韓国映画の『怪しい彼女』のリメイクで、
20歳の姿に若返ってしまった毒舌おばあちゃんが巻き起こす騒動を描いた作品。
ヒロインの20歳の姿を多部未華子が、
73歳の姿を倍賞美津子が演じている。
この手の映画にはそれほど興味はないのだが、
私は、多部未華子のファンなので、
〈彼女の主演作は一応見ておかなければ……〉
と、見に行ったのだった。
下町に住む毒舌おばあちゃん・瀬山カツ(倍賞美津子)は、
シングルマザーでキャリアウーマンの娘・幸恵(小林聡美)と、
自称・バンドマンの孫・翼(北村匠海)の三人暮らし。
パートをしている銭湯などで、
娘自慢、孫自慢ばかりするものだから、
周囲の人間はみんな内心うんざりしている。
だが、若かりし頃からカツに恋心を抱き続ける中田次郎(志賀廣太郎)だけは、
いつもカツの一番の味方。
次郎に思いを寄せる相原みどり(金井克子)はそれが面白くなく、
カツとつかみ合いの大喧嘩になることもしばしばだった。
しかし、その自慢の娘・幸恵との仲も、最近はぎくしゃくしており、
女手一つで娘を育て、何かと恩着せがましい物言いをするカツに、
ある日とうとう幸恵の不満が爆発する。
喧嘩となり、思わずカツは家を飛び出してしまう。
そのままトボトボ夜道を歩いていると、見たこともない小さな写真館を発見。
ウィンドウに飾られていたのは、大好きなオードリー・ヘップバーンの写真。
何かに吸い寄せられるように写真館に入っていくカツは、
店主(温水洋一)に言われるがまま、カメラの前へ。
「私がこのカメラでお姫様にしてあげますよ」
そう微笑んで、店主はシャッターを切ったのだった。
写真館を出たカツはバイクのミラーに映る自分を見て驚愕する。
そこには20歳に若返った自分(多部未華子)の姿があった……
この若返りという設定、
2016年2月5日から3月25日まで、毎週金曜日23:15~翌0:15に、
テレビ朝日系の「金曜ナイトドラマ」で放送された、
『スミカスミレ 45歳若返った女』というTVドラマに似ている。
このドラマでは、
ヒロインの20歳の姿を桐谷美玲が、
65歳の姿を松坂慶子が演じている。
私の配偶者が毎週見ていたので、
私も(毎週ではないが、時々)観ていた。
TVドラマ『スミカスミレ 45歳若返った女』が始まったとき、
〈韓国映画『怪しい彼女』のパクリではないか……〉
という噂も出たが、
『スミカスミレ 45歳若返った女』の原作は、
高梨みつばによる日本の漫画『スミカスミレ』で、
2013年10月号から『Cocohana』(集英社)に連載されている。
それに対し、
韓国映画『怪しい彼女』の韓国での公開は2014年1月22日で、
(日本での公開は7月11日)
『怪しい彼女』の公開よりも、
漫画『スミカスミレ』の連載開始が早いので、パクリの可能性は低く、
偶然の一致と考えた方が良さそうだ。
それに、設定が似ているだけで、物語の中身はまったく違う。
20歳に若返ったカツ(多部未華子)は、
〈これは好きに生きてこられなかった自分へ神様がくれたチャンス!〉
とばかりに、カツという名前を捨て、
あこがれの「オードリー・ヘップバーン」と「原節子」から名を採り、
「大鳥節子」として生きることに決める。
次郎宅に居候することになった節子は、
商店街の“のど自慢大会”に出かけ、
飛び入り参加で「見上げてごらん夜の星を」を熱唱する。
その透き通った優しい歌声は、
会場にいた人々だけでなく、
偶然通りかかった音楽プロデューサーの小林拓人(要潤)をも魅了してしまう。
節子の声に惚れこんだ翼は、自身のバンド“怪しい彼女”のボーカルに節子を誘う。
かわいい孫のためにと、ひと肌脱ぐことを決意した節子は、
それまで翼たちがやっていた音楽を騒音だと言い切り、
十八番の「真赤な太陽」を生き生きと歌い上げる。
一方、のど自慢大会以来、節子の声に運命を感じた小林は、
節子を発見し密かに後をつけるが、ストーカーと間違われてしまう。
一方、カツの身を案じる次郎は、
彼女の失踪と時期を同じくして突然現れた節子を疑い追い詰めるが、
逆に節子に拘束&監禁されてしまう始末……
だが、そこでようやく、「節子は、カツなのだ」という事実に気付くのだった。
小林は、節子たちを呼び出し、大人気音楽番組への出演を打診。
そこで披露した「悲しくてやりきれない」が多くの人の心にしみわたり、【動画】↓
バンド“怪しい彼女”は一気に知名度を上げ、
ついには人気ロックフェスへの特別出演が決まる。
バンド活動が軌道に乗る中、節子と小林との距離が急速に近づいていく。
亡き夫以来の恋心に、戸惑いながらも胸の高鳴りが止められない節子。
そんな節子を見て、複雑な思いの翼、次郎……
それぞれの想いが交錯する中、迎えたロックフェス当日、事件は起こる。
その時、節子がとった意外な行動とは……?
