都月満夫の絵手紙ひろば💖一語一絵💖
都月満夫の短編小説集
「出雲の神様の縁結び」
「ケンちゃんが惚れた女」
「惚れた女が死んだ夜」
「羆撃ち(くまうち)・私の爺さんの話」
「郭公の家」
「クラスメイト」
「白い女」
「逢縁機縁」
「人殺し」
「春の大雪」
「人魚を食った女」
「叫夢 -SCREAM-」
「ヤメ検弁護士」
「十八年目の恋」
「特別失踪者殺人事件」(退屈刑事2)
「ママは外国人」
「タクシーで…」(ドーナツ屋3)
「寿司屋で…」(ドーナツ屋2)
「退屈刑事(たいくつでか)」
「愛が牙を剥く」
「恋愛詐欺師」
「ドーナツ屋で…」>
「桜の木」
「潤子のパンツ」
「出産請負会社」
「闇の中」
「桜・咲爛(さくら・さくらん)」
「しあわせと云う名の猫」
「蜃気楼の時計」
「鰯雲が流れる午後」
「イヴが微笑んだ日」
「桜の花が咲いた夜」
「紅葉のように燃えた夜」
「草原の対決」【児童】
「おとうさんのただいま」【児童】
「七夕・隣の客」(第一部)
「七夕・隣の客」(第二部)
「桜の花が散った夜」
都月満夫
「ねえ…、この辺で美味しいラーメン屋さん知らない?」
スナックのカウンターで、女はいきなりオレの腕に抱きついてきた。オレは驚いて女の顔を見た。三十過ぎの小柄な女だ。女の柔らかい胸の膨らみが、オレの腕を押している。
黒いドレスの女だ。深い襟元から覗く白い谷間が歪んでいる。スタイルは悪くない。
「ラーメン屋?ああ…、あるよ。」
看板の時間だったので、オレは女を連れて店を出た。女は相変わらず、腕にぶら下がっている。女の重さが心地よい。
いい女だが、それだけに気味が悪い。こんな女とは関わりにならないほうがいい。
「この小路を入ったら、右側にある…。」
そう言って、オレは別れようとした。
「ねえ…、付き合ってくれないの?」
「ああ…。オレは、腹減ってないし…。」
「ワタシを置いて帰るの?じゃあ、腹ごなしでもする?協力するわよ。ねっ…。」
女はそう言って、空を指差した。星も見えない空は深海のようだ。水母が逆立ちをして瞬いていた。ルージュで描いたように赤い。
オレは、もう断れなかった。
腹ごなしが終わって、オレたちはラーメン屋のカウンターにいた。小さな店なのでカウンター席しかない。
「あらっ、本当に美味しいわね…。」
「…、お客さん、ウチは不味いものは出さない主義なんでね。」
カウンターの向こうから、老女がネズミのような目で女を見た。
老女はカラスのように黒いワンピースに、白い割烹着を着ている。腰まで伸びた真っ白な髪は、無造作に後ろで束ねられている。
「おい…、旨いって言っただろう。」
オレは女に囁いてから、老女に尋ねた。
「この店は、時々見つからないことがあるんだけど…。酔っているからかな…。」
「お客さん、ウチはね、気に入ったスープが出来ないときは、店を開けないのさ。不味いものでお足は頂けないからね。そんな時は見つからないかもしれないね。ちっぽけな店だからさ…。今夜は運がよかったね。」
老女は、ヒッヒッヒっと笑った。
「あら…、本当に運がよかったのかしら、今夜のアナタは…。」
女はそう言って、オレの股間を握った。
「うっ。ああ…、そうだな。」
「ねえ、レンゲはないの?」
「ウチには、そんなものはないよ。どんぶりを持って、最後の一滴まで飲み干しな…。」
老女はそう言うと、丸椅子に腰掛け、ヒッヒッヒっと、また笑った。機嫌が悪いわけではない。いつもこの調子だ。
「こうやって飲むんだよ。」
オレは、どんぶりを両手で持ち、口をつけてスープを啜った。
…?啜ったはずのオレが、どんぶりに吸い込まれていく。そんなバカな…。オレは、どんどん吸い込まれていく。
