一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

「松本蘭ヴァイオリン・リサイタル」(ピアノ:新居由佳梨)東与賀文化ホール

2023年09月24日 | 特別企画「逢いたい人に逢いに行く」


「逢いたい人に逢いに行く」という特別企画の第29回目は、
ヴァイオリニストの松本蘭。(このブログでは2度目の登場・前回は2019年)


松本蘭というヴァイオリニストを知ったのは、
高嶋ちさ子が2006年に立ち上げたプロジェクト「高嶋ちさ子12人のヴァイオリニスト」においてだった。
このメンバーの中に、とびっきり美しいヴァイオリニストがいた。
それが松本蘭だった。
驚いたことに、ヴァイオリニストでありながら、
2009年度ミス日本グランプリ決定コンテストにて、
ミス日本「ミス着物」を受賞する。




同年、アルバム「蘭ing」(ワーナーミュージック・ジャパン)でソロCDデビュー。
その後の活躍は、皆さんもご存じの通り。



【松本蘭】
桐朋学園大学音楽学部卒業後、同大学研究科修了。
ヴァイオリンを徳永二男氏に師事。
これまでにソリストとして、
東京交響楽団、京都市交響楽団、日本フィルハーモニー交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団などと共演。
2006年より「高嶋ちさ子12人のヴァイオリニスト」のメンバーとして、
3年間の活動を経たのちソロ活動を開始。
2009年ワーナーミュージック・ジャパンよりCDデビュー。
発売前に先行配信されたiTunes限定はクラシックチャートにて1位を獲得。
2013年、セカンドアルバムとなる「GROW」、
初めてのセルフプロデュース作品となるアルバム「Romance」を2016年リリースし、
好評を博す。
第41回2009年ミス日本「ミス着物」を受賞。
台湾総統府を表敬訪問し総統の前で演奏するほか、
2014年7月国際交流基金より助成を受け日本スペイン交流400周年における記念事業でスペイン各地でリサイタルを行い、
また2017年には日露文化交流公演でサンクトペテルブルク、マリインスキー劇場にて公演するなど国際文化交流にも積極的に参加している。
これまで、
津軽三味線・吉田兄弟、
俳優で歌手の寺尾聰、
歌舞伎役者の七代目市川染五郎など、
クラシックの枠を超えたコラボレーションを数多く実施。
2014年より、フジテレビアナウンサー軽部真一と共に「めざましクラシックス」松本蘭バージョンをスタートさせ、現在全国で公演を行い好評を博している。
その他、
テレビ番組やコマーシャルのテーマ音楽を担当するなどの作曲活動や、
テレビドラマや映画に女優として出演するなど、多彩な活動が注目されている。
これまでに、日経CNBC、ヤマハ企業CM、ニッピコラーゲン、東海東京証券ファイナンシャル・グループ「オルクドール」などのイメージキャラクターとしてCM出演。




今回の伴奏者(ピアニスト)は、新居由佳梨。
実は、彼女にも逢いたかった。(コラコラ)


新居由佳梨さんの9月20日のX(Twitter)を見ると、

佐賀に来ましたの。
明日からvn.のヴィーナス蘭ちゃんとアウトリーチ、土曜にリサイタル共演です🎻 🎹ソロも弾きます。
佐賀は十数年ぶりの2回目。今回はどんな出逢いがあるかな☺️


と記されてあったのだが、
新居由佳梨さんが初めて佐賀を訪れたのは、2007年6月17日(日)だった。
なぜ知っているかというと、そのコンサートに私は行っているから。
場所は唐津市相知交流文化センター「サライ」。




当時の新居由佳梨さんのブログから、記事を引用すると……

先日の佐賀県・唐津市でのコンサートは、無事に終了しました!
早速コメントやメッセージをたくさん寄せて下さって、ありがとうございます☆

佐賀県は初めてでしたが、のどかでのんびりとした土地柄からか、車掌さんやタクシーの運転手さん、そしてホールのスタッフの方々も皆さんとても和やかな雰囲気で、
東京でのせかせかした毎日を送っている私にとって、つかの間のほっこりとしたひと時となりました。

相知町という所にあるホールは、4年前に出来たばかりでとてもキレイ。
音響もとても良くて、ポンと音を出すと素晴らしく伸びていきます。
そしてピアノはというと、私の大学時代の恩師が選定されたとかで、さすがに弾きやすいこと!
密かにこのホールとのご縁を感じつつ、開場ほぼギリギリまでリハーサルをしていました。

リハーサルの仕方は本当に人それぞれですが、私は結構時間をいっぱいまで使っちゃいます。
スタインウェイコンサートの時は、大体開場の2時間半前に会場入り。
ホールの方や調律師さんにご挨拶をして、とりあえず弾いてみる。
響き具合やバランス、音の伸び、ピアノの位置などを確認、また時々スタッフや調律の方にも聴いていただいて、問題がなければそのままリハーサルを続行します。

