新シリーズ第一回(長いよ!!)
ブログをやる以上は、より多くの人に見ていただきたいと考える。記事を書くにあたって間違った情報を流してはイカンと思って、自分なりに今一度調べなおす事により、自分の知識の足しにもなっているとも感じている(俺の記事に間違いが無いという意味ではありません)。
俺の人生は「工作」の為にある・・・と思っている。大袈裟の様だが、それは人が呼吸をする事に限りなく近い。俺は何処へ行き何を見た時も「コレはどうやって作ったのか?」という知的欲求を満足させる事に余念がない。それはバイクの部品のみならず、子供を連れて遊びに行った公園の遊具、建築物、店先の商品、街のモニュメントから果てはマンホールの蓋まで、コツコツ・・と叩いてみたり、メジャーで測ったり、写真を撮ったり。場合によっては寝そべって観察したりするので、恐らく街行く人からは変態と思われているであろう。
知人から「道具を買いたいが、どれが良いのか?」と相談される事がしばしばある。もちろん使い道や好みによっても選択は異なってくる事であると思う。
このシリーズは、「バイクいじりに使用する」という前提で、俺の独断と偏見によるものである。プロ向けの内容ではなく、あくまで趣味人に対しての内容である事を予めご理解いただきたい。
今回「工具」というカテゴリーを増やすか否か少々悩んだが、あまり細かく分けるのもご訪問下さる方を翻弄することになるかと思い、当面は「工作」のカテゴリーに入れていくものとしたい。
さて。
バイクやクルマ趣味の人間が、レンチやドライバー等の工具の次に揃える物・・・と思いついたのがハンドドリルである。俺自身もそうだったのだ。
だが、いきなり逆説。正直ハンドドリルは余り使わない。好みにもよるとは思うが、穴あけ作業はその殆どをボール盤で行ってしまうので、ボール盤を入手すると最終的には使わなくなってしまう。
まあそれでも穴あけは物造りの基本であるので、ドリルを初めて購入すると仮定して話を進める事にする。一応「ドリルスタンド」なる物も売られており、ハンドドリルをボール盤的に使用する事も出来る。
バイクをイジる上で、何故にドリルが必要になるのか?
①ボルトやワイヤリング等の針金、インシュロックを通す為の貫通穴を開ける為。
②タップの下穴を開ける為。※タップとはボルトや子ネジをねじ込む穴に、ネジ山を切る道具
③リベットの下穴を開ける為。
④研磨・研削などの回転ツールを使う為。
こんな所か・・・?
メーカー製のバイクに、全く普通にトラブルも無い状態で乗るならば、基本的にはドリルは必要ない。最近のカスタムは「既製のパーツを取り付ける」のが主流であり、既製のパーツは全く無加工で取り付けできるのが当たり前の世界だ(例外もあるが)。
ところが一定以上踏み込んだイジり方をする時や、レースに使用する場合、壊れた部品等を修正・修理する場合、パーツを自作する場合はドリルは欠かせない物になってくる。
ハンドドリルには3種類ある(一部の特殊な物を除く)。チャック(ドリルの刃=キリ先を銜える部分)の大きさである。「6.5mm」「10mm」「13mm」とあり、それぞれ銜えさせる事のできる最大径。
左から13mm、6.5mm、ドリルを忘れて現場で調達した日曜大工用の6.5mmドリルドライバー、充電式10mmドリルドライバー(マキタ製品で若草色のボディの物は日曜大工用、プロ向けは青緑)。仕事では充電式以外10mmチャックは使っていない。
どれを買えば良いのか? 13mmのドリルは6.5mm以下のキリ先も銜える事が出来るから、大は小を兼ねる・・・で13mm?