熱い、熱いよ。助けてくれ。叫べ、声を出せ。夢だ、これは夢だ。
「わああああ!」
堅いベッドの上で目が覚めた。オレの部屋だ。時計の針は昼の十二時を回っていた。
頭の中は、暴れ馬が駆け回るように痛かった。どうやら、昨夜は飲みすぎたようだ。
頭の中が平穏になってきて、オレは女のことを思い出した。昨夜、女を抱いたはずだ。
思い出せない。髪の長い女だ。今どき珍しい、真っ黒で漆のような髪だ。長い髪は、黒いマントのようだった。唇は真っ赤に塗られていた。目は大きく、長い睫毛が重たそうだった。記憶は断片的で、まるで福笑いだ。
夢だったのか…。オレは、自信がなくなって考え込んだ。
いや、夢ではない。女からメモを貰った。
「腹ごなしをしたくなったら、いつでも電話していいわよ…。」そう言われた気がする。
オレはジャケットのポケットを探った。
あった。ポケットティッシュのラベルだ。裏側にアイブローペンシルで、携帯番号が書かれていた。夢ではなかった。
しかし、名前は書かれていない。オレは女に名を告げたのか…。オレは女に何を話したのか…。あの女は何者だったのか…。無駄な思考が雑踏のように交錯する。回転するミラーボールに当たる光のように、記憶が頭蓋骨に乱反射する。とにかく電話してみよう。
オレは枕の下から携帯を探り出した。
呼び出し音が五回ほど鳴って、女がでた。
「オレは、昨夜ラーメンを…。」
「あら、また腹ごなしがしたくなった?」
眠そうな声がした。
「またって…、オレが誰かわかるのか?」
「わかるわよ。アナタのことは全部…。」
「全部って…、どういうことだ?」
「全部は全部よ。」
小さな疑問は大きな不安となった。それは黒豹のように、爪を立て背中を駆け上った。
「もう一度会えないか?」
「なあに…、せっかちねえ…。
「そんな意味じゃない。」
「いいわ。今から、来ない?」
「仕事はどうする。同伴出勤は御免だぜ。」
「同伴?ああ…、違うわよ。ワタシ、そういうお仕事じゃないわよ…。」
「じゃあ、どういうお仕事だ?」
「どういうって…、保険関係かな。」
「保険…、生命保険か?色仕掛けで、オレを勧誘したってことか?」
「今どき、色仕掛けで保険の勧誘なんて流行らないわよ。ワタシ、面倒臭いのは苦手なの…。来るの?来ないの?」
女が教えてくれたマンションはすぐにわかった。駅南のマンション郡の中でひときわ豪華だった。
『アザーワールド』。別世界ってことか?あの世ってことはないだろう。オレのアパートとは比べ物にならない。玄関で、教えられたオートロックの暗証番号のキーを押した。
「入ったら、一番西側のエレベーターよ。間違えないで…。間違えたら、この部屋にはたどり着けないわよ。」
スピーカーから、気だるい女の声がした。
ドアが開いた。中に入ると、廊下は妙に静かで生活感がない。靴音がうるさいほどに、冷たいコンクリートをノックしてまわる。
言われたとおり、一番西側のエレベーターに乗り、十三階のボタンを押した。
エレベーターの内部は全面ガラス張りで、どっちを向いても自分がいる。どれが本物の自分かわからなくなり、目眩がしてきた。
ドアが開いたので、オレは慌ててエレベーターを降りた。…、ボタンを押し間違えた。
そこは、大浴場だった。どうやら女湯らしい。白い影がぼんやりと見える。
「キーッ!」湯気の向こうで、奇声が上がった。白い影が一斉に立ち上がった。
白い影が身をくねらせて、こちらへ向かってくる。湯気の中から現れたのは、女ではなかった。巨大な芋虫だった。今度は、こっちが奇声を上げる番だ。
