1981年(昭和56年)12月19日に公開された、
薬師丸ひろ子主演の映画『セーラー服と機関銃』は、
当時、とても話題になった作品である。
『野性の証明』(1978年10月7日公開)
でデビューした薬師丸ひろ子は、
『戦国自衛隊』(1979年12月15日公開)
『翔んだカップル』(1980年7月26日公開)
『ねらわれた学園』(1981年7月11日公開)
などの諸作品を経て、
『セーラー服と機関銃』で人気沸騰。
23億円の配給収入は1982年の邦画で1位。(興行収入は47億)
薬師丸ひろ子が歌った主題歌も大ヒットし、
現在では、角川映画の代表作の1つとして位置づけられている。
監督は、長回しを多用することで知られる相米慎二。
公開当時、私はリアルタイムで見たのだが、
「女子高生がヤクザの組長を継ぐ」という内容もさることながら、
アイドル映画のはずなのに、
薬師丸ひろ子がブリッジをしているというシーンで始まり、
暴力、殺人、麻薬、セックスシーン(渡瀬恒彦と風祭ゆき)まであり、
長回しはもちろん、
顔も識別できない程のロングショットが多く(魚眼レンズでの撮影まであった)、
その刺激的、かつ実験的な映画内容にとても驚かされたことを覚えている。
そんな伝説的な映画『セーラー服と機関銃』の続編が誕生した。
角川映画40周年記念作品として3月5日に公開された、
橋本環奈主演の『セーラー服と機関銃 -卒業-』である。
18歳の高校三年生・星泉(橋本環奈)には、
組員わずか4人の弱小ヤクザ・メダカ組の組長だったという過去があった。
伯父を殺した敵を機関銃で襲撃する大事件を起こした後、
組は解散し、
今は、シャッター商店街の中で、
目高組若頭・土井(武田鉄矢)、組員の祐次(大野拓朗)、晴雄(宇野祥平)らと共に、
“メダカカフェ”を経営し、店長として活躍している。
卒業を間近に控え、
普通の女子高生としての日常を取り戻していた泉だったが、
ある日、偽モデル詐欺に巻き込まれた友達の相談から、
新興ヤクザの存在を知る。
「ホリウチ都市デザイン」と名乗るその組織は、
一見、会社組のようだが、
中身は、かつて目高組と敵対した浜口組よりも悪辣なヤクザだった。
麻薬入りのクッキーの製造販売し、
それを浜口組がやっているように見せかけるだけでなく、
学生を「ホリウチ都市デザイン」へ就職斡旋し、
老人ホーム、不動産業、製薬会社までグループ経営して、
都市開発を装いつつ、
悪徳刑事・真淵(古舘寛治)や、
市長・くさかべ(鶴見辰吾)まで抱き込んで、
星泉たちの暮らす街を丸ごと乗っ取ろうとしているのだった。
黒幕である「ホリウチ都市デザイン」の社長・安井(安藤政信)は、
浜口組組長(伊武雅刀)まで取り込み、勢力を拡大。
このことを快く思わない浜口組の幹部・月永(長谷川博己)は、泉に、
「手を組んで、安井と闘わないか?」
と持ち掛ける。
こうして泉は、再び危険な世界に足を踏み入れることになるのだった……
主演・星泉(ほし・いずみ)を演じるのは、
現在17歳(1999年2月3日生まれ)の橋本環奈。
福岡を拠点とするアイドルグループ「Rev. from DVL」のメンバーで、
2013年、インターネットに投稿された「奇跡の一枚」といわれる写真をきっかけに、
“天使すぎるアイドル”として大ブレイク。
全国的にはほぼ無名という状況から、
ごく短期間のうちに全国区的な人気を獲得し、
今、最も勢いのあるアイドルの一人として認知されている。
近年は女優としての活動の機会も増え、
映画出演作には、『奇跡』(2011年)、『暗殺教室』(2015年)があり、
三作目の『セーラー服と機関銃 -卒業-』は初主演作品だ。
角川映画の代表作ともいうべき『セーラー服と機関銃』の続編だし、
角川映画40周年記念作品ということなので、
プレッシャーも並大抵のものではなかったと思うが、
物凄く頑張っていて、演技そのものもすこぶる良かった。
初主演のことよりも、有名な「セーラー服と機関銃」のシリーズ最新作であることや、角川映画40周年記念作品でもあること、そしてこれまで薬師丸さん、原田さん、長澤さんと名だたる女優さんが演じてこられた組長の4代目をやらせていただくことへの驚きと嬉しさがありました。もちろんプレッシャーや重圧もありましたが、撮影前に前田監督やスタッフ、キャストのみなさんと2ヶ月間しっかりリハーサルをやらせていただいて、みんなで泉を作りあげて臨めたので、うまく演技できたというよりは達成感の方が強かったです。撮影終盤は「終わりたくないな」という気持ちになりましたが、充実した現場で主演女優としての第一歩を無事務めさせていただきました。