その考えは必ずしも間違いではないが、ベストでは無い。何でかと言うと、回転スピードがまるで違うのだ。
6.5mm・・・約3000rpm
10mm・・・約1500rpm
13mm・・・約1000rpm
この回転数に差がある理由については長くなるのでこの場では割愛。
バイクイジりの実作業では、ハンドドリルで10mmを超える径の穴を開ける事は少ない。万一必要が生じた場合はホルソー(ホールカッター)を使えばよいので13mmチャックは却下。ホルソーのシャンク(チャックに銜える部分)は10mmチャック用にできているので、DIYに使用するならば10mmチャックがベストであろう。
問題は回転数。まあドリルの場合はどうでもいいと言えばどうでもいいのだが、予算に余裕があるならば変速ドリルをオススメしたい。変速巾にもよるが、6.5mmから10mmまでの守備範囲をカバーできる。逆回転可能な物もあるが、まずその機能は使わない。
※スイッチを引く量によってスピードが変わるタイプの物はオススメしない。スイッチとは別に変速ダイヤルの付いている物が良いと思う。
もしも今後、ドリル以外の電動工具も揃えていくつもりであるならば、変速ドリルを購入するよりも別途スピードコントローラーを用意する方が良かろうと思われる。
これは延長コードのトップメーカー、日動の製品。
それと「ブレーキ」の付いている物をチョイスすべし。ブレーキとはスイッチを離すと直ぐに回転が止まる機能の事。付いていない物はスイッチから指を離しても惰性で暫く回り続けてしまう。
あと、ガングリップタイプの物とD型ハンドルの物があるが、ドリルを使い慣れていないならばD型の方が使いやすいと思う。
D型はキリ先の真後ろを持って押さえる事ができるので楽だが、ガングリップタイプは作業慣れしていないとキリ先を垂直に保つのが難しい。左手を添えてやれば良いが、プロは下の写真の様な持ち方をする。ボタンは薬指で操作する。
普通はこんな持ち方をしそうだが・・・
↓こうやって持つのがプロ。
さて、またさらに逆説であるが、本当はハンドドリルを購入するくらいならば、充電式インパクトドライバーを買った方が良いと思う。充電式インパクトドライバーについては、いずれ記事をアップするつもりだが、ここでとりあえず書いておきたい「最大の欠点」がある。それは、バッテリーに寿命があるという事である。我々仕事で使用している人間はほぼ毎日使用して充電するが、DIYオンリーだと殆ど使わないであろう。いざ使おうと思ったときにはバッテリーが死亡・・・というのが関の山だと思われる。しかも実は本体よりもバッテリーの方が価格が高い場合が多いのだ。レースやコース走行が多い人はコンセントが無くても使用できるので重宝すると思う。
肝心のキリ先(ドリルの刃)であるが、何ミリのキリを持っていれば良いのか? 話はバイクの場合に限ったとして(日曜大工は除く、という意味)考えてみる。
■タップ下穴用
3.3mm/M4
4.1mm/M5
5.0mm/M6
6.8mm/M8
8.5mm/M10
10.2mm/M12(10mmチャックでは銜えられないモデルもある)
■リベット下穴用
3.3~3.4mm/3.2mm径リベット
4.1~4.2mm/4mm径リベット
4.9~5.0/4.8mm径リベット
リベットは下穴径の選択に許容範囲があるので、上の太字の物を使った方がタップ下穴と共有できるというメリットがある。
その他の一般作業用としては、どの道ハンドドリルでの作業では精密な部品は作れないので、0.5mm飛びで持っていれば充分だ。
ドリルは刃物である以上は使っている内に切れ味が鈍る。刃先が欠ける事もあるし、根元や真ん中辺りでポッキリと折れる事もある。その度に新品を買っていたのでは金が掛かるので、再研磨するべし。といっても我々の業界では「キリを研げるようになったら一人前」とまで言われるほど、コツが必要である。私見では、旋盤のバイトを研ぐよりも難しい。一般的には刃物グラインダーや両頭グラインダー等で研ぐが、俺は普通のディスクサンダー(グラインダー)にダイヤモンド砥石をセットするか、面倒な時はベルトサンダーで研いでしまう。
昔は高速カッターの砥石の側面で研ぐ事もあったが、今は砥石タイプのカッターを使っていない。
詳しい手順を文章化するのは困難なので避けるが、新品の刃を良く研究して、形を似せて研ぐ練習をするのが良いと思われる。