オレはUターンして、今降りたばかりのエレベーターに飛び込んだ。そこにエレベーターはなかった。オレは、意識を十三階に残したまま、真っ暗闇の中へ落ちていった。体がゴムのように伸びた気がした。
何かに手が触れた。オレは無意識にそれを掴んだ。暗闇に目が慣れてくると、それが梯子だとわかった。天から地の底まで続いているように見える。旧約聖書の、創世記二十八章十二節で、ヤコブが夢に見た梯子…。天使が上り下りしているという梯子のようだ。
助かった。オレは梯子に足をかけ、登ろうと上を見た。忘れていた。巨大な芋虫が、糸を引いて降りてくる。下は底が見えない闇の中だ。上には芋虫の、黒い鎌のような口が目の前に迫っている。
オレは天使ではない。もう落ちるしか手段はない。オレは目をつぶり、手を離した。
「わああああ!」
気がつくと、オレは見知らぬ場所に立っていた。何処だろう。舗装されていない道。両側には雑草が生えている。空にはカラスの群れ。夕暮れだ。あたりが薄暗い。
見渡すと、白い泥壁の家や板壁の家が建っている。空き地も多い。古臭い風景だ。
右側のトタン屋根に看板があった。「西島塗装店」の文字が見える。少し歩くと、辻の向こうに「木村商店」があった。食料品、日用雑貨と書いてある。
中から、小太りのオバサンが出てきた。
「ヒロちゃん、早く帰らないと、人さらいにさらわれるよ。」
オバサンは、ヒッヒッヒっと、猫のような顔で笑い、店に戻った。
今どき、人さらいはないだろう。しかし、「ヒロちゃん」って誰だ。
オレはあらためて自分の姿を見た。白いランニングシャツに半ズボン、ゴムの靴を履いている。オレは子どもの姿になっていた。小学一、二年生のようだ。
「ヒロちゃん?」オレの親父か?そうか、親父と間違われたのか。ということは、昭和三十年代ということか…。
オレはこの状況に少しずつ慣れてきた。
近所に牛屋があったと親父から聞いた。一升瓶を持って牛乳を買いに行った話…。あった、少し先の左側に…。間違いない。
…、だとすると、牛屋の北側の空き地は、あの女のマンションが立っている場所だ。オレは、もう一度あたりを見渡した。
斜めに延びた火防線があった。その先には消防署があったといっていた。
火防線の先に、が赤く燃えていた。
夕陽は民家を押し潰すほどに大きい。しかし、空は夕陽をシカトするように、薄暗く沈黙し、灰色の雲が流れている。何かが変だ。
オレは気づいた。そこにあったのは、血のように赤い満月だ。夕陽ではない。火防線は南東に延びている。
赤い月が、上からニヤニヤ笑っている。
にやけた月の顔にいた兎が、水飴のように融けだした。融けた兎は、黒いヨダレとなって地面に滴り落ちた。
滴り落ちたヨダレは、一本の糸で吊り上げたように、黒い三角形となった。こちらに向かって来る。人影のようだ。
夏だというのに、黒いローブを着ている。
両肩から、白い大根のようなものがぶら下がっている。何かを背負っている。黒い影は、滑るように近づいてくる。驚くほど速い。
大根のように見えたのは足だ。黒い影は、スネをこちら側に向けて人を背負っている。
不気味な影に、オレは目を見張った。黒い影は、オレの存在など完全に無視して通り過ぎようとした。オレは慌てて飛び退いた。
擦れ違ったときに、微かに香水の匂いがした。あの女の香水だ。オレは反射的に振り返った。オレが見たのは、仰向けにぶら下がっている、今のオレだった。
ドッペルゲンガー…。オレは、もう一人の自分に出遭ってしまった。ドッペルゲンガーに出遭ってしまった人間は、間もなく死ぬ運命にあるという。
逆さに背負われている裸のオレは、口をあけ、大きく目を見開いている。
「わああああ!」
「…。どうしたのよ?」