ピアニストは自分の楽器を持ち運べないので、そこにあるピアノをリハーサルの間で自分の味方につけないといけません。
でも例え少しの時間でも、弾き込んでいくと自分の音に、そして音の鳴り方が変わっていきます。
ホールでの求める響きを探して耳を良く使う、又は耳をよく「開く」事によって、自分の求める音に近づけていくわけですが、
ホールとピアノと自分、全てを調和させるのに私の場合は2時間は必要のようです。
あんまり練習しすぎると腕や腰、はたまた頭まで疲れちゃうんですけど、気付くといつもギリギリ。
何でもギリギリ人生を送っている私のクセが、こんなところにも…。

今回のコンサートは聴き馴染みのある有名どころの曲を集めて、背景や心情などを説明しながら、出来るだけイメージを持って聴いていただけたらとトークを長めに入れたのですが、
いつもネタ帳というものを作らずにその場その場の行き当たりばったりでしゃべり出すため、途中で何をいおうとしていたのか白紙になることが(…汗)

でも、佐賀の皆さんはとても温かい雰囲気で聴いて下さり、私の方がエネルギーをたくさんいただいて、本当に楽しくコンサートを終えることができました!
何よりも最初に「こんにちは~」と呼びかけたら、「こんにちは~」と返して下さった方々がたくさんいらした事に、感謝を覚えました♪
聴いて下さる方々との間に壁ができてしまうのは、結構寂しいものなんですヨ。。。

今回は滞在時間があまりありませんでしたが、唐津市相知町はとても印象に残る土地となりました。
お忙しい中お越し下さった方々、演奏終了後のサイン会に並んで下さった方々、そしてコンサートを支えて下さったスタッフの方々、
皆さん本当にどうもありがとうございました!
また是非この素晴らしいホールで演奏できることを夢みて、これからも頑張ります☆


と、あります。
好印象を持ってもらえて嬉しかったのを憶えている。
当時は、まだデビューしたての頃であったが、
初々しくも、豊かな音のふくらみのある演奏が素晴らしかった。
16年ぶりに聴く彼女の演奏も楽しみ。



リサイタル会場は、
前回の「逢いたい人に逢いに行く」という特別企画の第28回目(女性落語家の蝶花楼桃花)
と同じ東与賀文化ホール。


佐賀市文化会館&東与賀文化ホールのFacebookによると、

9月23日(土)午後2時から東与賀文化ホールでリサイタルを開催されるヴァイオリンの松本蘭さん、ピアノの新居由佳梨さんによるアクティビティを21日、東与賀小学校4年生2クラスを対象に行いました。音楽室に集まった子どもたちのすぐ側での贅沢な演奏に子どもたちの笑顔がはじけました。

とあり、9月20日に佐賀入りした後は、
リサイタルに先立ち、東与賀の小学校でアクティビティを行っていたようだ。








そして、佐賀も満喫されたご様子。


で、リサイタルの方はというと、
以下のようなプログラムであった。

エルガー/愛の挨拶
クライスラー/愛の悲しみ
プッチーニ/オペラ《トゥーランドット》より「誰も寝てはならぬ」
チャイコフスキー/タネーエフ編:バレエ組曲《くるみ割り人形》より「花のワルツ」 ピアノ独奏
サラサーテ/ツィゴイネルワイゼン

……休憩……

フランク/ヴァイオリンソナタ
第1楽章 アレグレッド・ベン・モデラート
第2楽章 アレグロ
第3楽章 幻想的な叙唱:ベン・モデラート
第4楽章 アレグレット・ポコ・モッソ

アンコールは松本蘭作曲の「未来へ」



松本蘭さんのヴァイオリンの美しい音色。
その音色を優しく包み込み、支える新居由佳梨さんのピアノの音。
曲と曲の間の松本蘭さんの楽しいお喋り。
いつまでもこの至福のひとときが続けば……と願ったほど魅了された。

特に、後半のフランクのヴァイオリンソナタは素晴らしく、
30分にも及ぶ演奏に激しく心を揺さぶられた。
演奏前に、松本蘭さんから、
第1楽章は、幼児期、
第2楽章は、青年期、
第3楽章は、過渡期、
第4楽章は、締めくくりの時期、
というように、
「私にとっては“人生”を感じさせる曲」
との解説があり、
「人生を旅するように聴いていただければ……」
と語り、ヴァイオリンを弾きだした。
以前に聴いたときもそうであったが、
音色が心に沁みてきて、
〈俺は今、人生の第三楽章にいるのだろうか……〉
とか、
〈いや、もはや第四楽章だろう……〉
などと、考えながら聴いていた。
素晴らしい体験であった。

ちなみに、前半は、赤いドレス。(写真は東与賀文化ホールのFacebookより)


後半はシックな色のドレスだった。(同上)


見ても美しく、聴いても美しく、
松本蘭というヴァイオリニストそのものが美神(ミューズ)のように思えたことであった。



最後に、松本蘭さんが、
「また佐賀に、東与賀に来たいと思います」
と、仰っていたので、
また数年後には逢えそうな気がする。
楽しみに待ちたいと思う。

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