一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

映画『いつか眠りにつく前に』…人生に過ちなんてない…

2008年05月15日 | 映画
佐賀で良質の映画を提供し続けているシアターシエマで、『いつか眠りにつく前に』を見てきた。
第一回の上映は午前11時からだったので、少し早めに家を出て、県立図書館に寄った。
今日は、山尾三省、ヘルマン・ヘッセ、田口ランディなどの本を中心に、15冊借りた。
●山尾三省『縄文杉の木陰にて』(新宿書房)
●山尾三省『屋久島のウパニシャッド』(筑摩書房)
●山尾三省『ここで暮らす楽しみ』(山と溪谷社)
●山尾三省『森の家から』(草光舎)
●山尾三省『原郷への道』(野草社)
●山尾三省『祈り』(野草社)
●山尾三省『観音経の森を歩く』(野草社)
●山尾三省『南の光のなかで』(野草社)
●ヘルマン・ヘッセ『愛することができる人は幸せだ』(草思社)
●ヘルマン・ヘッセ『庭仕事の愉しみ』(草思社)
●ヘルマン・ヘッセ『人は成熟するにつれて若くなる』(草思社)
●田口ランディ『癒しの森 ひかりのあめふるしま屋久島』(ダイヤモンド社)
●根本順善『なぜ歩く なぜ祈る』(風人社)
●こすが聖絵『雪煙』(美術出版社)
●黒田薫『焚き火の焚きつけ』(つり人社)

さて、映画『いつか眠りにつく前に』について――

人生の最期を迎える老婦人アンを、枕元で見守る二人の娘。
混濁した意識の中でアンは、娘たちの知らない「ハリス」という男性の名前を何度も口にする。
意識と無意識の狭間を漂うアンの記憶は、1950年代のある週末の出来事へと遡っていく。
歌手になる夢を持った24歳のアンは、親友ライラの結婚式でブライズメイドをつとめるために、ロードアイランドの海辺の町を訪れる。


ライラの別荘で、ライラの弟バディと再会。
さらに一家のメイドの息子で、今は医者をしているハリスと出会う。


アンをずっと想い続けていたバディ。
ハリスを子供の頃から想い続けていたライラ。
そして、出逢ったその日に、ハリスと運命の恋におちるアン。
だが、それぞれの恋に深く関わっていたアンに、悲劇的な結末が訪れる――。
たった二日間の恋。
結ばれなかった愛。
成功しなかった夢。
完璧な母になれなかった後悔。
死を前にして、様々なことを思い出すアン。
そんな母を見つめることによって、自分たちの人生に希望を見出していく娘たち。
「幸せになろうと努力してね 人生に過ちなんてないのよ」
最期に語るアンの言葉が、見る者に、幸福を求める勇気と、未来に対する希望を与えてくれる。

監督は、ハンガリー出身で、ジュゼッペ・トルナトーレ監督の『マレーナ』などで撮影監督として活躍してきたラホス・コルタイ。
『マレーナ』は私の好きな映画だったし、美しい場面が多かった作品だったので、彼が監督をした作品ならと、期待をし、鑑賞した。

若き日のアンを演じるのは、クレア・デインズ。
アンの親友・ライラの若き日を演じるのは、メイミー・ガマー。




現在のアンを演じるのは、ヴァネッサ・レッドグレイヴ。
アカデミー賞に6回ノミネートされ、『ジュリア』で助演女優賞に輝いたイギリスの大女優。
そして、現在のライラを演じるのは、なんと、私の好きなメリル・ストリープ。
映画デビューは77年の『ジュリア』。
驚くことに、ヴァネッサ・レッドグレイヴがアカデミー賞助演女優賞を受賞した作品でデビューしているのだ。これも縁だなぁ~。
翌年の『ディア・ハンター』でニューヨーク評論家協会助演女優賞を受賞。
79年、『クレイマー、クレイマー』でアカデミー助演女優賞を受賞。
以降、82年、『ソフィーの選択』で主演女優賞を獲得。
現在までノミネートされること14回、のち助演賞1回、主演賞1回を受賞。
アメリカを代表する大女優であることは、言うまでもない。