女の声がした。あの女だ。女はベッドの中で、オレに背を向けている。裸の尻が、オレの腰に当たっている。
「オレに遭った…。」
「なあに…、寝ぼけているの?」
「違う、夢だ。そうだ、夢だよ。」
「夢?大丈夫…。この頃変よ。」
「この頃…。この頃って何だ。昨夜あったばかりだろう…。」
「やっぱり、どうかしている…。もう、三ヶ月じゃない。ふざけているの?」
「三ヶ月?ふざけてなんかいないさ。ふざけているのはキミだろう。そうだ、キミの仕事は何だ。保険関係とか言っていたな。」
「キミって何よ。裸で一緒にベッドにいる女に、言う言葉?」
「ああ、そうだな…。」
「言っても信用しないわよ。」
「言って見なきゃわかんないだろう。」
「ワタシ、人の未来が見えるの。占い師みたいなものよ。いいでしょ、私の仕事なんかどうでも…。面倒くさいのは嫌いなの…。それより…、ねえ。」
女は、肌掛けを右腕で撥ね上げた。
オレの目の前に絶景が現れた。丸い二つの山の頂上は、そそり立っている。山の谷間の向こうは、ゲレンデのように白い下り坂だ。坂を降りきった辺りに小さな窪みがある。その先には小さな丘が見える。丘の茂みは、朝露に濡れたように、黒く光っている。
女はオレの手首を掴み、その手を茂みへと導いて、腰を浮かせた。
オレの人指し指が茂みに触れた。そこにいたのは子猫ではなかった。何かヌルリとしたものが這い出して、指に絡みついた。ミミズのようだ。指は茂みの中へ引き込まれた。中でミミズが蠢いている。ミミズの巣窟だ。
今度は、手首に絡みついて引き込んだ。次は肘に絡みつき、肩に絡みつき、オレの右腕は、完全に茂みの奥に呑み込まれた。
驚いている間もなく、今度は白いマフラーを巻いた、腕ほどの太さの赤いミミズが這い出した。そいつは蛇が鎌首をもたげるように一瞬オレを見た。ミミズに眼はない。そんな冷静な分析をしている場合か…。オレは混乱していた。そいつがオレの首に巻きついた。
「わああああ!」
オレは細い管の中にいた。肉色の壁に窮屈に挟まっていた。頭を反らせると、管の先に白い明かりが見えた。オレは身体を動かしてみた。管は弾力があり身体は動かせる。オレは四つん這いになり、明かりの方に進んだ。
管の先は洞窟だった。息が止まるほどのすえた臭いが鼻を突き刺し、涙が出た。そこには何千、何万もの赤い蝋燭が灯っていた。
黒いローブを着た女が見えた。あの女だ。
「来たのね。このセンスの悪い制服と臭いは我慢してね。ワタシ、今、仕事中なの…。」
「仕事中?」
「ここは人の寿命の間燃え続ける、命の蝋燭の洞窟なのよ。蝋燭の一本一本が、その人の残りの寿命なの。ほら、名前が書いてあるでしょう。生まれたばかりの赤ん坊は長く、死ぬ間際の人間は、こんなに短いわ…。」
「まさか、お前は…。」
「そうよ…。そんなにドキドキすると、早く消えるわよ。アナタの蝋燭は、アナタの心臓の鼓動と同じ速さで燃えているの…。アナタにはもう時間がないわ。ワタシの仲間は、西洋では『グリム・リーパー(収穫者)』と呼ばれているわ。神に仕える農夫とも…。命の刈取り人ってことかしら…。」
「お前は、死神なのか…。」
「そうとも言うわね。」
「死神が、オレに何をした?」
「何もしないわ。保険を掛けさせてもらっただけよ。でも、悪いから、アナタにチャンスをあげるわ。自分の蝋燭を見つけ出して、この蝋燭を継ぎ足せば、寿命は延びるわ。」
そう言って、女は赤い蝋燭を差し出した。
「保険屋って、そういうことだったのか。」
「そんなことを詮索するより、早く自分の蝋燭を探したほうがいいわよ。アナタには、もう時間がないって言ったでしょう。」
「わああああ!」
