3年前に50歳になった時、自分なりにいくつかのことを決めた。
子育ても終わり、社会人としての役割も一応果たしたので、これからは常識や世間体などに囚われず自由に生きようと思った。
①常識や世間体を気にしない。
②義理を欠く。
③流行を追わない。
④TVはなるべく観ない。
……など、10項目ほど自分なりの生き方の基本を決めたのだが、その一つに、「物を所有しない」というのがあった。
「物を買わない」と言い直してもいいかもしれない。
これ以上物を増やすと、小さな荒家がパンクするというのもあるが、50歳を過ぎたらいつ死んでもおかしくはないと思っているので、これからはむしろ物を減らしていくべきだと考えた。
そして死ぬ時には、なるべく無所有の状態でありたい。
本はかなり処分したが、それでもまだ1000冊ほどは残っているし、これも近いうちにすべて売ってしまおうと思っている。
図書館が自分の本棚と考えれば、もう本を所有する必要もない。
同じく、映画館は我が家のホームシアター、美術館は我が家の居間、すべての山は我が家の庭、すべての海は我が家のプール……と考えていけば、もう何も所有しなくても生きていける。(かな?)
テント泊や野宿ができれば、日本中、いや世界中のすべてのフィールドが自分の寝床になる。(日本縦断徒歩旅行した時の実感……でも一歩間違えるとホームレス状態になるので要注意!)
話が変な方向に行ってしまったので、少し戻して――
現在の私の三大愉楽は登山と映画と読書。
読書に関しても、50歳を過ぎてからは変化があった。
ベストセラーや、巷で評判の本などは、ほとんど読まなくなった。
若い頃は、誰もが読んでいる本は一応常識として読んでいたが、今はもうその必要もない。
それに、誰もが読みたがる本は、図書館では予約順番待ちになるので、かなり待たなければならない。そこまでして読もうという本もない。
ミステリーにおいても然り。
評判に囚われることなく、自分にとって興味のある本だけを読むようになった。
数年前までは、年末に刊行される『このミステリーがすごい!』を参考にして読み漁っていたが、今は『このミス』は買うが、ランキングの本はほとんど読まなくなった。(読めなくなった――か?)
昨年末に出た『2008年版 このミス』にランキングされている作品も、『悪人』(吉田修一)や『サクリファイス』(近藤史恵)など、数冊しか読んでいない。
もちろん1位にランクされている『警官の血』(佐々木譲)は読んでいない。
(やっと本作に辿り着いた! 前置きが長くて済みません)m(_)m
3月初旬、bambooさんから『警官の血』を勧められていたので、図書館に予約しておいたら、やっと手許に届いた。
田舎の図書館なので、2ヵ月足らずで届いたが、都会の図書館だと、もっと待たなければならなかっただろう。
上・下巻合計800頁弱の大作。
だが、手にした途端、一気に読んでしまった。
いや、読まされたと言うべきか。
面白くて、アッという間に読了してしまった。
《警察官三代の運命を描く大河小説の力作》と帯に謳ってあるが、大河小説と呼ぶにはちょっと短すぎると思った。
少なくとも、清二、民雄、和也それぞれで、各1巻は必要だったのではないだろうか。
裏を返せば、それほど面白く、もっと読みたかったということでもあるのだが――。
第一部「清二」は、抑えた筆致で、静かに始まる。そして、淡々と物語は進行する。
アクションを求める読者は、この第一部で本を閉じる可能性がある。
そうはさせないように、第一部が始まる前に、プロローグに仕掛けがしてある。
このプロローグに、第一部の最後の場面が描かれているのだ。
そして、読者の興味を惹くように、謎を残してぷっつり文章が切れている。
なぜあの場面に行き着くのか?
それを知りたいが為、第一部は頁を繰る手が速くなる。
第二部「民雄」は、本書の中で最も頁数が多く、変化もあり、面白い。
潜入捜査のための北海道大学入学。
赤軍派のテロ活動を未然に防ごうとする大菩薩峠でのスパイ活動。
緊迫した場面の連続で、ワクワクしながら読んだ。
第三部「和也」も、第二部に負けず劣らず面白い。
疑惑の豪腕刑事・加賀谷への特命捜査。
脅し、取引、騙し、背信、裏切り、摘発……
加賀谷のこわばった顔。
永見由香の驚愕の表情。
和也の抑揚のない声。
心優しい和也が、次第に非情の男へと変化していくラストに恍惚となる。
この小説に流れる時代背景は、戦後から現代。
私は全共闘世代より遅れてきた世代だが、小説の途中からは、私の記憶している社会情勢も加わり、そういう意味でも興味深く読めた。
「おれたちは」と熊谷は唐突な調子で言った。「自分が生きた時代を何で記憶するものかね。総理大臣の名前か? 警視総監の名前か? ひいきの野球チームのエースの名か?」
民雄は少し考えてから答えた。
「わたしなら、家族の顔でしょうね。父親がいくつのとき何があった。子供が何歳のときに、何があったと」(下巻106頁)
あなたは、自分が生きた時代を、何で記憶しているだろうか?