この映画は、ヴァネッサ・レッドグレイヴとメリル・ストリープの2大アカデミー賞女優の競演が見どころのひとつになっている。
さらに、もうひとつ話題になっているのが、親子競演。
メリル・ストリープの実の娘メイミー・ガマーが、若き日のライラを、
また、ヴァネッサ・レッドグレイヴの娘・ナターシャ・リチャードソンが、アンの長女役を演じているのだ。


特に、メイミー・ガマーは、母・メリル・ストリープにそっくり。
母親と比較されるプレッシャーに負けないで、これからも頑張ってほしいと切に願う。


そして、肝心の映画の方だが、
これが、なかなかの佳作だった。
地味な作品だが、心に染みてくる素晴らしい映画だった。
撮影監督をしていた監督だけあって、物語もさることながら、映像も美しかった。
撮影が行われたニューイングランドの景色が存分に活かされ、特に、夜空の星があんなにも鮮やかに美しくスクリーンに輝いているとは――驚きであった。

私個人的には、ライラの弟・バディにかなり感情移入しました。


アンのことが好きで、アンが何年も前に書いたメモ紙を、いつまでも大事に持っているバディ。
わかるなぁ~。
好きな人が書いたというだけで、宝物みたいに思えてくる小さなメモ紙。
アンに告白し、思いが届かず、酒に酔い、悪ふざけして、アンに頬を打たれるバディ。
「あんなメモ紙を、いつまでも持っているから駄目なのよ。甘えないで、自分の人生を生きて!」
みたいなことをアンから言われてしまう。
切ないなぁ~。


女性のための映画のように言われてますが、ぜひ男性にも見てもらいたい作品です。
特に後半、登場人物たちの言葉のひとつひとつが、珠玉の言葉です。
音楽も素晴らしい!

……あなたが最期に叫ぶのは、誰の名前だろうか?

公式HP←ココをクリックしてね。最初の画面のEntaerをクリックすると、音楽が流れ始めますよ。

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2 コメント

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見逃した映画でした・・・ (bamboo)
2008-05-28 09:09:42
「マレーナ」の監督でしたか・・・、好きな映画でした。「ジュリア」も観てますよ。彼女らが違う道を歩き、再び出会った時の感情が分かる気がしてのめりこんむようにして観た映画です。冒頭、「追憶」のロバートレッドフォードとバーバラが出会うシーンを髣髴とさせました。ヴァネッサ・レッドグレイヴとメリル・ストリープ、グレーン・グロスの3人とも大好きな女優達!。「シックスセンス」も良かったから彼女のその後を知れて嬉しい。
公式HPまでつい訪れました。「DVDレンタルを待ちましょう!

雨が落ちてきました。水曜日ーこうなったら庭師を辞めて映画館へ行くしかありません。池澤夏樹著『光の指で触れよ』を現在読んでいます。たぶんタクさんもお好きでしょう!
続きを読むか・・・迷っちゃうなぁ
日本縦断記が読めるのを楽しみにしてるbambooです

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夏の日の恋 (タク)
2008-05-28 21:18:27
bambooさんへ
今日は、雨の水曜日でしたね。
ここ2~3日暑い日が続いていたので、ちょっと肌寒い一日を、仕事をしながら楽しんでました。
私は雨の日も割と好きなんですよね。

『いつか眠りにつく前に』は、とても素敵な作品でした。
あの音楽が、今も耳朶に残っています。
「夏の日の恋」をテーマにした映画や小説は数多いですが、この『いつか眠りにつく前に』は、いつまでも私の記憶に残ることと思います。

これまで見た「夏の日の恋」の映画では、『おもいでの夏』が私のベスト1。(ビデオも持ってます)
小説では、池澤夏樹の父親である福永武彦の『廃市』が好きです。
原稿用紙にして100枚ほどの短編(あるいは中編?)小説ですが、読み終わると、長編小説を読んだような読後感です。
一年に一度は、『おもいでの夏』を見、『廃市』を読みますね。
『いつか眠りにつく前に』もDVDがレンタルされたら、また見てみたいです。
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