十勝川白鳥まつり「彩凛華」は、十勝川温泉に飛来する白鳥にちなんだ祭です。
寒さも忘れる、光と音で綴る幻想的な世界を作り上げています。
開催期間は2013年1月26日(土) - 2013年2月24日(日) まで です。
凍てつく凛とした白銀の大地と瞬く星空の下、彩りと温かみある無数の光源が渾然一体となって、未だかって経験したことのない不思議な空間へと人々を誘います。
多感に、表情豊かに、そして詩的に語りかけてくる光と音のメッセージ。その場に立ったものにしか味わうことのできない「光と音のファンタジックショー」の臨場感を伝える表現手法として、「彩凛華(さいりんか)」という造語を用い、少しでもそのニュアンスが伝わるよう言い表したそうです。
降り注ぐ星空と、広がる銀世界を舞台に、光は輝き、踊り、語りかけます。会場を散策したり、展望台の上から眺めたり、観客は思い思いの場所で「彩凛華」の光の世界を存分にお楽しんでいます。
農業用の保温材で作った三角錐 の中に電球を入れたシンプルなオブジェですが、音の演出も加わって、極上のエンタテイメントとなっています。使用している電球は全てLEDで、その数は667個だそうです。電源はすべて自家発電でまかなっているそうです。
イベント見学で体が冷えたら、温かい温泉に浸かってみてはいかがでしょう。それも温泉でのイベントの楽しみです。
私は1月28日(月)に撮影してきました。マイナス12度くらいの中、大勢の観光客が来ていました。台湾からと思われる観光客には、ちょっと寒すぎたようです。
ワンステージ2部構成で30分ほどです。10分ほどの第一部「十勝川物語」を撮影してきました。ちょっと長いですがご覧ください。ショーの音源はそのまま使っていますので少し聞きづらいですがお許しください。
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YouTube: 都月満夫のおとふけ十勝川白鳥まつり「彩凛華」2013 01 28
したっけ。
誰も見たことがない、誰も体験したことのない冬の幻想美、それが「彩凛華(さいりんか)」です。
風邪の引き始めや、花粉症の時期には「くしゃみ」に悩まされる方も多いでしょう。「くしゃみ」は自分でコントロールできませんから、思わぬところで出てしまうことがあります。
さて、この「くしゃみ」は、古くは大体「鼻ひ」「鼻ひる」とか「鼻ひり」とか呼ばれていたそうです。
「ひる(放る)」とは屁や便などを体外へ勢いよく出すことです。「へっぴり腰」の「ぴり」がその例です。
つまり、鼻水を勢いよく「ひり出す」行為が「くしゃみ」だったのです。
「くしゃみ」の語源は「嚏(くさめ)」という語が変化したことばだそうです。
中世の日本では「くしゃみ」をすると鼻から魂が抜けると信じられていたそうです。
だから「くしゃみ」をすると寿命が縮まると信じられていました。
そこで早死にを避けるため「くさめ」という呪文を唱えるようになったそうです。
いつしかそれが「くしゃみ」という名前となり、その行為そのものを指すようになったようです。
「くさめ」という呪文の語源ははっきりしていないそうですが、くつか説があります。
古典文学として有名な平安時代の随筆集『枕草子』の「憎きもの」第28段の中に、こんな一文があります。
「くしゃみ」をして呪文を唱えるとは、一体何なのでしょう。
これまた古典文学として有名な、鎌倉末期の随筆集『徒然草』第47段に、その答えと思われる話があります。