通常は刃先が115°になる様に研ぐ。材質が軟らかい場合(木など)は鋭角気味、硬い場合は鈍角気味にする事ができる。が、俺はわざわざ角度を測っている訳ではない。皿ネジの頭を沈める場合は刃先を90°に研いでやる。皿揉み専用の錐も売られているが、それで充分だ。M4の場合(ブレーキマスターの蓋等)はD8と言って頭の径が8mmなので、俺は8.5mmのキリを90°に研いで使っている。
標準的なクオリティのキリ先は、目安として0.1mm当たり10円。あくまで目安。3.3mmのキリならば330円、10.2mmのキリならば1020円といった具合である。最近はホームセンターで0.5mm飛びで10~20本セット2000円以下の激安品もある。実際俺自身、携帯用に所有しているが、使えない事もない。
スタンダードなキリ先はHSS(ハイス鋼、ハイスピードスチールの事)で、ステンレス用としてコバルト刃がある。HSSでもステンレスの穴あけは可能(少しコツが要る)なので、俺は殆どコバルトは使わない。コレとは別にチタンコート等の表面処理が施されたキリもあるが、やはり俺は使わない。理由は再研磨すると地金が出てしまうからだが、確かにチタンコートのキリは使いやすい。
ハンドドリルを使用して穴あけ作業をする時に、作業経験が無いと困るであろう事が幾つかあるので、その対策を紹介する。
その1。穴を開けたい箇所にキリ先を乗せ、スイッチオンすると・・・アレレ、刃先が定まらずにコロコロと動いてしまう。シンニング加工されたキリならば余り苦労しないが、普通の研ぎ方だと刃先の頂点が点というより線に近いので動いてしまうのだ。簡単に対処するには、細いキリから段々拡大するか、センターポンチを打つ。
何故に刃先が定まらないのかというと、刃先が加工物に食いついていないから・・・。ありがちなのが、単純に押さえる力が弱い事。それと加工面に対して直角に刃を当てているつもりが、実は結構傾いている事。厳密には我々プロが作業する場合、刃が食いつくまでは微妙に刃先を傾ける。そしてイキナリ全開で回すのではなく、「ギュン・・ギュン・・ギュイー・・ーン」とオン・オフを数回繰り返して刃先を食い込ませたりする。まあコレは慣れですな。
その2。チャックにはチャックハンドルを差し込む穴が通常は三つ付いている。ドリルのチャックを締める時、この三箇所全てを締める方が良い。
一箇所締めただけだとチャックのインナーがクリアランス分だけ傾いてしまい、しっかり締めたつもりでも途中でキリ先が空回りしてしまうのです。
その3。比較的薄い板に貫通穴を開ける時や、パイプに穴あけする時、穴が開いた瞬間にグサッと刃が入り込んで、勢い余って刃を折ってしまう事が多い。なので、写真のようにキリ先に針金を巻いておくと良い。
ストッパーになります。針金を巻く方向に注意。逆に巻くとほどけてきてしまう。ちなみに最近では「ドリルストッパー」という商品名で同様の機能のものが市販されているが、これで充分。
ドリルは「自然に切れていく感覚」を身につけるまでは、キリ先を焼いてしまう事が多い。細いキリは回しすぎて焼いてしまい、面圧の落ちる太いキリは押さえる力が弱いのに回し続けた結果に焼いてしまう。刃先に油をつけるのも手だが、大量につけすぎると刃先が滑るので逆効果。キリが切れている時は「シュルシュルシュル・・・」と子気味良くキリコを出しつつ刃が入っていくが、「キキーッ」と金属音が出ている場合は刃を研がなければならない。
ドリルは、穴あけ以外にも様々な作業に使える。フレキホースを付けてリューター代わり、バフやスポンジをつけてポリッシャー代り。持っていても損は無いと思う。
①は先端ツールではないが・・・センターポンチ。
②③は18mmと16mmのキリ先だが、シャンクが13mmに銜えられるように細くなっている。
④チタンコートのキリ先。
⑤13mmのキリ先。
⑥フラップディスク。サンドペーパーがたくさん付いている。
⑦元々スポンジを貼り付けてポリッシングする為の物。
⑧ホールソー。主に木材用。バイクのカウルなどの樹脂板にも使える。
⑨サイザルバフ。磨きに使用できる。
⑩⑪ステップドリル。通称タケノコ。一本持っていれば、薄板であれば何種類もの径の穴加工ができる。
⑫削りに使用する。
⑬砥石。
⑭厚板用ホルソー。
⑮薄板用ホルソー。
次回は(いつになる事やら)サンダー(ディスクグラインダー)を予定。