スーパーの精肉コーナーで私はしばらく考え込んでいた。サーロインステーキをカゴに入れようとした瞬間、鮮やかな赤色の牛すじが目に入った。それは脂がほとんどついていなかった。すぐに高い商品を元に戻して、格安の肉に変更した。
煮込みを作るのは久し振りである。すじ肉は一度茹でこぼす。ここでアクと余分な脂を取り、臭みを抜くのだ。これを流水でよく洗った後、一口大にカットする。
鰹だしと日本酒ですじを煮る。味付けは薄口醤油と少量の砂糖、そして刻み生姜を投入。落し蓋をして弱火で2時間加熱すれば完成である。だしの旨味を吸収して柔らかくなったすじ肉で軽く一杯やり、残りを飯にぶっかけて食う。安い食材でも手をかければ感動の味に変わる。