ある人清水へまゐりけるに、老いたる尼の行きつれたりけるが、道すがら、「嚔、(くさめ)嚔」といひもて行きたれば、「尼御前何事をかくは宣ふぞ」と問ひけれども、應へもせず、猶いひ止まざりけるを、度々とはれて、うち腹だちて、「やゝ、鼻ひたる時、かく呪はねば死ぬるなりと申せば、養ひ君の、比叡の山に兒にておはしますが、たゞ今もや鼻ひ給はんと思へば、かく申すぞかし」と言ひけり。あり難き志なりけんかし。
ある人が清水寺に参った際、老いた尼と道連れになったが、道すがら、「くさめ、くさめ」と言いながら行くので、「尼御前、何をこんなに唱えておられるのだ」と尋ねたけれども、応えもせず、なおも言い止めなかったのだが、たびたび問われて、腹を立てて、「子供がくしゃみをする時、このように まじないをせねば死んでしまうと言いますから、私のお育てした若君が比叡山で稚児になっておられますが、今この時にもくしゃみをしておられるかもしれないと思うからこそ、このように唱えているのです」と言った。有り難い情愛である。
この話で次の二つのこと分かります。
① 「くしゃみ」をしたときには呪文を唱える。その呪文は「くさめ」である。
② 子供が「くしゃみ」をしたとき、(大人が)この呪文を唱えないと、その子供は死ぬと言われている
「くさめ」が、「くしゃみ」をしたときに唱える呪文のことだったことが分かりました。
では、どうして「くさめ」と唱えるのでしょうか。
「くさめ」の正体に関しては、主に三つの仮説があります。
1. 一つは、「休息万命 (くそまんみょう)急急如律令(きゅうきゅうにょりつりょう)」という呪文が縮まったもの、という説。
2. もう一つは「糞食め(くそ-はめ)」、すなわち「糞食らえ!」という罵倒転訛ったもの、という説。
3. 最後は、単に くしゃみの擬音から来た、という説です。
『簾中抄(れんちゅうしょう)』(平安末期)、『二中歴(にちゅうれき)』(建久末年頃成立)など中世貴族の記した作法書や歌学書などには、嚏(くさめ)をしたときに誦すまじないとして「休息万命 急々如律令(くそくまんめい きゅうきゅうにょりつりょう)」と記されており、『簾中抄』は「クサメト云ハ是也」とあります。
鎌倉~室町時代の歌語の注釈書『拾芥抄(しゅうがおしょう)』(永仁2〈1294〉年以前に成立か)では、仏家の規律を説いた『四分律(しぶんりつ)』で、仏陀がくしゃみをしたとき、弟子たちがいっせいに「長寿(クサンメ)」と唱えた故事を紹介して、正月元旦の「くしゃみ」に「千寿万歳 急急如律令(せんずまんざい きゅおきゅおにょれいりつ)」と唱えるのはこの縁であると記しているそうです。
『四分律(しぶんりつ)』とは、仏教の上座部の一派である法蔵部(曇無徳部)に伝承されてきた律である。十誦律、五分律、摩訶僧祇律と共に、「四大広律」と呼ばれる。 この四分律は、これら中国及び日本に伝来した諸律の中では、最も影響力を持ったものだそうです。
詳しいことはよく分かっていませんが、「クサンメ」は古代インドの言葉で「長寿」という意味がある梵語だそうです。
つまり「休息万命(くそまんめ)」は長寿を意味する梵語から来ているのですね。
この「休息万命」を早口で唱えているうち、いつしか「くっさめ」になり、「くしゃみ」になったのだと言われています。
何故、くしゃみをすると長寿を願う呪文を唱えるのでしょう。それは、人々にとってくしゃみが縁起の悪いものであり、恐怖の対象だったからのようです。
始めにも書きましたが、昔の人たちは魂が飛び出すと考えていました。日本に限らず世界各地で、悪魔・悪霊の仕業によりくしゃみが起こり、更には くしゃみで魂の抜けた体にそれらが侵入するのだなどと考えられたようです。
