一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

映画『あしたのジョー』 ……伊勢谷友介と香川照之の成りきりぶりが凄い……

2011年03月06日 | 映画
いつだったか、ネット仲間のそよかぜさんやクラッカーさん達と山に登った時、映画の話題になった。
そよかぜさんが、映画『SPACE BATTLESHIP ヤマト』の話をされていたので、
「あれはなかなか面白かったですね」
と私が相づちを打つと、
「えっ、タクさんも見たんですか?」
とビックリしたような表情をされた。
「ええ、見ましたとも」
と答えると、
「ブログにレビューは書いておられなかったし、ああいったものは見ない人かと思ってました」
と仰ったので、私の方が少し驚いたのだった。
普段、ブログの映画レビューで、小賢しいことばかり言っているので、
漫画やアニメの実写版は見ないようなイメージを持たれているのかもしれない……
が、私は見るのである。(笑)
『SPACE BATTLESHIP ヤマト』に関しては、
制作会社がROBOTで、監督が山崎貴という『ALWAYS 三丁目の夕日』コンビであったし、
アニメの『宇宙戦艦ヤマト』には少なからぬ思い出もあったので、
公開初日、仕事帰りにレイトショーで見た。
けっこう楽しませてもらったし、レビューも書こうと思っていた。
タイトルも、
「手が早すぎるぞ古代進」(爆)
と決まっていた。
ただ、この頃は雨の日が少なく、休日は山にばかり登っていたので、レビューをブログに書ける日がなかったのだ。
休日が大雨か嵐であったなら、すぐに書こうと思っていたのだが、ついにその時は訪れなかった。
まあ、たまにそういうこともある。

で、映画『あしたのジョー』である。
漫画の『あしたのジョー』は、若き日、『週刊少年マガジン』でリアルタイムで読んでいた。
ワクワクさせられたし、思い出として強く残っている。
1970年に、石橋正次主演で映画化されたこともあるが、
実写版のキャストがあまりに漫画のイメージと違い過ぎて、あまりパッとしなかった。


2011年版はどうだろうと、期待しながら見に行った。
『あしたのジョー』に夢中になった世代の人ならば、ストーリーなど紹介しなくても大丈夫だと思うのだが、まったく知らない人もいるかもしれないので、一応書いておく。



【ストーリー】
昭和40年代、
東京の下町で殺伐とした生活を送る矢吹丈は、
その天性の身のこなしから、元ボクサー・丹下段平にボクサーとしてのセンスを見出される。
しかし、問題を起こしたジョーは少年院へ。
そこでチャンピオンレベルの力を持つプロボクサー・力石徹と運命の出会いを果たす。
反目しながらもお互いの力を認め、ライバルとして惹かれ合うふたり。
一足先に少年院を出た力石は、財閥の令嬢・白木葉子の支援による恵まれた環境のなか連戦連勝。
圧倒的な強さでエリート街道をひた走る。



一方のジョーは、橋の下のオンボロジムで段平と二人三脚の特訓。
野生むき出しで「クロスカウンターパンチ」を得意とする人気ボクサーとなる。
やがて、力石は世界タイトルに手が届くところまで上り詰める。
だが、力石は世界戦の前にジョーとの決着を望み、葉子を困惑させる。
ジョーも、段平に力石戦実現を強く求める。
しかし、ふたりの間には、そのキャリア、実力の差もさることながら、ボクシングでは決定的となるウエイトの差もあった。
対決を妨げる壁は、厚く、高かったが、認めあうふたりは、命を削り、これを乗り越える。



そして運命の日。
場所はボクシングの聖地・後楽園ホール。
ふたりは宿命のリングに上がる……

(ストーリーはパンフレットより引用し構成)


見た感想を一言で表現するならば、
「面白かった~」
である。
期待以上の出来であった。
特に、力石徹役の伊勢谷友介と、丹下段平役の香川照之が凄かった。

伊勢谷友介。
もう力石徹に成りきっていて、恐いくらいだった。
減量シーンもボクシングシーンも文句なし。
体脂肪率4%前後に肉体改造して挑んだ体は、本作に圧倒的な説得力をもたらしている。


矢吹丈役の山下智久もかなり頑張っていたが、伊勢谷友介なくしてこの作品はあり得なかったと思われる。


香川照之。
ボクシング好きで知られる彼だからこそ演じられた丹下段平であった。
伊勢谷友介と同様、その成りきりぶりは半端ではなかった。
まるで丹下段平が乗り移ったかのよう。
元ボクサーという役どころの身のこなしも見事で、彼の丹下段平を見るだけでも十分にモトが取れる作品であった。


彼は最近『慢性拳闘症』という本を出した。
自身の「拳闘」に対する“異常な性癖と症候群”を“病”と表現し、
丹下段平役に懸けた思い、
共演者やスタッフとの撮影の日々を情熱的に描く。
映画のサイドストーリーとして楽しめる一冊。
機会があったら、ぜひ……


香里奈。
よく健闘していたが、やはり白木葉子のイメージとはちょっと違う気がした。
セリフもやや一本調子で、現代っ子過ぎる雰囲気が難点。
私がキャスティングするなら、
小西真奈美か、
少し前の松たか子。
令嬢としての品の良さと、清楚な美が欲しかったところ。


映画が始まって、全体の3分の2くらいまでは、もう傑作と呼んでもいいような展開。
ワクワクしながら見ていた。
だが、残り3分の1で、やや失速した。
抒情に流れ、TVドラマのようなラストを迎えるに及んで、ちょっと落胆。
あのテンションを保ったままラストまで突っ走っていたならば、きっと素晴らしい作品になっていただろうと思われるので、それが本当に惜しい。
まあ、それはそれとして、映画『あしたのジョー』は見どころいっぱいの楽しい作品であった。
見て損のない作品どころか、映画ファンならぜひスクリーンで見ておいて欲しい作品である。
漫画・アニメの実写版として侮ることなかれ。

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