テレビ局を舞台としたドラマは面白い。
映画では、
『ブロードキャスト・ニュース』(1987年)
『アンカーウーマン』(1996年)
などがすぐに思い浮かぶが、
今年(2016年8月5日)公開され、
現在も全国で公開中の映画『ニュースの真相』も話題になっている。
(佐賀では10月22日よりシアターシエマで公開予定)
TVドラマでは、
田村正和や浅野温子が出演した『パパはニュースキャスター』(1987年TBS系)、
三上博史や原田知世が出演した『ストレートニュース』(2000年日本テレビ系)、
水野美紀やともさかりえが出演した『女子アナ。』(2001年フジテレビ系)、
松嶋菜々子や福山雅治が出演していた『美女か野獣』(2003年フジテレビ系)、
松雪泰子や小出恵介が出演していた『パーフェクト・リポート』(2010年フジテレビ系)
などがあるが、
私にとっては、
最も美しかった時の松嶋菜々子や、最も格好良かった時の福山雅治を見ることができ、
ストーリーも面白かった『美女か野獣』が特に印象に残っている。
それからもう一作、
今年(2016年)4月にNHKで放送された『トットてれび』は、
黒柳徹子を演じた満島ひかりが、見た目も話し方も黒柳徹子そっくりでビックリしたし、
とても面白かった。
テレビは毎日のように観ているが、
その裏側で繰り広げられている出来事は知らないことが多い。
華やかなテレビ局の舞台裏や、そこで働く人々の物語は魅力的だし、
観ずにはおられないほど興味を引くものなのだ。
そんなテレビ局を舞台にした映画『グッドモーニングショー』が、
10月8日に公開された。
主演は中井貴一で、
私の好きな吉田羊、長澤まさみ、志田未来などが出演していたので、
さっそく見に行ったのだった。
澄田真吾(中井貴一)は、
朝のワイドショー「グッドモーニングショー」のメインキャスター。
かつて報道番組のエースキャスターだったが、
台風災害現場からのリポートで、
わざと泥を顔に塗っているところが放送されたことにより、
世間から非難を浴びて番組を降板。
以来、現場からのリポートが怖くてできなくなり、
同期入社のプロデューサー石山聡(時任三郎)に拾われて今に至っている。
ある日、いつものように深夜3時に起床した澄田は、
息子と妻・明美(吉田羊)の言い争いに巻き込まれる。
なんと、息子の彼女が妊娠したので、結婚したいと言うのだ。
面倒くさいことから逃げるようにテレビ局に向かう車内で今度は、
サブキャスターの小川圭子(長澤まさみ)から連絡があり、
「二人の交際を今日の生放送で発表しよう」と迫られる。
彼女は澄田の日頃の優しい振る舞いを“私だけ”と勘違いしているのだ。
さらに石山Pからは番組の打ち切りが告げられ、
踏んだり蹴ったりのとんでもない一日が始まる。
本番直前、
都内のカフェに爆弾と銃を持った男が人質を取って立てこもっているという速報が飛び込んでくる。
芸能ゴシップや、政治家の汚職事件、行列スイーツ特集を押しのけ、
立てこもり事件をトップのネタとして番組はスタートするが、
その直後、警察からとんでもない知らせが入る。
なんと、犯人の要求は「澄田を呼べ」というものだった!
過去のトラウマもあり現場に出ることを拒否する澄田だったが、
石山Pからの命令、番組視聴率のため、(それから、圭子の暴露を防ぐために)
思わずデマカセで現場に向かうことをカメラに向かって宣言してしまう。
澄田は防爆スーツにカメラとマイクを仕込ませて、
銃と爆弾を持った犯人の様子を生リポートすることになる。
しかも、タイムリミットは番組終了時刻。
それまでに犯人を捕まえなければ爆弾のタイマーが作動してしまう。
澄田が絶体絶命になるのと反比例して、
武装した犯人にキャスターがマイクひとつで立ち向かうというありえない展開に、
いつの間にかどのチャンネルも落ち目だったはずのキャスターを映していた。
日本中が注目するニュースの渦中に立たされた澄田は、
果たして人質を救うことが出来るのか?
前代未聞の生放送が、今始まった……
で、映画を見た感想はというと、
ちょっとリアリティに欠ける部分はあるものの、
とても面白く、
テレビ局のトレビア的なあれこれも知ることができ、
最後まで楽しく見ることができた。
監督・脚本は、
放送作家、脚本家としてテレビを知り尽くした君塚良一。
「踊る大捜査線」シリーズを始め、数々のヒット作がある彼が、
朝の情報番組であるワイドショーを題材に、
落ち目のキャスターが陥る災難だらけの一日を描いたのだから、
面白くならないわけがない。
主人公のメインキャスター・澄田真吾を演じるのが、
シリアスからコメディまで演じ分ける実力派俳優・中井貴一で、
キャスター役は初挑戦ながら、得意とする三枚目キャラで、
捧腹絶倒の演技で楽しませてくれる。
サブキャスターの女子アナ・小川圭子を演ずる長澤まさみは、
思い込みの激しい勘違い女を巧く演じており、
ハマリ役ではないかと思わせるほどの演技で、
見る者の笑いを誘う。
新人アナウンサー・三木沙也を演ずる志田未来も、
その冷静、かつコミカルな演技で、
澄田真吾(中井貴一)と小川圭子(長澤まさみ)をしっかりサポートし、
作品を盛り上げている。
「グッドモーニングショー」のスタッフには、その他、
やり手のチーフ・ディレクター・秋吉克己役の池内博之、
報道担当・松岡宏二役の林遣都、
特集担当・館山修平役の梶原善、
芸能グルメ担当・新垣英莉役の木南晴夏、
中継担当・府川速人役の大東駿介などがおり、
それぞれの役割を好演しており、
次々に襲い掛かる難問を解決に導いていく。
立てこもり事件の犯人・谷颯太を演じた濱田岳は、
立てこもる理由がやや希薄なので、リアリティに欠ける役柄にもかかわらず、
確かな演技や、アドリブ(もあったらしい)で、
澄田真吾(中井貴一)との対決を盛り上げる。
さらに、
事件の解決にあたる警視庁特殊班リーダー・黒岩哲人役を松重豊が演じており、
強面で、まったく笑わずに演技しているにもかかわらず、
澄田真吾(中井貴一)との好対照で笑わせてくれる。
事件が終わり、
現場を後にする澄田真吾(中井貴一)を見ていたら、
〈『ダイ・ハード』のエンディングに似ているな~〉
と思ってしまった。
主人公の災難だらけの一日。
『ダイ・ハード』のジョン・マクレーン(ブルース・ウィリス)は、
最も不運なタイミングで、
最も不運な場所に居合わせる、
最も不運な男であり、
簡単には死なない不死身(ダイ・ハードな)男であった。
ジョン・マクレーンとは違って、弱々しく、気弱な澄田真吾であるが、
その一日の不運ぶりは、ジョン・マクレーンに勝るとも劣らない。
犯人が澄田真吾を指名してくるところや、
爆弾を仕掛けているところは『ダイ・ハード3』に似ているし、
ハードアクションはないものの、
次々に襲い掛かる困難に、様々なアイデアで立ち向かう姿は、
まさにジョン・マクレーンだ。
キャスター・澄田真吾(中井貴一)の、
『ダイ・ハード』的な一日を描いた映画『グッドモーニングショー』。
この映画を見ると、
以降、生放送のワイドショーを観る目が変わること請け合いだ。
映画館で、ぜひぜひ。
以上、映画館の前から「一日の王」のタクがお伝えしました。