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昔……
とは言っても、それほど昔ではないのだが、
ある年の秋に、
私の知り合いの(とても素敵な)女性が、こう言ったことがある。
「秋になると、小説では宮本輝の『錦繍』を読みたくなるし、映画では『恋人までの距離(ディスタンス)』を鑑賞したくなるわ」
どちらも私の好きな作品だったので、
大いに賛同したものだった。
『恋人までの距離(ディスタンス)』※は、
1995年に公開された映画で、
列車のなかで出逢った、
アメリカ人のジェシーと、フランス人のセリーヌが、
ウィーンの街を歩きながら、
夜明けまでの時間を過ごし、
再会を約束して別れるまでを描いた作品。
とても素敵な映画で、
特に旅好きの人にとっては、
抱きしめたくなるような愛すべき映画だった。
ことに、セリーヌを演じたジュリー・デルピーの美しさは格別で、
男性はもちろん、
女性にもその美を称賛する人が多かったことを憶えている。
私など、ジュリー・デルピーに逢いたくて、
その後の作品も見続けたと言っていい。
※劇場公開からビデオ発売までの邦題は『恋人までの距離(ディスタンス)』だったが、『ビフォア・サンセット』が公開されると、それまで発売されていなかったDVDのリリースが決定し、新しいタイトルとして『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(ディスタンス)』に改題された。
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【ジュリー・デルピー】
1969年12月21日パリ生まれ。
両親は共に役者。
14歳でジャン=リュック・ゴダール監督の『ゴダールの探偵』(1985)で映画デビュー。
ベルトラン・タベルニエやアグニエシュカ・ホランドの作品でキャリアを築く。
米ニューヨーク大学の映画学科やアクターズ・スタジオに通い、
ハリウッド作品にも出演。
クシシュトフ・キエシロフスキー監督の『トリコロール』3部作の2作目「白の愛」(1994)で主演を務めた。
リチャード・リンクレイター監督作で、イーサン・ホークと共演した『恋人までの距離(ディスタンス)』(1995)が世界的にヒット、
続編『ビフォア・サンセット』では脚本にも参加し、
リンクレイター監督、ホーク、キム・クリザンとともにアカデミー脚色賞にノミネートされた。
2001年にアメリカの市民権を取得。
2002年に映画『Looking for Jimmy』を監督。
2003年には歌手としてアルバムCD「Julie Delpy」も発表した。
主演・脚本・監督作『パリ、恋人たちの2日間』(2007)、
続編『ニューヨーク、恋人たちの2日間』(2012)を制作。
現在の生活拠点はLAとパリ。
息子がひとり。
フランス語・英語・イタリア語に堪能。
ものすごく多才な女優で、
脚本はもちろん、監督もすれば、歌手としてCDも出す。
『ビフォア・サンセット』で歌った自作の「Let me sing you a waltz」は秀逸。
今年(2014年)の1月18日、
『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(ディスタンス)』、
『ビフォア・サンセット』に続く、
第3弾『ビフォア・ミッドナイト』が公開された。
いつもは数か月遅れでしか上映しない佐賀のシアターシエマが、
嬉しいことに全国公開日と同じ日に公開したので、
喜び勇んで見に行ったのだった。
列車のなかで出逢った、
アメリカ人のジェシーと、フランス人のセリーヌが、
ウィーンの街を歩きながら、
‟夜明け”までの時間を過ごし、
再会を約束して別れるまでを描いた『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(ディスタンス)』。
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それから9年後、
ジェシーはウィーンでの一夜を小説に綴り、
作家として訪れたパリの書店でセリーヌと再会する。
ふたりが過ごした‟夕暮れ”までのわずかな時間を描く『ビフォア・サンセット』。
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そして、さらに9年後、
美しいギリシャの海辺の町を舞台に、
‟真夜中”までお互いの思いを語り合う本作『ビフォア・ミッドナイト』。
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前作『ビフォア・サンセット』では、
それぞれにパートナーがいながらも、
お互いへの感情に気づいてしまった二人。
