都月満夫の絵手紙ひろば💖一語一絵💖
都月満夫の短編小説集
「出雲の神様の縁結び」
「ケンちゃんが惚れた女」
「惚れた女が死んだ夜」
「羆撃ち(くまうち)・私の爺さんの話」
「郭公の家」
「クラスメイト」
「白い女」
「逢縁機縁」
「人殺し」
「春の大雪」
「人魚を食った女」
「叫夢 -SCREAM-」
「ヤメ検弁護士」
「十八年目の恋」
「特別失踪者殺人事件」(退屈刑事2)
「ママは外国人」
「タクシーで…」(ドーナツ屋3)
「寿司屋で…」(ドーナツ屋2)
「退屈刑事(たいくつでか)」
「愛が牙を剥く」
「恋愛詐欺師」
「ドーナツ屋で…」>
「桜の木」
「潤子のパンツ」
「出産請負会社」
「闇の中」
「桜・咲爛(さくら・さくらん)」
「しあわせと云う名の猫」
「蜃気楼の時計」
「鰯雲が流れる午後」
「イヴが微笑んだ日」
「桜の花が咲いた夜」
「紅葉のように燃えた夜」
「草原の対決」【児童】
「おとうさんのただいま」【児童】
「七夕・隣の客」(第一部)
「七夕・隣の客」(第二部)
「桜の花が散った夜」
おとうさんのただいま
都月満夫
「いってきまーす。」
一年生のヒロ君は、このところ毎日お父さんにそう言って、小学校へ登校します。
「ただいまーッ。」
学校から帰ってきた時も、お父さんにそう言います。
「お帰り。今日も楽しかったかい。」
お父さんはニコニコして迎えてくれます。
夕方になると、ヒロ君とお父さんは毎日晩ごはんの支度をします。
「ヒロ君、今日もお手伝いたのむよ。」
「はーい。」
「今日はホイコーローを作ろうか。」
「なーに、それ。」
「中華料理だよ。豚肉とキャベツの辛みそ炒め。」
「それって、おいしい。」
「おいしいよ。まず、豚バラ肉とキャベツを食べやすい大きさに切って、湯どおしをしまーす。」
「湯どおしって、なーに。」
「料理の下ごしらえでね、材料をお湯で茹でて軟らかくしたり、くさみやあぶら気を抜いたりすることだよ。」
「下ごしらえって、なーに。」
「下ごしらえっていうのは、お料理を手際よく作るための準備のことだよ。お湯が沸いたら、キャベツ湯通し、しまーす。」
「湯どおし、しまーす。」
「キャベツ終わりましたので、お肉を湯どおし、しまーす。」
「お肉を湯通し、しまーす。」
「次は、フライパンにサラダ油を入れます。ニンニクとショウガのみじん切りを入れて香りを出しまーす。」
「香りを出しまーす。」
「ピーマンを炒めまーす。今日はヒロ君の嫌いなナスは入れませーん。」
「入れませーん。」
「ヒロ君、お肉とキャベツを、入れてください。そこに切ってある長ネギも入れてください。」
「はーい。」
「では、お酒を少し入れまーす。」
「お父さん、お酒を入れたら、ボク食べられないよ。酔っ払っちゃうから…。」
ヒロ君はあわてて言いました。
「だいじょうぶだよ。フライパンで煮るとアルコールが蒸発してお酒のおいしさだけが残るんだよ。」
「そーか。では入れまーす。」
「鶏ガラスープ入れます。お砂糖少しとテンメンジャン入れます。お醤油も入れまーす。」
「お父さん、いっぱい入れるね。」
「そうだよ。材料や調味料を入れるときは、おいしくなーれ、おいしくなーれって、思いながら入れるんだよ。そうすると、野菜やお肉も、おいしく食べて欲しいなって思うからね。」
「本当なの。」
「本当だよ。勉強するときだって、勉強したいな、おぼえたいなって、思いながらしたほうがよく頭にはいるんだよ。」
じゃあ、ボク、今度から、そうする。」
「最後にトウバンジャンを入れまーす。これは辛いから、少しだけ入れまーす。」
「少しだけ入れまーす。」
「はい、できあがり。」
ちょうどその時、ヒロ君のお母さんがパートから帰ってきました。ヒロ君はすぐに報告に行きました。
「お母さん、今日はホイコ…。えーと…。」
「ホイコーローだよ。」
お父さんがそっと教えてくれました。
「ホイコーローを作ったよ。おいしくなーれ、おいしくなーれって言ったから、きっとおいしいよ。」
奥の部屋からおばあちゃんも出てきて、四人で晩ごはんが始まりました。
「最近はヒロ君とお父さんがおいしいものを毎日作ってくれるから、お母さん太っちゃった。」
お母さんが笑います。ヒロ君もお父さんと作ったお料理を、お母さんやおばあちゃんがおいしいって食べてくれるのがとても楽しみです。でも、ヒロ君には、お父さんが少し寂しそうに見えます。
お父さんの会社が倒産したのは、三ヶ月くらい前です。それまでは、お父さんがヒロ君に
「行ってくるぞ。」
と言って出かけていました。晩ごはんはパートから帰ってきたお母さんが急いで作っていました。だからヒロ君はお手伝いできませんでした。
そのうちにお父さんが帰ってきて
「ただいま。ヒロ君、今日もいっぱい遊んだかい。楽しかったかい。」って聞いてくれていました。
ヒロ君はお父さんと一緒に、お話をしながら晩ごはんを作るのが大好きです。
「ただいまーッ。」
会社から帰ってきて、大きな声で言うお父さんの声のほうがもっと大好きです。
ヒロ君は、早くお父さんのただいまが、また聞きたいと思っています。
でも、お父さんには、言いません。お父さんだって、そう思っているに違いないからです。
お母さんだって、お父さんに、晩ご飯を作ってあげたいに違いありません。
「うまいな。おかわり。」
大きな声で言うお父さんの声のほうが、好きなんだと思います。
酢豚に入っているパイナップルについてどう思う。
何処に入っていようが、パイナップルはパイナップル。いいんじゃないですか。パイナップルに罪はないでしょう。
私の調べたところによると、酢豚は日本発の中華料理のようですよ。
原型は豚肉の酢漬けといわれ、これを油で炒めるか揚げたものが酢豚の起源と言われる。酢豚という名称は日本で付けられたもので、中国では咕老肉(北京語 クーラオロウ、広東語 クーロウヨッ )または糖醋肉(北京語 タンツーロウ)と呼ばれている。「咕老」はモグモグ食べるという擬態語、「糖醋」は味付けの砂糖と酢である。中国料理店によっては、さらにリンゴ、サクランボ、ケチャップ等を入れて甘酸っぱさを強める場合もあるが、好き嫌いが分かれる。中国では、サンザシという植物の実を砂糖と共にジャムにして乾燥させた「山査子餅」と呼ばれる一種の駄菓子を調味料として入れ、甘酸っぱさを出す事がある。
もともと、そういう甘酸っぱいものを入れる料理なので、パイナップルは代替品と云うことになります。代替品にされた上、あーだ、こーだ言われるパイナップルが不憫でならねー。
オレは喰うぜ!林檎や、さくらんぼ
よりは、お前のほうがずーと美味いぜ。自信を持って皿の中で大きな顔をしていていいんだぜ
。