★飛び込み記事です★
この8月に開業3周年を迎えたザ・ゲートホテル雷門。お客様への感謝、浅草の街への感謝を込めたイベントが、三日間、もたれていました。
日本を発信するイベントは3つ、紙芝居に和菓子作り、そして盆石体験でした。
私が育った家の床の間にも、黒い塗り盆に、岩や白砂が、山河をみせていました。遠い日の風景が、蘇ってきて、この得難い機会を楽しませてもらうこととしました。
◾️和州遠山流盆石◾️
教えていただくのは、和州遠山流盆石とのこと。奈良発祥という意味で、和州が筆頭に。
この日は、家元五世 三冬庵 森村茜石様と、お二人のお弟子さんが教えてくださいました。
黒い盆に石、砂で流転の世界観を表現する盆石は、古くからの嗜み、大宮人も武士も、それぞれの流派が続いていて、現在も三百を超えているとのこと。(こののち、帰宅後、様々な流派の作品を見ていく中で、私の記憶に近かったのは、遠州流と思いました。茶と造園に名を残す小堀遠州の世界でした。)
この日は、年かさのお弟子さんが説明を、お若い方が模範をみせてくださり、その後、自分たちも体験するという、贅沢な段取りでした。
写真1。先ずはお道具を教えていただきます。雁の羽根で砂をすくい、払うこと。石は特別に形を選ばれ、磨かれていること。色砂は、季節を象徴すること、などを、興味深く聞きました。

写真2。石を立てる。止め石をうつ。地砂を打つ。
黒い盆に、選んだ主となる岩を置くことから、盆石は始まります。「石を立てる」と呼ぶことは、想いを現す様な印象を受けました。
主となる石に対して、小さな黒石、ないしは色石で「とめ石、留め石か?」を打ちます。急に風景が起きてくるのは、大小の比較がされるからか?と、面白くみました。
石に添う形で、色砂を配します。砂を撒くと言わず、「砂を打つ」といいます。
色砂は季節を象徴します。少しく明るい翠は春を、くすんだ橙色は秋を、くすんだ白は冬を。黒の砂は夜ですが、その中でも輝きの違う物は、違う印象を与えます。

写真3。白砂で、ススキを現す。
銀の曲線をもつ黒文字のような匙で、白砂を取り、重ね打ちして、ススキを現してゆきます。
奇数で打つことは、とめ石にも通じる、日本の約束と思いました。

写真4。帽子様セルクルで月と雲を現す。
呆然とみとれて、写真がありません(苦笑)。
つば広帽子の頂点を抜いたような赤銅の器具を置き、雁の羽根で白砂を重ねて打っていきます。得心したなら、そのセルクルに似た器具を、一息に引き上げます。くっきりした輪郭の月が現れます。
さらに、砂を打ち、雲行きや風を現していきます。表情が深まっていきます。

写真5、完成。永遠は無く、崩し、消えゆく…。
模範の完成です。月夜にススキが静かに揺れています。優しい気持ちの方なのだろうと思ったのでした。
こうして仕上げた盆石は永遠では無く、全て崩して、元の箱に戻していきます。砂はふるって分けていきます。
諸行無常と呼ぶか、生々流転と思うか、いや、虚空蔵(虚空は蔵である)から形を引き出すと考えるか。
自分を見つめ、対話する、豊かな時間…あるいは自分と対峙する、厳しい時間であったかもしれません。
ドイツ由来の箱庭療法を思い出し、洋の東西を超えて、心象風景を捉える人の知恵に感嘆しました。
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