あの後、どんな人生を歩いて来たんだろう……
パンフレットには、シリーズ最終章と謳ってあったので、
この3部作がどのような結末を迎えるのかも楽しみだった。
『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(ディスタンス)』の結末が、
『ビフォア・サンセット』で語られていたので、
『ビフォア・サンセット』の結末も、
『ビフォア・ミッドナイト』で語れると思いきや、
いきなり
「えっ、そうなってたの?」
と驚かされる。
予告編を見ればすぐに解ることではあるが、
あえてここには書かずにいようと思う。
『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(ディスタンス)』で出逢い、
『ビフォア・サンセット』で再会し、
『ビフォア・ミッドナイト』で本物の愛へとたどり着く。
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それにしても、この『ビフォア・ミッドナイト』でのジュリー・デルピーには驚嘆。
女優魂といったものを見せつけられる。
いやはや、ジュリー・デルピーはすごい女優だ。
『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(ディスタンス)』では天使のような美を、
『ビフォア・サンセット』では洗練された大人の美を、
『ビフォア・ミッドナイト』では成熟した中年女性の美を……
とでも表現しておこうか。
本作を見て、益々ジュリー・デルピーが好きになってしまった。
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前二作と同様、本作でも、ジェシーとセリーヌの会話で物語が展開する。
会話がすべてと言っていい作品だが、
その会話のなかに、ユーモアがあり、秘めた思いがあり、哲学がある。
そして、会話が途切れたときの静寂に、哀しみがあり、愛がある。
何度でも見たくなる作品である。
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願わくは、
さらに9年後、
そのまた9年後も、
続編を作って欲しいと思う。
あの天使のようだったジュリー・デルピーが、
おばあさんになるまでを見たい気がする。
良い映画に出逢うことができた。
良い女優に出逢うことができた。
人生の歓びは、こういうところにもある。
とは言っても、それほど昔ではないのだが、
ある年の秋に、
私の知り合いの(とても素敵な)女性が、こう言ったことがある。
「秋になると、小説では宮本輝の『錦繍』を読みたくなるし、映画では『恋人までの距離(ディスタンス)』を鑑賞したくなるわ」
どちらも私の好きな作品だったので、
大いに賛同したものだった。
『恋人までの距離(ディスタンス)』※は、
1995年に公開された映画で、
列車のなかで出逢った、
アメリカ人のジェシーと、フランス人のセリーヌが、
ウィーンの街を歩きながら、
夜明けまでの時間を過ごし、
再会を約束して別れるまでを描いた作品。
とても素敵な映画で、
特に旅好きの人にとっては、
抱きしめたくなるような愛すべき映画だった。
ことに、セリーヌを演じたジュリー・デルピーの美しさは格別で、
男性はもちろん、
女性にもその美を称賛する人が多かったことを憶えている。
私など、ジュリー・デルピーに逢いたくて、
その後の作品も見続けたと言っていい。
※劇場公開からビデオ発売までの邦題は『恋人までの距離(ディスタンス)』だったが、『ビフォア・サンセット』が公開されると、それまで発売されていなかったDVDのリリースが決定し、新しいタイトルとして『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(ディスタンス)』に改題された。
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【ジュリー・デルピー】
1969年12月21日パリ生まれ。
両親は共に役者。
14歳でジャン=リュック・ゴダール監督の『ゴダールの探偵』(1985)で映画デビュー。
ベルトラン・タベルニエやアグニエシュカ・ホランドの作品でキャリアを築く。
米ニューヨーク大学の映画学科やアクターズ・スタジオに通い、
ハリウッド作品にも出演。
クシシュトフ・キエシロフスキー監督の『トリコロール』3部作の2作目「白の愛」(1994)で主演を務めた。
リチャード・リンクレイター監督作で、イーサン・ホークと共演した『恋人までの距離(ディスタンス)』(1995)が世界的にヒット、
続編『ビフォア・サンセット』では脚本にも参加し、
リンクレイター監督、ホーク、キム・クリザンとともにアカデミー脚色賞にノミネートされた。