と、某インタビューで語っていたが、
すべてのシーンで表情が豊かで、
薬師丸ひろ子とはまた違った魅力があり、
作品としても痛快なエンターテインメント作品に仕上がっていた。
薬師丸ひろ子も背が低かったが、(155cm)
橋本環奈はもっと低く、(152cm)
現代モデル風ではなく、
典型的な日本人体型だというところも、
親しみが持てて、好印象であった。
5年前(2011年)に、
是枝裕和監督作品『奇跡』という映画のレビュー(←クリック)を書いたが、
あの作品に出ていた女の子が、
まさかアイドルとして主演映画に出るとは思いもしなかったことである。
だが、是枝裕和監督は当時から彼女にかなり将来性を感じておられたようだし、
彼女自身も「女優になりたい」と言っていたそうだ。
この映画に共に出演していた前田航基が、(右端が前田航基、左端が橋本環奈)
映画『セーラー服と機関銃 -卒業-』でも同級生役で出ているのも微笑ましかった。
映画『セーラー服と機関銃 -卒業-』には、
目高組若頭・土井役で、
同じ福岡県出身の武田鉄矢が出演しているが、
そのことも随分と心強かったようだ。
先程と同じインタビューで、
武田さんとはやはり福岡の話題で盛り上がりましたね。バス停ごとに芸能人がいるみたいな話とか、地域によって変わる方言の話なんかもしてました。演技面でも武田さんが初めて映画に出演された『幸福の黄色いハンカチ』のお話を通じてアドバイスして下さったり本当に勉強になりました。あと打上げでは、「贈る言葉」も歌って下さって本当に感謝で一杯です!
と語っている。
浜口組の幹部・月永を演じた長谷川博己も、
星泉(橋本環奈)から好意を抱かれるという羨ましい役で、(コラコラ)
橋本環奈を引き立てつつ、
確かな演技で作品をしっかり支えていた。
特筆すべきは、
黒幕である「ホリウチ都市デザイン」の社長・安井を演じた安藤政信だ。
『スマグラー -おまえの未来を運べ-』(2011年)を見たときにも感じたが、
この人に“狂気漂う男”の役をやらせたら超一級だなと思った。
『スマグラー -おまえの未来を運べ-』のレビューで、
安藤政信。
もう一人の主人公は、間違いなく彼だ。
CGやハイスピードカメラを利用したアクションシーンをスタイリッシュにこなし、
しなる肉体、
松田優作ばりの目のむき方、
どれをとっても文句のつけようがない。
彼の演技を見るだけでも、チケット代は、十分にモトが取れる。
と書いたが、
敵役として安藤政信がいたからこその『セーラー服と機関銃 -卒業-』で、
本作が見応えのある作品に仕上がっているのも、
彼いたれなばこそ……と思う。
他に、鶴見辰吾、榎木孝明、伊武雅刀、柄本時生、岡田義徳など、
錚々たる顔ぶれの出演陣が作品を盛り上げている。
エンドロールに流れる、
橋本環奈が歌う主題歌もなかなか。
エンドロールが終わって、
最後の最後に、もうワンカットあるので、
最後まで席を立たないようにね。
ああ、それから、
これは蛇足だけれど、(オイオイ)
ラスト近くで、
泉役の橋本環奈がハイヒールを履いているシーンがあり、
脱がれたハイヒールがアップで撮られているシーンもあるのだが、
薬師丸ひろ子が主演した前作を見ていない人は「?」と思うかもしれない。
だが、前作を見ている人にとっては、
ある種の感慨を覚えることだろう。
なぜなら、
前作にも、ラスト近くで、
薬師丸ひろ子がセーラー服に赤いハイヒールで街中を歩くシーンがあり、
しかも、マリリン・モンローの『七年目の浮気』よろしく、
スカートがまくれ上がるシーンまであるのだ。
橋本環奈にもハイヒールを履かせたのは、
そんな前作へのオマージュが込められているからかもしれない。
薬師丸ひろ子が赤のハイヒールだったのに対し、
橋本環奈は何色のハイヒールだったかは、映画を見て確かめて。
橋本環奈が物凄く頑張っている『セーラー服と機関銃 -卒業-』。
彼女のこれからのさらなる頑張り次第では、
本作が伝説になる可能性もある。
リアルタイムで見ておくと、
将来、自慢できるかも……(笑)
