「逢いたい人に逢いに行く」という特別企画も、10回目となった。
記念すべき第10弾は、
NODA・MAP 第22回公演『贋作 桜の森の満開の下』で、
好きな女優3人(深津絵里、天海祐希、門脇麦)に逢おうというもの。
『贋作 桜の森の満開の下』は、
野田秀樹が、
敬愛する作家・坂口安吾の、
『桜の森の満開の下』と『夜長姫と耳男』を主な下敷きとして、
そこに幾つもの安吾作品のエッセンスを散りばめるという大胆な剽窃(=remix)によって、
野田秀樹独自の壮大な戯曲に仕上げた作品。
1989年の初演以来、
キャスト、演出を変えて上演され続けているが、
今回は、
妻夫木聡、深津絵里、天海祐希、古田新太、秋山菜津子、大倉孝二、藤井隆、村岡希美、
門脇麦、池田成志、銀粉蝶、野田秀樹の豪華キャスト公演。
【東京公演】東京芸術劇場
2018年09月01日(土)~09月12日(水)
【パリ公演】国立シャイヨー劇場
2018年9月28日(金)~10月3日(水)
~ジャポニスム2018公式企画~
【大阪公演】新歌舞伎座
2018年10月13日(土)~10月21日(日)
【北九州公演】北九州芸術劇場 大ホール
2018年10月25日(木)~10月29日(月)
【東京公演】東京芸術劇場
2018年11月03日(土・祝)~11月25日(日)
嬉しいことに、九州でも公演されることが判り、
発売後、即完売という激戦を勝ち抜いて、
北九州芸術劇場での千秋楽のチケットをゲットした。
そして、10月29日(月)。
ワクワクしながら劇場のある小倉へ向かったのだった。
リバーウォーク北九州に到着。
北九州芸術劇場は、この建物の中にある。
6階にある大ホールへ。
さあ、いよいよだ。
桜が舞い散る深い深い森の中。
三人のヒダの匠の名人が、ヒダの王家の王(野田秀樹)の下に集められる。
その名は、耳男(妻夫木聡)、
マナコ(古田新太)、
そしてオオアマ(天海祐希)。
三人の匠らは、それぞれ素性を隠し、名人であると身分を偽っている。
ヒダの王は集まった三人の匠らに、
夜長姫(深津絵里)と早寝姫(門脇麦)を守る仏像を姫たちの16歳の正月までに彫りあげることを命じる。
そして、3年の月日が経ち、
三人が仏像を完成させたとき、それぞれの思惑が交錯し……
席は、前から8列目と、好位置の座席チケットを入手していたので、
出演者を10mくらいの近さではっきり見ることができた。
耳男を演じた妻夫木聡と共に、
この戯曲の主演とも言える夜長姫を演じた深津絵里。
妻夫木聡と深津絵里と言えば、
李相日監督の傑作映画『悪人』を思い出すが、
本作『贋作 桜の森の満開の下』でも、息の合った演技で観る者を楽しませてくれる。
妻夫木聡は、夜長姫を演じる深津絵里の印象を、こう語る。
それはもう、言うまでもなく素晴らしいです。でもきっと本番では、さらに化けるんだろうと思ってます。深津さんっていうと“可愛い”イメージが先行するじゃないですか。それを良い意味で裏切ってくれる感じが、つくづくすごいなと思います。それでいて包容力もあるのが不思議。共演経験も多いので、深津さんの前では弱音も吐けるし、僕にとっては心強い存在ですね。(公式パンフレットより)
2001年の公演以来、17年ぶりに同じ役を演じる深津絵里は、こう語る。
こんなに難しい役をよく平気でやっていたなあと。当時のことはほとんど覚えていないんですよね。17年前の私はたぶん、何も理解できていなかったんだと思います。といって、今回どれだけ分っているのかと聞かれたら、心もとないですけど(笑)。今、お稽古していても、毎日新しい発見ばかりで、これが再演の楽しさなんですね。(公式パンフレットより)
映画と違って、舞台は“生き物”なので、日々進化する。
東京公演を観た後、北九州公演も観た人の感想を読んだのだが、
「まったく別物と思えるくらい進化していた」
と語っていたので、
妻夫木聡が言うように、深津絵里の演技は本番を重ねる毎に“化けた”のではないかと思う。
そういう意味で、北九州公演の千秋楽を観劇したのは正解だったと思う。
オオアマを演じた天海祐希。
オオアマの役はこれまで、段田安則、若松武史、入江雅人、市川染五郎などが演じており、
男の役である。
これを、宝塚で男役をやっていた天海祐希が演じるのだ。
果たして……と思っていたが、これが実に格好良かったのだ。
背が高くて、立ち姿が美しいので、見栄えがするし、
オオアマに恋心を抱く早寝姫(門脇麦)とのやりとりは、
まるで宝塚の舞台を観ているような美しさであった。
早寝姫を演じた門脇麦。
ここ数年、
『二重生活』(2016年6月25日公開)
『世界は今日から君のもの』(2017年7月15日公開)
『花筐/HANAGATAMI』(2017年12月16日公開)
『サニー/32』(2018年2月17日公開)
『止められるか、俺たちを』(2018年10月13日公開)
『ここは退屈迎えに来て』(2018年10月19日公開)
などの映画を見てきて、
〈門脇麦って、凄いな!〉
と思っていたので、
機会があったら舞台も観たいなと思っていた。
北九州芸術劇場で『贋作 桜の森の満開の下』が公演されると知り、
そのキャストに門脇麦の名を見つけたときには、本当に歓喜した。
早寝姫が出てくるのは、ほぼ前半だけなので、出演シーンは少ないが、
その可愛らしさ、その存在感で、観る者に鮮烈な印象を残す。
先程も述べたが、オオアマを演じた天海祐希とのからみのシーンでは、
その美しさに惚れ惚れした。
私の夢想ではあるが、
5年後、10年後にまた『贋作 桜の森の満開の下』が再演されるならば、
今回、深津絵里が演じた夜長姫は、門脇麦が演じるのではないかと思った。
深津絵里、天海祐希、門脇麦に逢いたくて北九州芸術劇場へ行ったので、
この3人の話だけになってしまったが、
その他の出演者、
耳男を演じた妻夫木聡、
エナコを演じた村岡希美、
マナコを演じた古田新太、
ハンニャを演じた秋山菜津子、
エンマを演じた池田成志、
赤名人を演じた藤井隆、
青名人を演じた大倉孝二、
アナマロを演じた銀粉蝶なども、
素晴らしい演技で我々を楽しませてくれた。
舞台が素晴らしいのは、
俳優と観客が同じ空間にいること、
同じ空気を吸っていること、
観客次第で俳優の演技も変化するので、観客も舞台構成員の一人であること、
映画と違って、どの舞台も同じではないこと、
一期一会であること……などだ。
タイトルは、『贋作 桜の森の満開の下』となっているが、
(坂口安吾の)原作は、
『桜の森の満開の下』より『夜長姫と耳男』の方に重きが置かれていて、
舞台の方は、物語もやや難解。
坂口安吾の小説世界や、野田秀樹ワールドに馴染んでいない人には難しく感じられるかもしれないが、舞台のダイナミズムを楽しむつもりで観劇すれば、誰にとっても特別なものになる筈。
残すは、東京での凱旋公演のみだが、
前売り券は予定枚数の販売を終了している。
当日券が若干枚数発売されるようなので、チャレンジしてみてはいかがだろうか?
ぜひぜひ。