映画『海街diary』(2015年6月13日公開)で広瀬すずと出逢って以来、
その演技力、
その目力、
その笑顔に、
すっかり魅せられてしまった。
だから、『海街diary』以降の彼女の出演作はすべて見るつもりでいたので、
今年(2016年)公開された、
『ちはやふる 上の句』(3月19日公開)
『ちはやふる 下の句』(4月29日公開)
はもちろん見たし、
本作『四月は君の嘘』も公開を心待ちにしていたのだ。
原作は、
第37回講談社漫画賞に輝き、アニメ版も放送された新川直司による人気コミック。
母の死をきっかけにピアノが弾けなくなった天才ピアニストの少年と、
自由奔放なヴァイオリニストの少女が、
互いの才能を認め合い成長していく姿を、
切ない恋模様を交えて描いた青春ラブストーリー。
広瀬すずの他に、
私の好きな板谷由夏や、檀れい、
それから、最近気になっている若手女優・石井杏奈も出演しているとのこと。
ワクワクしながら映画館へ出掛けたのだった。
完全無欠、正確無比、ヒューマンメトロノームと称された、
類いまれな才能を持つ天才ピアニスト有馬公生(山崎賢人)は、
母(壇れい)の死を境にピアノが弾けなくなってしまう。
高校2年生となった4月のある日、公生は、
幼なじみの澤部椿(石井杏奈)と、
渡亮太(中川大志)に誘われ、
ヴァイオリニスト・宮園かをり(広瀬すず)と出会う。
勝気で、自由奔放、まるで空に浮かぶ雲のように掴みどころのない性格……
そんなかをりの自由で豊かで楽しげな演奏に惹かれていく公生。
「友人A君、君を私の伴奏者に任命します」
かをりの強引な誘いをきっかけに、
公生は、ピアノと“母との思い出”に再び向き合い始める。
ようやく動き出した公生の時間。
しかし、公生はある時、彼女の秘密を知ってしまう。
いったい彼女の秘密とは……
映画を見に行く前に、
「Yahoo!映画」のユーザーレビューを覗いてみたのだが、
その点数の低さに、ちょっと驚いてしまった。
内容を見てみると、やはり、原作(漫画・TVアニメ)ファンが多く、
原作と主人公のイメージが違う、
原作のストーリーが(登場人物も)かなりカットされている……等々、
漫画やアニメを実写化したときによく見かけるレビューばかり。(笑)
まあ、原作を漫画やアニメにした場合の宿命といえる現象である。
私の場合、
原作の漫画は読んでいないし、
アニメ化されたTVも観ていない。
だから、漫画やアニメファンの低評価もまったく気にならないので、
純粋に、映画を楽しもうと、ゆったりとした気持ちで映画を鑑賞したのだった。
で、見た感想はというと、
これが、すこぶる良かった。
ストーリーはベタだし、
これといって新鮮味はないのだが、
登場人物が魅力的だし、
クラシックをベースとした物語なので、
いつもクラシック音楽が流れている感じで、
とても心地良かった。
キャストでは、なんといっても、広瀬すずが素晴らしかった。
彼女がスクリーンに現れただけで、ちょっと感動してしまうくらい、
オーラというか、後光というか、
女優としての輝きが半端なくあり、
彼女を見ているだけで、幸せな気持ちになった。
こんな女優は本当に稀だと思う。
今週末には、『怒り』(2016年9月17日)の公開が控えており、
こちらも絶対見に行くつもり。
李相日監督からかなりしごかれて演技しているようなので、
『四月は君の嘘』とは違った広瀬すずを見ることができるだろう。
来年(2017年)春に公開予定の、
『チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』
では、広瀬すず主演作ということなので、こちらも楽しみ。
女子高生を演ずる青春映画から、
迫真の演技で魅せる文芸作品まで、
いろんなジャンルの映画で楽しませてくれる広瀬すずに、
今後も期待大である。
有馬公生を演じた山崎賢人も良かった。
母の死にまつわる思い出がトラウマとなり、
ピアノが弾けなくなった天才ピアニストの役であったが、
これまで演じてきた役柄と違い、
ネガティブで、ちょっと気弱で、
あまり見たことのない山崎賢人を見ることができた。
広瀬すずを引き立てつつも、
自分の存在はしっかりと主張した演技で、
男優としての成長が感じられた。
有馬公生の幼なじみの澤部椿を演じた石井杏奈も良かった。
E-girlsのメンバーでもある石井杏奈を初めてスクリーンで見たのは、
『ソロモンの偽証』前篇・事件(2015年3月7日)
『ソロモンの偽証』後篇・裁判(2015年4月11日)
での三宅樹理役であったが、
とても重要な役で、
強く印象に残った。
数日前に最終回を迎えたTVドラマ『仰げば尊し』でも、
ヒロインともいえる吹奏楽部部長・有馬渚役での演技が光っていた。
本作『四月は君の嘘』でも、
幼なじみの有馬公生への思いを胸に秘めたナイーブな女子高生を演じ、
せつない乙女心を上手く表現していた。
公生の母・有馬早希を演じた檀れい。
自分が死んだ後も公生が音楽で生きていけるようにと、
厳しく指導していた生前の母を演じ、
出演シーンは少ないものの、
子を思う母親を好演していた。
公生の母・有馬早希とは音大の同期で、日本屈指のピアニスト・瀬戸紘子を演じた板谷由夏。
早希が亡くなって以来、何かと公生の面倒をみているという役で、
出演シーンも多く、
公生を支えると共に、
本作も脇からしっかり支えていた。
監督は、新城毅彦。
『あすなろ白書』(1993年)、『イグアナの娘』(1996年)、『君の手がささやいている』(1997年)、『アルジャーノンに花束を』(2002年)などの人気TVドラマを演出し、
映画『ただ、君を愛してる』(2006年)、『潔く柔く きよくやわく』(2013年)などを監督した恋愛映画の名手としての手腕が本作にも活かされ、
純粋で、切ないラブストーリーに仕上げている。
脚本は、
TVドラマ『砂の器』や『ストロベリーナイト』シリーズなど実績がある龍居由佳里。
原作ファンからの批判はあるものの、
私から見たら、
全11巻のコミックを、よく2時間ほどのストーリーにまとめたと思う。
これは、できそうで、なかなかできないものだ。
タイトルにもなっている、
宮園かをりがついた“嘘”は、
あまりにも切なく、愛おしい。
ラスト近くに流れるショパンの「バラード第1番 ト短調 作品23」は哀切。
人を愛する事の素晴らしさ、大切さ、
そして時には味わう悲しみや、切なさを、
見終わった後に優しく感じられて、
温かい気持ちにさせてくれる作品『四月は君の嘘』。
映画館で、ぜひぜひ。