ぜひぜひ。
薬師丸ひろ子主演の映画『セーラー服と機関銃』は、
当時、とても話題になった作品である。
『野性の証明』(1978年10月7日公開)
でデビューした薬師丸ひろ子は、
『戦国自衛隊』(1979年12月15日公開)
『翔んだカップル』(1980年7月26日公開)
『ねらわれた学園』(1981年7月11日公開)
などの諸作品を経て、
『セーラー服と機関銃』で人気沸騰。
23億円の配給収入は1982年の邦画で1位。(興行収入は47億)
薬師丸ひろ子が歌った主題歌も大ヒットし、
現在では、角川映画の代表作の1つとして位置づけられている。
監督は、長回しを多用することで知られる相米慎二。
公開当時、私はリアルタイムで見たのだが、
「女子高生がヤクザの組長を継ぐ」という内容もさることながら、
アイドル映画のはずなのに、
薬師丸ひろ子がブリッジをしているというシーンで始まり、
暴力、殺人、麻薬、セックスシーン(渡瀬恒彦と風祭ゆき)まであり、
長回しはもちろん、
顔も識別できない程のロングショットが多く(魚眼レンズでの撮影まであった)、
その刺激的、かつ実験的な映画内容にとても驚かされたことを覚えている。
そんな伝説的な映画『セーラー服と機関銃』の続編が誕生した。
角川映画40周年記念作品として3月5日に公開された、
橋本環奈主演の『セーラー服と機関銃 -卒業-』である。
18歳の高校三年生・星泉(橋本環奈)には、
組員わずか4人の弱小ヤクザ・メダカ組の組長だったという過去があった。
伯父を殺した敵を機関銃で襲撃する大事件を起こした後、
組は解散し、
今は、シャッター商店街の中で、
目高組若頭・土井(武田鉄矢)、組員の祐次(大野拓朗)、晴雄(宇野祥平)らと共に、
“メダカカフェ”を経営し、店長として活躍している。
卒業を間近に控え、
普通の女子高生としての日常を取り戻していた泉だったが、
ある日、偽モデル詐欺に巻き込まれた友達の相談から、
新興ヤクザの存在を知る。
「ホリウチ都市デザイン」と名乗るその組織は、
一見、会社組のようだが、
中身は、かつて目高組と敵対した浜口組よりも悪辣なヤクザだった。
麻薬入りのクッキーの製造販売し、
それを浜口組がやっているように見せかけるだけでなく、
学生を「ホリウチ都市デザイン」へ就職斡旋し、
老人ホーム、不動産業、製薬会社までグループ経営して、
都市開発を装いつつ、
悪徳刑事・真淵(古舘寛治)や、
市長・くさかべ(鶴見辰吾)まで抱き込んで、
星泉たちの暮らす街を丸ごと乗っ取ろうとしているのだった。
黒幕である「ホリウチ都市デザイン」の社長・安井(安藤政信)は、
浜口組組長(伊武雅刀)まで取り込み、勢力を拡大。
このことを快く思わない浜口組の幹部・月永(長谷川博己)は、泉に、
「手を組んで、安井と闘わないか?」
と持ち掛ける。
こうして泉は、再び危険な世界に足を踏み入れることになるのだった……
主演・星泉(ほし・いずみ)を演じるのは、
現在17歳(1999年2月3日生まれ)の橋本環奈。
福岡を拠点とするアイドルグループ「Rev. from DVL」のメンバーで、
2013年、インターネットに投稿された「奇跡の一枚」といわれる写真をきっかけに、
“天使すぎるアイドル”として大ブレイク。
全国的にはほぼ無名という状況から、
ごく短期間のうちに全国区的な人気を獲得し、
今、最も勢いのあるアイドルの一人として認知されている。
近年は女優としての活動の機会も増え、
映画出演作には、『奇跡』(2011年)、『暗殺教室』(2015年)があり、
三作目の『セーラー服と機関銃 -卒業-』は初主演作品だ。
角川映画の代表作ともいうべき『セーラー服と機関銃』の続編だし、
角川映画40周年記念作品ということなので、
プレッシャーも並大抵のものではなかったと思うが、
物凄く頑張っていて、演技そのものもすこぶる良かった。
初主演のことよりも、有名な「セーラー服と機関銃」のシリーズ最新作であることや、角川映画40周年記念作品でもあること、そしてこれまで薬師丸さん、原田さん、長澤さんと名だたる女優さんが演じてこられた組長の4代目をやらせていただくことへの驚きと嬉しさがありました。もちろんプレッシャーや重圧もありましたが、撮影前に前田監督やスタッフ、キャストのみなさんと2ヶ月間しっかりリハーサルをやらせていただいて、みんなで泉を作りあげて臨めたので、うまく演技できたというよりは達成感の方が強かったです。撮影終盤は「終わりたくないな」という気持ちになりましたが、充実した現場で主演女優としての第一歩を無事務めさせていただきました。
