだ。
できれば、いつも驚くことのできる新鮮な心を持っていたい。

そんな私であるので、
驚くことはめったにないのだが、
たまに、少し驚くこともある。
先日は、「最近、驚いたこと」として、
……三重野慶の超絶リアリズムに観る“一瞬と永遠”……
と題して、写真と見まがうばかりの写実絵画を紹介した。
そのときは、このブログ「一日の王」の新しいカテゴリーにしようと思わなかったが、
数日前に十朱幸代の自伝『愛し続ける私』を読んだとき、


小さな驚きがあった。
そんな日々の小さな驚きを、
このブログに記していくのも面白いのではないかと考えた。
ブログ「一日の王」は、
私自身のための“忘備録”でもあるのだから……

ということで、
「最近、驚いたこと」というカテゴリーを新設し、
折々に「驚いたこと」を記していきたいと思う。
今回は、先ほど紹介した、
十朱幸代の自伝『愛し続ける私』を読んだときに驚いたことを書いてみたい。
たわいのないことなので、
暇なときに読み流してもらえればと思う。

私は女優の自伝が好きで、
出版されると、よく読んでいる。
十朱幸代の自伝『愛し続ける私』は、
今年(2018年)10月に出版されたのだが、


小坂一也との15年にわたる恋を始め、
過去のいくつもの恋が書かれており、
相手の名前は書かれていないものの、
〈あの大物男優も十朱幸代にプロポーズしていたのか……〉
などと想像しながら面白く読んだ。(コラコラ)


私が「驚いたこと」とは、
その十朱幸代の恋の相手ではなく、
まったく思いもよらぬ項目に潜んでいた。
それは、十朱幸代が過去に出したレコードのタイトル名にあった。


ご存じの方は多くはないと思いますが、私、歌の仕事もさせていただきました。大ヒットはしなかったけれど、今でも私の歌を覚えてくださってる方がいると、うれしくなります。
76年、当時はテレビの歌番組全盛の時代で、それを目にするたびに、歌手っていいなあ……、と思っていたのです。歌手はうたっている間、たったひとりにずっとスポットライトが当たっていて、まるでひとり芝居。いいなあ! と思ったところにいいタイミングで、私にも歌のオファーがあったのです。
(101頁)


その中の一曲『セイタカアワダチ草』を紹介しているのだが、
そのレコードのタイトル名に驚かされたのだ。
スミレとか、サクラとか、忘れな草など、
美しい花の名を冠した歌はたくさんあるが、
よりにもよって、あの悪名高い『セイタカアワダチ草』って……
驚くと共に、
〈どんな歌なんだろう……〉
という興味が湧いた。


サビのフレーズが印象的な曲です。
♪それ~はないじゃない~、アハハ~ハハハハ~ン♪
恋仲になっておきながら、沖縄の基地に行ってしまった外国の男の人を想っている女の歌。外来種の草・セイタカアワダチソウを、その男の人にたとえているんですね。ちょっと大人の、恋に破れた女の歌です。だけど、悲しくない。強がりながら、終わった恋を振り返る。カラッとした余韻を感じさせる歌でした。
(103頁)



セイタカアワダチ草

作詞・吉岡治 作曲・岸本健介 歌・十朱幸代

誰かとどこかへ 折合いつけて
ポプ・コーンみたいに はじけたか
それとも生活(くらし)に 見切りをつけて
帰っていったか 故郷へ

※ それはないじゃない
あいつに惚れて あずけた夢を
わかってくれとは 言わないが
あたしにゃ沖縄 遠すぎる ※

コバルト・ブルーの あいつの街に
燃えるか セイタカアワダチ草
手紙のひとつも 出したいけれど
基地(ベース)の区別も つきゃしない

それはないじゃない
あいつに尽し 疲れた夢を
わかってくれとは 言わないが
あたしにゃ沖縄 遠すぎる

(※ くりかえし )


作詞の吉岡治は、
森進一『薄雪草』、
大川栄策『さざんかの宿』、
島倉千代子『鳳仙花』
など、花の名をタイトルに使ったヒット曲も多いし、
石川さゆり『天城越え』、
石川セリ『八月の濡れた砂』、
五木ひろし『細雪』、
瀬川瑛子『命くれない』、
美空ひばり『真赤な太陽』や、
山下達郎がザ・キング・トーンズに楽曲提供し、
山下達郎自身も歌っている『LET'S DANCE BABY』なども作詞している名作詞家なのである。


その名作詞家が、『セイタカアワダチ草』とは……
しかも、この“恋に破れた女の歌”が、当時、NHKの「みんなのうた」でも流れていたというのだ。
そして、十朱幸代は、この後も歌に全力を注ぎ、
4枚ものLPレコードを出したとか。
驚きは尽きない。

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