土屋太鳳を強く感知したのは、
NHK連続テレビ小説『花子とアン』で、はな(吉高由里子)の妹・ももを演じた時だった。
「目がキラキラとして、元気がある若手女優だな」
と、私はその頃から注目し、
土屋太鳳のブログ「たおのSparkling day」も読むようになった。
彼女のブログを読んで驚かされたのは、
「毎日更新」しかも「毎日長文」ということ。
前向きで、ポジティブな内容の文章で、
読んでいると、こちらが元気をもらえるようなブログなのだ。
〈最近では珍しい、素直でまっすぐな性格の女優だな〉
と、感心した。
その後、NHK連続テレビ小説『まれ』で主演を務め大ブレークした後も、
以前と変わることなく、ブログは毎日更新されている。
主演した映画『orange』(2015年12月12日公開)も良かったし、
彼女の新作『青空エール』も見たいなと思った。
監督は三木孝浩。
ここ数年では、
『陽だまりの彼女』(2013年)
『ホットロード』(2014年)
『アオハライド』(2014年)
『くちびるに歌を』(2015年)
などが印象に残っているが、
青春映画の名手と言ってよく、
「三木孝浩監督作品ならばハズレはない」
と言えるほどの安心感もあり、
〈三木孝浩監督の新作ならば見てみたい〉
と思った。
私の好きな上野樹里や、志田未来、
注目している若手女優・平祐奈も出演しているようなので、
期待しながら映画館へ行ったのだった。
甲子園のスタンドで野球部の応援にいそしむ吹奏楽部にほれ込み、
名門・白翔高校に入学した小野つばさ(土屋太鳳)は、
展示してあるトロフィーや楯の前で、
クラスメートで野球部員の山田大介(竹内涼真)と出会う。
お互い夢に向かって励まし合うふたりは、ある「約束」をかわす。
だが、トランペット初心者のつばさは、全国大会を目指すレベルの高い練習についていけず、何度も挫折しそうになる。
そんなつばさを勇気づけてくれる大介に、
いつの間にかつばさには、ほのかな想いが芽生えていた。
1年生の夏、
地区予選の決勝まで勝ち進んだ野球部を吹奏楽部が応援。
ところが途中出場した大介のミスで敗退。
グラウンドで立ち尽くす大介のために、つばさは一人でトランペットを吹いてしまい、
謹慎処分となる。
心配して訪ねて来た大介への想いを抑えきれずにつばさは大介に告白するが、
「ごめん、今は部活に集中したい」
と、フラれてしまう。
大介は、仲間の夢を潰してしまった自分が許せないでいたのだ。
ふたりは“両片想い”のままそれぞれの夢を追いかける。
そして、二年後、最後の夏が来る。
つばさと大介の恋の行方は……
そして、ふたりの夢のたどりつく先は……
映画を見終わった時、
私の頬は涙で濡れていた。
いや、映画の上映中もずっと、
私の頬は濡れていたような気がする。
これほど泣かされるとは思ってもみなかった。
とにかく、登場人物が、誰もが素直でまっすぐ。
真剣に青春を生きている。
そのことに心打たれるのだ。
私のようにちゃらんぽらんに生きてきた人間でさえそうなのだから、
部活を真剣にやってきた人ならば、
私以上の感動をもらえるのではないかと思った。
土屋太鳳は、それほど演技は上手いと思わないのだが、
素直でまっすぐな演技に好感を抱いた。
主人公・小野つばさの性格と、土屋太鳳の性格が重なり合い、
違和感なく見ることができる。
これは彼女のひとつの才能なのではないかと思った。
今後、
『金メダル男』(2016年10月22日公開予定)
『PとJK』(2017年春公開予定)
『トリガール!』(2017年公開予定)
などの出演作が控えているようなので、
楽しみに待ちたいと思う。
山田大介を演じた竹内涼真も、
土屋太鳳と同様、素直でまっすぐな演技に好感を抱いた。
5歳からサッカーをはじめ、
高校時代に東京ヴェルディのユースに所属し、
サッカー推薦で大学に進学するほどの実力であったが、