それはすなわち健康を害すということで、現実的にもくしゃみは風邪やペストなど死に至る病気の前駆症状でしたから、不吉のしるしとして とても恐れられたのです。
さて、清少納言や吉田兼好の時代には「休息万命」だか「嚏(くさめ)」だとか唱えられていたらしい「くしゃみ」の呪文ですが、江戸時代の人々は違う呪文を使っていました。この時代、「くしゃみ」をすると 上流階級では「徳万歳」、庶民は「くそくらへ」と唱えていたようです。
「徳万歳」は「常若に御万歳」を縮めて訛ったもののようで、「いつまでも若々しく長寿を保ちますように」という意味であり、子供がくしゃみをすると傍らでそう唱えたようです。この風習は明治時代頃まで続いていたそうです。
一方、庶民の唱えた「くそくらへ」はといえば、「休息万命」が「休産命(くさめ)」となり、更に訛って「休息良恵(くそくらえ)」になった、などと説かれます。
けれども、庶民の間では「糞食らえ」だと認識されていたようです。
魔物(病魔)は匂いの強いもの、汚いものを嫌うと信じられていましたから、くしゃみを起こす魔物に向かって「糞を食らえ!」と罵るのは、なかなか理にかなった呪文かもしれません。
この風習は現在日本本土では廃れたことになっていますが、くしゃみの後に、「こんちくしょう!」「おらくそー!」「ばかやろ!」などと汚い罵りの声を続けるオヤジ語は、もしかすると この風習の名残なのかもしれません。
★おまけ★
「一誹二笑三惚四風邪(いちそしり、にわらい、さんほれ、しかぜ)」などの諺もある。
「一回くしゃみしたら、誰かが悪口を言っている。二回やったら、どこかで笑われている。そして、三回したら、おめでとう。誰かがあなたに惚れている。でも四回もしたら、ただの風邪だよ。お大事に・・・」と言う意味で。す
「一に褒められ二に憎まれ三に惚れられ四つ夜風邪のひき始め」とするものもある。
他に「一に褒められ、二に振られ、三に惚れられ、四に風邪」
三回は共通しています。無理してでも三回したほうがいいのか・・・。
したっけ。
実は、男性は美容院で「カットだけ」をお願いすることは法律上できないことになっています。
これは「美容師法」という法律によるもので、厚生労働省で定められています。
理容師法及び美容師法の運用について
(昭和五三年一二月五日)
(二) 美容師の行うカッティングについて
美容師が、コールドパーマネントウェーブ等の行為に伴う美容行為の一環として、カッティングを行うことは、その対象の性別の如何を問わず差し支えないこと。また、こと。女性に対するカッティングは、コールドパーマネントウェーブ等の行為との関連の有無にかかわらず行って差し支えない
しかし、これ以外のカッティングは行ってはならないこと。
美容師が、コールドパーマネントウェーブを行うこと、およびそれに付随して髪のカッティングを行うことは男女を問わず認められています。
さらに、女性にはコールドパーマネントウェーブを行なわずにカッティングはできますが、男性に対しカッティングのみを行うことはできないと書かれているのです。
美容院でカットしてもらっている男性諸氏はコールドパーマネントウェーブをしてもらわないと法律違反です。
美容と理容の意味は似ているが、法律では次の通りに区別されている。
・ 理容:頭髪の刈込、顔そり等の方法により容姿を整えること(理容師法第1条の2第1項)
・ 美容:パーマネントウエーブ、結髪、化粧等の方法により容姿を美しくすること(美容師法第2条第1項)
しかし、今ではそれを遵守している美容院はないようです。ほとんど機能していない法律だと言えます。
私は理容院でカットしてもらっています。