序盤は、倍賞美津子が演じるところのカツを中心に展開するので、
多部未華子ファンとしては、あまり面白くない。
倍賞美津子は、若き頃は魅力的だったし、
特に、映画『復讐するは我にあり』などでは妖艶ですらあったのだが、
〈どうしてこうなっちゃったの?〉
というくらい変貌していて、ビックリ。
倍賞美津子が若返っても、多部未華子にはならないような気がするのだが、如何。
彼女の演技力ではなく、
監督の演出力なのだとは思うが、
カツの演技も不自然で、見ている私としては、感情移入できずに困った。
笑いを狙ったであろう場面も、なんだか笑えず、
〈こんな感じで進行していくのかな~〉
と不安になった。
長い序盤が終わり、
カツが若返って、多部未華子が出てくる頃から、
物語も動き出し、俄然面白くなる。
TVドラマの『デカワンコ』(2011年)や『ドS刑事』(2015年)を彷彿とさせる演技力で楽しませてくれる。
歌に関しては、(ビックリするほどではないが)意外に上手く、
説得力のある歌唱で、感動させてくれる。
映画では、
『見上げてごらん夜の星を』『真赤な太陽』『悲しくてやりきれない』などを歌っているが、
私としては、『真赤な太陽』に、より感動した。
スローな曲よりもアップテンポの曲をもっと聴きたいと思った。
これらの耳に残る昭和の名曲はすべて小林武史がアレンジしており、
この小林武史プロデュースの楽曲『帰り道』をラストに多部未華子が歌うが、
これがなかなか良かった。
実際は、anderlust(アンダーラスト)というユニットが歌っている曲のようだ。
映画の“質”や“完成度”などでは、
それほど高い点はつけられないし、
正直、
〈レビューを書くほどの作品でもないかな~〉
と思ったが、
多部未華子の歌がイイし、
彼女のコメディエンヌぶりも見るに値するし、
〈やはりレビューを書いておこう〉
と思い直した。
中田次郎役の志賀廣太郎の頑張りが目立ち、
なんだか元気のないおやじさんの役が多い彼にしては、
意外性があって良かったし、
志賀廣太郎の演技にもぜひ注目してもらいたい。
今、「Yahoo!映画」のユーザーレビューを見たら、
皆さん、けっこう楽しまれているようで、高得点であった。
笑わされ、泣かされ、感動させられるコメディー映画『あやしい彼女』、
映画館で、ぜひ……
20歳の姿に若返ってしまった毒舌おばあちゃんが巻き起こす騒動を描いた作品。
ヒロインの20歳の姿を多部未華子が、
73歳の姿を倍賞美津子が演じている。
この手の映画にはそれほど興味はないのだが、
私は、多部未華子のファンなので、
〈彼女の主演作は一応見ておかなければ……〉
と、見に行ったのだった。
下町に住む毒舌おばあちゃん・瀬山カツ(倍賞美津子)は、
シングルマザーでキャリアウーマンの娘・幸恵(小林聡美)と、
自称・バンドマンの孫・翼(北村匠海)の三人暮らし。
パートをしている銭湯などで、
娘自慢、孫自慢ばかりするものだから、
周囲の人間はみんな内心うんざりしている。
だが、若かりし頃からカツに恋心を抱き続ける中田次郎(志賀廣太郎)だけは、
いつもカツの一番の味方。
次郎に思いを寄せる相原みどり(金井克子)はそれが面白くなく、
カツとつかみ合いの大喧嘩になることもしばしばだった。
しかし、その自慢の娘・幸恵との仲も、最近はぎくしゃくしており、
女手一つで娘を育て、何かと恩着せがましい物言いをするカツに、
ある日とうとう幸恵の不満が爆発する。
喧嘩となり、思わずカツは家を飛び出してしまう。
そのままトボトボ夜道を歩いていると、見たこともない小さな写真館を発見。
ウィンドウに飾られていたのは、大好きなオードリー・ヘップバーンの写真。
何かに吸い寄せられるように写真館に入っていくカツは、
店主(温水洋一)に言われるがまま、カメラの前へ。
「私がこのカメラでお姫様にしてあげますよ」
そう微笑んで、店主はシャッターを切ったのだった。
写真館を出たカツはバイクのミラーに映る自分を見て驚愕する。
そこには20歳に若返った自分(多部未華子)の姿があった……
この若返りという設定、
2016年2月5日から3月25日まで、毎週金曜日23:15~翌0:15に、
テレビ朝日系の「金曜ナイトドラマ」で放送された、
『スミカスミレ 45歳若返った女』というTVドラマに似ている。
このドラマでは、
ヒロインの20歳の姿を桐谷美玲が、
65歳の姿を松坂慶子が演じている。
私の配偶者が毎週見ていたので、
私も(毎週ではないが、時々)観ていた。
TVドラマ『スミカスミレ 45歳若返った女』が始まったとき、
〈韓国映画『怪しい彼女』のパクリではないか……〉
という噂も出たが、
『スミカスミレ 45歳若返った女』の原作は、