子育ても終わり、社会人としての役割も一応果たしたので、これからは常識や世間体などに囚われず自由に生きようと思った。
①常識や世間体を気にしない。
②義理を欠く。
③流行を追わない。
④TVはなるべく観ない。
……など、10項目ほど自分なりの生き方の基本を決めたのだが、その一つに、「物を所有しない」というのがあった。
「物を買わない」と言い直してもいいかもしれない。
これ以上物を増やすと、小さな荒家がパンクするというのもあるが、50歳を過ぎたらいつ死んでもおかしくはないと思っているので、これからはむしろ物を減らしていくべきだと考えた。
そして死ぬ時には、なるべく無所有の状態でありたい。
本はかなり処分したが、それでもまだ1000冊ほどは残っているし、これも近いうちにすべて売ってしまおうと思っている。
図書館が自分の本棚と考えれば、もう本を所有する必要もない。
同じく、映画館は我が家のホームシアター、美術館は我が家の居間、すべての山は我が家の庭、すべての海は我が家のプール……と考えていけば、もう何も所有しなくても生きていける。(かな?)
テント泊や野宿ができれば、日本中、いや世界中のすべてのフィールドが自分の寝床になる。(日本縦断徒歩旅行した時の実感……でも一歩間違えるとホームレス状態になるので要注意!)
話が変な方向に行ってしまったので、少し戻して――
現在の私の三大愉楽は登山と映画と読書。
読書に関しても、50歳を過ぎてからは変化があった。
ベストセラーや、巷で評判の本などは、ほとんど読まなくなった。
若い頃は、誰もが読んでいる本は一応常識として読んでいたが、今はもうその必要もない。
それに、誰もが読みたがる本は、図書館では予約順番待ちになるので、かなり待たなければならない。そこまでして読もうという本もない。
ミステリーにおいても然り。
評判に囚われることなく、自分にとって興味のある本だけを読むようになった。
数年前までは、年末に刊行される『このミステリーがすごい!』を参考にして読み漁っていたが、今は『このミス』は買うが、ランキングの本はほとんど読まなくなった。(読めなくなった――か?)
昨年末に出た『2008年版 このミス』にランキングされている作品も、『悪人』(吉田修一)や『サクリファイス』(近藤史恵)など、数冊しか読んでいない。
もちろん1位にランクされている『警官の血』(佐々木譲)は読んでいない。
(やっと本作に辿り着いた! 前置きが長くて済みません)m(_)m
3月初旬、bambooさんから『警官の血』を勧められていたので、図書館に予約しておいたら、やっと手許に届いた。
田舎の図書館なので、2ヵ月足らずで届いたが、都会の図書館だと、もっと待たなければならなかっただろう。
上・下巻合計800頁弱の大作。
だが、手にした途端、一気に読んでしまった。
いや、読まされたと言うべきか。
面白くて、アッという間に読了してしまった。
《警察官三代の運命を描く大河小説の力作》と帯に謳ってあるが、大河小説と呼ぶにはちょっと短すぎると思った。
少なくとも、清二、民雄、和也それぞれで、各1巻は必要だったのではないだろうか。
裏を返せば、それほど面白く、もっと読みたかったということでもあるのだが――。
第一部「清二」は、抑えた筆致で、静かに始まる。そして、淡々と物語は進行する。
アクションを求める読者は、この第一部で本を閉じる可能性がある。
そうはさせないように、第一部が始まる前に、プロローグに仕掛けがしてある。
このプロローグに、第一部の最後の場面が描かれているのだ。
そして、読者の興味を惹くように、謎を残してぷっつり文章が切れている。
なぜあの場面に行き着くのか?
それを知りたいが為、第一部は頁を繰る手が速くなる。
第二部「民雄」は、本書の中で最も頁数が多く、変化もあり、面白い。
潜入捜査のための北海道大学入学。
赤軍派のテロ活動を未然に防ごうとする大菩薩峠でのスパイ活動。
緊迫した場面の連続で、ワクワクしながら読んだ。
第三部「和也」も、第二部に負けず劣らず面白い。
疑惑の豪腕刑事・加賀谷への特命捜査。
脅し、取引、騙し、背信、裏切り、摘発……
加賀谷のこわばった顔。
永見由香の驚愕の表情。
和也の抑揚のない声。
心優しい和也が、次第に非情の男へと変化していくラストに恍惚となる。
この小説に流れる時代背景は、戦後から現代。
私は全共闘世代より遅れてきた世代だが、小説の途中からは、私の記憶している社会情勢も加わり、そういう意味でも興味深く読めた。
「おれたちは」と熊谷は唐突な調子で言った。「自分が生きた時代を何で記憶するものかね。総理大臣の名前か? 警視総監の名前か? ひいきの野球チームのエースの名か?」
民雄は少し考えてから答えた。
「わたしなら、家族の顔でしょうね。父親がいくつのとき何があった。子供が何歳のときに、何があったと」(下巻106頁)
あなたは、自分が生きた時代を、何で記憶しているだろうか?
私は、第二部「民雄」も面白かったですが、第三部「和也」の方に、よりカタルシスを感じました。
映画『ゴッドファーザー』で、マフィアを嫌っていた末の息子マイケルが、父の死後、次第に非情の男へと変化していくのを観ているような、そんな錯覚に陥りました。
第三部をもうちょっと長く書いて欲しかったような…
多良のヤマシャクヤクはもう咲いているのですか?
私も見てみたいですぅ~!
いつか、咲いている場所をこそっと教えて下さいね。
前置きの部分もまったくI think so!(*^_^*)
私は民雄の部分が、3人の中で年齢が幾分近いせいか、時代背景が掴めるのもあって興味深く読まされました。和也が、たくましい男へと変貌していくのに拍手喝采したのも隠せません。
警察物は、○○は嫌いという先入観を捨てないと、良い物に出会えないと再認識させられた本でした。(当たり外れは良しとしましょう)
図書館で本を待つ時間も好きな私ですよ。
多良の山芍薬のご機嫌伺いにも出かけなければ・・・、春は忙しい