2001年にアメリカの市民権を取得。
2002年に映画『Looking for Jimmy』を監督。
2003年には歌手としてアルバムCD「Julie Delpy」も発表した。
主演・脚本・監督作『パリ、恋人たちの2日間』(2007)、
続編『ニューヨーク、恋人たちの2日間』(2012)を制作。
現在の生活拠点はLAとパリ。
息子がひとり。
フランス語・英語・イタリア語に堪能。
ものすごく多才な女優で、
脚本はもちろん、監督もすれば、歌手としてCDも出す。
『ビフォア・サンセット』で歌った自作の「Let me sing you a waltz」は秀逸。
今年(2014年)の1月18日、
『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(ディスタンス)』、
『ビフォア・サンセット』に続く、
第3弾『ビフォア・ミッドナイト』が公開された。
いつもは数か月遅れでしか上映しない佐賀のシアターシエマが、
嬉しいことに全国公開日と同じ日に公開したので、
喜び勇んで見に行ったのだった。
列車のなかで出逢った、
アメリカ人のジェシーと、フランス人のセリーヌが、
ウィーンの街を歩きながら、
‟夜明け”までの時間を過ごし、
再会を約束して別れるまでを描いた『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(ディスタンス)』。
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それから9年後、
ジェシーはウィーンでの一夜を小説に綴り、
作家として訪れたパリの書店でセリーヌと再会する。
ふたりが過ごした‟夕暮れ”までのわずかな時間を描く『ビフォア・サンセット』。
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そして、さらに9年後、
美しいギリシャの海辺の町を舞台に、
‟真夜中”までお互いの思いを語り合う本作『ビフォア・ミッドナイト』。
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前作『ビフォア・サンセット』では、
それぞれにパートナーがいながらも、
お互いへの感情に気づいてしまった二人。
あの後、どんな人生を歩いて来たんだろう……
パンフレットには、シリーズ最終章と謳ってあったので、
この3部作がどのような結末を迎えるのかも楽しみだった。
『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(ディスタンス)』の結末が、
『ビフォア・サンセット』で語られていたので、
『ビフォア・サンセット』の結末も、
『ビフォア・ミッドナイト』で語れると思いきや、
いきなり
「えっ、そうなってたの?」
と驚かされる。
予告編を見ればすぐに解ることではあるが、
あえてここには書かずにいようと思う。
『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(ディスタンス)』で出逢い、
『ビフォア・サンセット』で再会し、
『ビフォア・ミッドナイト』で本物の愛へとたどり着く。
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それにしても、この『ビフォア・ミッドナイト』でのジュリー・デルピーには驚嘆。
女優魂といったものを見せつけられる。
いやはや、ジュリー・デルピーはすごい女優だ。
『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(ディスタンス)』では天使のような美を、
『ビフォア・サンセット』では洗練された大人の美を、
『ビフォア・ミッドナイト』では成熟した中年女性の美を……
とでも表現しておこうか。
本作を見て、益々ジュリー・デルピーが好きになってしまった。
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前二作と同様、本作でも、ジェシーとセリーヌの会話で物語が展開する。
会話がすべてと言っていい作品だが、
その会話のなかに、ユーモアがあり、秘めた思いがあり、哲学がある。
そして、会話が途切れたときの静寂に、哀しみがあり、愛がある。
何度でも見たくなる作品である。
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願わくは、
さらに9年後、
そのまた9年後も、
続編を作って欲しいと思う。
あの天使のようだったジュリー・デルピーが、
おばあさんになるまでを見たい気がする。
良い映画に出逢うことができた。
良い女優に出逢うことができた。
人生の歓びは、こういうところにもある。