高梨みつばによる日本の漫画『スミカスミレ』で、
2013年10月号から『Cocohana』(集英社)に連載されている。
それに対し、
韓国映画『怪しい彼女』の韓国での公開は2014年1月22日で、
(日本での公開は7月11日)
『怪しい彼女』の公開よりも、
漫画『スミカスミレ』の連載開始が早いので、パクリの可能性は低く、
偶然の一致と考えた方が良さそうだ。
それに、設定が似ているだけで、物語の中身はまったく違う。
20歳に若返ったカツ(多部未華子)は、
〈これは好きに生きてこられなかった自分へ神様がくれたチャンス!〉
とばかりに、カツという名前を捨て、
あこがれの「オードリー・ヘップバーン」と「原節子」から名を採り、
「大鳥節子」として生きることに決める。
次郎宅に居候することになった節子は、
商店街の“のど自慢大会”に出かけ、
飛び入り参加で「見上げてごらん夜の星を」を熱唱する。
その透き通った優しい歌声は、
会場にいた人々だけでなく、
偶然通りかかった音楽プロデューサーの小林拓人(要潤)をも魅了してしまう。
節子の声に惚れこんだ翼は、自身のバンド“怪しい彼女”のボーカルに節子を誘う。
かわいい孫のためにと、ひと肌脱ぐことを決意した節子は、
それまで翼たちがやっていた音楽を騒音だと言い切り、
十八番の「真赤な太陽」を生き生きと歌い上げる。
一方、のど自慢大会以来、節子の声に運命を感じた小林は、
節子を発見し密かに後をつけるが、ストーカーと間違われてしまう。
一方、カツの身を案じる次郎は、
彼女の失踪と時期を同じくして突然現れた節子を疑い追い詰めるが、
逆に節子に拘束&監禁されてしまう始末……
だが、そこでようやく、「節子は、カツなのだ」という事実に気付くのだった。
小林は、節子たちを呼び出し、大人気音楽番組への出演を打診。
そこで披露した「悲しくてやりきれない」が多くの人の心にしみわたり、【動画】↓
バンド“怪しい彼女”は一気に知名度を上げ、
ついには人気ロックフェスへの特別出演が決まる。
バンド活動が軌道に乗る中、節子と小林との距離が急速に近づいていく。
亡き夫以来の恋心に、戸惑いながらも胸の高鳴りが止められない節子。
そんな節子を見て、複雑な思いの翼、次郎……
それぞれの想いが交錯する中、迎えたロックフェス当日、事件は起こる。
その時、節子がとった意外な行動とは……?
序盤は、倍賞美津子が演じるところのカツを中心に展開するので、
多部未華子ファンとしては、あまり面白くない。
倍賞美津子は、若き頃は魅力的だったし、
特に、映画『復讐するは我にあり』などでは妖艶ですらあったのだが、
〈どうしてこうなっちゃったの?〉
というくらい変貌していて、ビックリ。
倍賞美津子が若返っても、多部未華子にはならないような気がするのだが、如何。
彼女の演技力ではなく、
監督の演出力なのだとは思うが、
カツの演技も不自然で、見ている私としては、感情移入できずに困った。
笑いを狙ったであろう場面も、なんだか笑えず、
〈こんな感じで進行していくのかな~〉
と不安になった。
長い序盤が終わり、
カツが若返って、多部未華子が出てくる頃から、
物語も動き出し、俄然面白くなる。
TVドラマの『デカワンコ』(2011年)や『ドS刑事』(2015年)を彷彿とさせる演技力で楽しませてくれる。
歌に関しては、(ビックリするほどではないが)意外に上手く、
説得力のある歌唱で、感動させてくれる。
映画では、
『見上げてごらん夜の星を』『真赤な太陽』『悲しくてやりきれない』などを歌っているが、
私としては、『真赤な太陽』に、より感動した。
スローな曲よりもアップテンポの曲をもっと聴きたいと思った。
これらの耳に残る昭和の名曲はすべて小林武史がアレンジしており、
この小林武史プロデュースの楽曲『帰り道』をラストに多部未華子が歌うが、
これがなかなか良かった。
実際は、anderlust(アンダーラスト)というユニットが歌っている曲のようだ。
映画の“質”や“完成度”などでは、
それほど高い点はつけられないし、
正直、
〈レビューを書くほどの作品でもないかな~〉
と思ったが、
多部未華子の歌がイイし、
彼女のコメディエンヌぶりも見るに値するし、
〈やはりレビューを書いておこう〉
と思い直した。
中田次郎役の志賀廣太郎の頑張りが目立ち、
なんだか元気のないおやじさんの役が多い彼にしては、
意外性があって良かったし、
志賀廣太郎の演技にもぜひ注目してもらいたい。
今、「Yahoo!映画」のユーザーレビューを見たら、
皆さん、けっこう楽しまれているようで、高得点であった。
笑わされ、泣かされ、感動させられるコメディー映画『あやしい彼女』、
映画館で、ぜひ……