澎湖島のニガウリ日誌

Nigauri Diary in Penghoo Islands 澎湖島のニガウリを育て、その成長過程を記録します。

ニッポン無名偉人伝 遠山正瑛~内モンゴルの砂漠緑化に生涯をささげた日本人~

2014年07月06日 13時44分11秒 | 中国
 昨日、「ニッポン無名偉人伝4~内モンゴルの砂漠緑化に生涯をささげた日本人」(テレビ大阪制作)が放送された。中国・内モンゴル自治区の緑化に尽力した遠山正瑛・鳥取大学名誉教授の生涯を描いたドキュメンタリー番組だった。

 遠山正瑛(1906-2004年)

 遠山が中国・内モンゴルの砂漠化をくい止めようと、内モンゴル自治区恩格貝に入ったのは偶然ではない。彼は戦前、中国(中華民国)への留学経験があり、しかも砂丘地に於ける農業が生涯の研究テーマだった。砂漠化を防ぎ、現地の農業を振興させたいというのは、農学者としての心からの願いであったろう。
 
 だが、いくつか疑問点があった。ナレーションには、次のような部分がある。

「日本からのボランティア緑の協力隊は企業や学校沙漠緑化実践協会の主催で現在…
遠山のもとに1人の男が訪ねてきた
時の…
友好のかたい握手を交わし中国政府は遠山の貢献を高く評価した
しかし遠山はこの時も作業着のまま国家主席と会見こう言った…
中国で生前に銅像が建てられたのはあの毛沢東と遠山だけ
「この銅像も農作業の長靴を履き手には砂漠緑化のシンボルスコップを持っている
遠山の希望どおりに造られた
平和につながる緑化への貢献が高く評価されたのだ
世界中でたたえられたそして…
97歳で天寿を全うした
遠山の遺骨の一部は彼の残した偉大な功績とともに恩格貝の砂漠にまかれた
記念館の中に建てられた墓には今でも日本・中国問わず多くの人々が訪れる
遠山は生前こんなことばを残していた」 


 遠山を訪ねてきた一人の男とは、当時の中共(=中国共産党)首席・江沢民。「反日」で有名な江沢民がわざわざ内モンゴルに遠山を訪ねてきたというのは、何か他に目的がなければ、あり得ない話だと思った。「中国で生前に銅像が建てられたのはあの毛沢東と遠山だけ」とは、何も知らない日本人を喜ばせるための途方もない法螺話なのではないだろうか。モンゴル人にとっては、毛沢東の銅像は「偉大な指導者」の個人崇拝を強要された過去を思い出させるはずで、気分がいいはずはない。

 モンゴル史を少しかじれば分かることだが、内モンゴル自治区(現在中国領)、モンゴル国(外モンゴル)、ブリヤート自治共和国(現・ロシア)は、かつてモンゴル人の国だった。清朝は満洲族による王朝だったので、モンゴル人、チベット人は、満洲人と対等な立場で清朝を支えていた。清朝においては漢人こそが被支配者だった。清朝は、満洲や内モンゴルへの人の移住を厳格に禁止していた。だが、清朝末期、皇帝の威光が衰えるに連れて、漢人農民が内モンゴルに違法移住を始める。中共(=中国共産党)が政権を握ってからは、内モンゴルへの漢人(漢族)農民の入植が政策的、意図的に進められた。その結果、本来、遊牧民であるモンゴル人の牧草地が開墾され、農地に変えられていく。農業は土地を荒廃させるので、牧草地であれば砂漠化しなかった土地まで、砂漠化が急速に進む。遠山が見た砂漠化の光景には、このような歴史的背景があることは間違いないだろう。

 番組で遠山の功績を称える中国人の多くは、ほとんどが漢人だったはずだ。出演した「中国人」のうち、本当のモンゴル人は、レストランで蒙古舞踊を踊った女性とホーミーを歌った男性歌手くらいではないか、とさえ思えてくる。そう、「内モンゴル自治区」でモンゴル人が、まるで観光アイヌのような扱いを受けているという光景を見てしまったような気がした。

 「日中友好」「地球環境の保護」「砂漠の緑化」…どれもケチをつけられない高邁なお話だが、もしかすると、中共(中国共産党)にとっては、善意の日本人(カモ)が葱をしょってやってくるような話なのかも知れない。この番組を単なる「感動物語」として見るだけでは、あの国の実態は何も分からない。遺憾ながら、知花くららさんは「“現地の今”を感じとって」いなかったのだ。



ニッポン無名偉人伝4~内モンゴルの砂漠緑化に生涯をささげた日本人~
              
        2014年7月5日(土)午後4時00分~夕方5時15分

内モンゴルにポプラの木を300万本植え、砂漠の緑化に尽力した遠山正瑛。その不屈の人生に知花くららが迫る。
中国・内モンゴル自治区、ゴビ砂漠にやってきた知花くらら。今回追い求めるのは、この広大な沙漠を緑化するために闘った、偉大なる日本人「遠山正瑛」。彼の口癖は“やればできる。やらなければ出来ない”。諦めることなく、前代未聞のプロジェクトに挑んだ、無名の日本人に迫ります。
• 出演者
【旅人】知花くらら
【ナレーター】窪田等
• 制作
【制作】テレビ大阪

内モンゴルの砂漠緑化を食い止めようとした園芸学者。
留学生として中国に渡った時に目にした砂漠化の状況に心を痛めて中国の緑化を決意。定年を過ぎてから中国へ渡り、その後数十年に渡って緑化に尽力。遠山の意思に賛同した日本からのボランティアは1万人を超える。
知花くららが遠山正瑛の足跡を辿りながら、
内モンゴルの生活にもふれあい、
“現地の今”を感じとっていく