と、某インタビューで語っていたが、
すべてのシーンで表情が豊かで、
薬師丸ひろ子とはまた違った魅力があり、
作品としても痛快なエンターテインメント作品に仕上がっていた。
薬師丸ひろ子も背が低かったが、(155cm)
橋本環奈はもっと低く、(152cm)
現代モデル風ではなく、
典型的な日本人体型だというところも、
親しみが持てて、好印象であった。
5年前(2011年)に、
是枝裕和監督作品『奇跡』という映画のレビュー(←クリック)を書いたが、
あの作品に出ていた女の子が、
まさかアイドルとして主演映画に出るとは思いもしなかったことである。
だが、是枝裕和監督は当時から彼女にかなり将来性を感じておられたようだし、
彼女自身も「女優になりたい」と言っていたそうだ。
この映画に共に出演していた前田航基が、(右端が前田航基、左端が橋本環奈)
映画『セーラー服と機関銃 -卒業-』でも同級生役で出ているのも微笑ましかった。
映画『セーラー服と機関銃 -卒業-』には、
目高組若頭・土井役で、
同じ福岡県出身の武田鉄矢が出演しているが、
そのことも随分と心強かったようだ。
先程と同じインタビューで、
武田さんとはやはり福岡の話題で盛り上がりましたね。バス停ごとに芸能人がいるみたいな話とか、地域によって変わる方言の話なんかもしてました。演技面でも武田さんが初めて映画に出演された『幸福の黄色いハンカチ』のお話を通じてアドバイスして下さったり本当に勉強になりました。あと打上げでは、「贈る言葉」も歌って下さって本当に感謝で一杯です!
と語っている。
浜口組の幹部・月永を演じた長谷川博己も、
星泉(橋本環奈)から好意を抱かれるという羨ましい役で、(コラコラ)
橋本環奈を引き立てつつ、
確かな演技で作品をしっかり支えていた。
特筆すべきは、
黒幕である「ホリウチ都市デザイン」の社長・安井を演じた安藤政信だ。
『スマグラー -おまえの未来を運べ-』(2011年)を見たときにも感じたが、
この人に“狂気漂う男”の役をやらせたら超一級だなと思った。
『スマグラー -おまえの未来を運べ-』のレビューで、
安藤政信。
もう一人の主人公は、間違いなく彼だ。
CGやハイスピードカメラを利用したアクションシーンをスタイリッシュにこなし、
しなる肉体、
松田優作ばりの目のむき方、
どれをとっても文句のつけようがない。
彼の演技を見るだけでも、チケット代は、十分にモトが取れる。
と書いたが、
敵役として安藤政信がいたからこその『セーラー服と機関銃 -卒業-』で、
本作が見応えのある作品に仕上がっているのも、
彼いたれなばこそ……と思う。
他に、鶴見辰吾、榎木孝明、伊武雅刀、柄本時生、岡田義徳など、
錚々たる顔ぶれの出演陣が作品を盛り上げている。
エンドロールに流れる、
橋本環奈が歌う主題歌もなかなか。
エンドロールが終わって、
最後の最後に、もうワンカットあるので、
最後まで席を立たないようにね。
ああ、それから、
これは蛇足だけれど、(オイオイ)
ラスト近くで、
泉役の橋本環奈がハイヒールを履いているシーンがあり、
脱がれたハイヒールがアップで撮られているシーンもあるのだが、
薬師丸ひろ子が主演した前作を見ていない人は「?」と思うかもしれない。
だが、前作を見ている人にとっては、
ある種の感慨を覚えることだろう。
なぜなら、
前作にも、ラスト近くで、
薬師丸ひろ子がセーラー服に赤いハイヒールで街中を歩くシーンがあり、
しかも、マリリン・モンローの『七年目の浮気』よろしく、
スカートがまくれ上がるシーンまであるのだ。
橋本環奈にもハイヒールを履かせたのは、
そんな前作へのオマージュが込められているからかもしれない。
薬師丸ひろ子が赤のハイヒールだったのに対し、
橋本環奈は何色のハイヒールだったかは、映画を見て確かめて。
橋本環奈が物凄く頑張っている『セーラー服と機関銃 -卒業-』。
彼女のこれからのさらなる頑張り次第では、
本作が伝説になる可能性もある。
リアルタイムで見ておくと、
将来、自慢できるかも……(笑)
ぜひぜひ。