今年一年で、吉村昭の小説は6冊目になる。
はまってしまったようだ。もちろん、大震災がひとつの契機
になったのは確かだが、その文体や、内容の濃さが起因
している。
この”破船”も、異色である。
お船様という儀式が、ある村で冬の海がしけている時に、
生き抜くために、ひそかに行われていた。
当番で、火をたき、荒れる海に苦しむ船を導くのだが、
普通に考えると、灯台ではないが、助けるために導く
ように思える。
しかし、そうではなく、海岸に座礁させるために導いて
いたのだ。座礁させ、生き残った船乗りもしまつして、
船荷を村人で分けていたのだ。餓死から身を守る
ための方法としてだ。
しかし、ある船には、乗組員は、赤い服を着て死んで
いた。何かの病気なのだが、赤い服だけでも、使える
と取りにいってしまい、災いを背負い込んでしまう。
11歳の少年の目から、淡々と語られるこの物語は、
貧しい漁村の生活がつづられる。
とても、現代からは、想像もできない世界だが、おそらく、
そういう現実があったのだ。と確信がわいてくる。
そんな過酷な世界で、生死の紙一重の中で、人間
は、生きなければならなかったり、死ななければ
ならないのだろう。自分の運命として...
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