〈自分はプロ選手にはなれない〉
と思いサッカーを断念。
2013年4月、知人の勧めで応募した女性ファッション誌『mina』初の男性専属モデルオーディション「minaカレグランプリ」にて、2457人の中からグランプリを獲得。
ホリプロ所属となり、芸能活動を開始。
2014年10月より、『仮面ライダードライブ』の主演・泊進ノ介(仮面ライダードライブ役)を務め、一躍有名になった。
サッカーで鍛えた体、それに185cmの長身ということもあって、
野球選手(キャッチャー)としてもまったく見劣りせず、
こちらも山田大介と、それを演じる竹内涼真が一体化し、
違和感なく見ることができた。
演技は、まだこれからといった感じだが、
将来に希望を抱かせる逸材と思った。
白翔高校の吹奏楽部顧問・杉村容子を演じた上野樹里。
三木孝浩監督作品では、『陽だまりの彼女』(2013年)以来の出演だが、
厳格で思いやりのある吹奏楽部顧問を巧く演じていた。
上野樹里と“音楽”とは縁があって、
2004年、主演した映画『スウィングガールズ』のヒットで、
第28回(2004年度)日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。
2006年、フジテレビ系月9ドラマ『のだめカンタービレ』の野田恵を演じて脚光を浴び、
第51回(2006年10月期)ザテレビジョンドラマアカデミー賞主演女優賞を、
また、2007年度エランドール賞 新人賞を受賞している。
2016年5月25日、ロックバンド・TRICERATOPSのボーカリスト・和田唱と結婚したことも、
“音楽”との縁と言えるかもしれない。
今回は、吹奏楽部顧問ということで、
その指導ぶり、指揮者としての演技も様になっていたと思う。
吹奏楽部の先輩・森優花を演じた志田未来。
初心者のつばさに手取り足取りトランペットを教える役であったが、
途中で腱鞘炎のためにメンバーから外され、苦悩するという難役で、
志田未来だからこそできた森優花だったと思う。
つばさ(土屋太鳳)とは紆余曲折あるのだが、最後に、
「あんたが頑張っているのは知ってる。私が一番知ってるから。あのときつばさが励ましてくれたから、私は続けられているんだよ」
という言葉にグッときた。
野球部の女子マネージャー・澤あかねを演じた平祐奈。
密かに大介に好意を抱いている女子マネージャー役で、
同じく大介に好意を抱くつばさ(土屋太鳳)には敵意をむき出しにし、
キリッとした目と表情が印象的だった。
『案山子とラケット 〜亜季と珠子の夏休み〜』(2015年4月4日公開)
での笑顔も素晴らしかったが、
本作での引き締まった顔も素敵だった。
今後、
『キセキ - あの日のソビト -』(2017年1月28日公開予定)
『きょうのキラ君』(2017年2月25日公開予定)
『暗黒女子』(2017年春公開予定)
『忍びの国』(2017年夏公開予定)
『写真甲子園 THE MOVIE』(2018年公開予定)
などの出演作が控えているので、こちらも楽しみ。
来年は、平祐奈という女優から目が離せなくなりそうだ。
つばさと同学年の水島亜希を演じた葉山奨之。
1年から選抜メンバーに入るほどのトランペットの実力者で、
クールな性格から初心者のつばさに冷たくあたるという役であったが、
彼がいればこその吹奏楽部と言えるほど、存在感があった。
どこかで見た顔……と思っていたら、
NHK連続テレビ小説『まれ』で、土屋太鳳の弟役であったのを思い出した。
背が高くなり、土屋太鳳と同学年を演じていたのがちょっと不思議な感覚であった。
登場人物の誰もがピュアで、
とにかく、
愚直なほどにまっすぐな青春映画であり、
純粋無垢なラブストーリー。
若い人はもちろん、
世俗にまみれ、汚れきった、(笑)
中高年のあなたにこそ見てもらいたい青春映画の秀作。
映画館で、ぜひぜひ。