ちなみに、剃刀(かみそり)を使えるのは、理容師だけです。
したっけ。
今、北海道は厳寒期です。この時期、「天気予報」などでしばしば使われる言葉があります。
「明日の朝は、寒さが厳しくなりますので水を落としてお休みください」
「日中でも、暖房を落としてお出かけの際は水を落としてください」
「水を落とす!」何のことかお分かりでしょうか。
冬に気温が下がる北海道では、冷え込んだ時には水道管が凍結する恐れがあります。
新しい家は断熱がきちんとしており家そのものが暖かいので、それ程神経質になる必要はありませんが、長期間の外出時などは注意が必要です。
水道管が凍結してしまうと、当然水は出ませんし、水道管が破裂してしまうこともあります。
水道管が破裂すると、室内は水浸しです。
水道工事は費用がかかるため、修繕費用も高額になります。
水道管の凍結を防止するために「水を落とす」という作業を行います。
冬に地面も凍結する北海道では、水道管と建物の基礎は凍結しない深さ(地域によって決められていて1mとか1.5mとか)まで埋め込まれています。
この深さのところで水をストップさせることを「水を落とす」と言います。
通常の家には部屋の中などに「水抜き栓(不凍栓)」がついていて簡単に水を落とすことができます。
「水抜き栓」を開き(要するに元栓を止める)全部の水道に水が流れないようにします。
元栓が止まりますので、お部屋に水道水は給水されてこなくなります。
その後、全蛇口を開いて、水道管の中に溜まっている分の水をすべて流し出します。
台所の蛇口、洗面所の蛇口、風呂場のシャワー、トイレ等。
古い家や水道管凍結の恐れが大きい家では、毎晩水を落とすこともあります。
水を落としてしまうと、水道水は使えませんが、「水抜き栓」で再度簡単に出すことができます。
「水抜き栓」を閉じる(元栓を開ける)時は、当然開いておいた蛇口は全部占めておきます。開けたままだと水が勢いよく飛び出し水浸しになる恐れがあります。
水道を凍結させてしまった場合は、解氷業者に依頼します。
したっけ。
北海道でもひときわ寒さが厳しい帯広ならではのお祭りです。
今回50回目の開催を記念し、まつりの原点でもある「氷彫刻像」の記念大会を実施!世界大会優勝経験者も多数参加しているそうです。
氷彫刻が作り出す芸術世界をお楽しみください。
「おびひろ氷まつり」は、帯広三大まつりの1つとして『愛の国「幸福物語」~ここからはじまる幸福物語~』をメインテーマに開催されます。
張りつめた寒さの中で、大氷雪像や氷彫刻、アイスキャンドルなどが美しく幻想的な世界を作り出します。
また、会期中は、花火ショー(25日)をはじめ、雪と氷の滑り台や迷路、美味しい食べ物が並ぶ味覚コーナーなど、大人から子供まで楽しめるイベントが盛りだくさんです。
開催前夜、1月24日の夜に氷像の制作風景などを撮影してきました。チェーンソーで氷を削るのは結構豪快です。
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YouTube: 都月満夫の帯広氷まつり前夜2013 01 24
したっけ。
11月初旬頃から4月中旬にかけて、十勝川温泉近くの十勝川河畔では、毎年数多くの白鳥が飛来し越冬します。白鳥以外にもマガモなど多くの水鳥たちが羽根を休めています。
気温がマイナス20度以下に下がったときにはダイヤモンドダスト・川霧(けあらし)等の冬の幻想的河畔の風景は、とても感動的です。
昨日、午前10時頃に家を出発して30分くらいで河畔に着きました。気温は-12度くらいでした。
幼稚園児がバスで見学に来ていました。観光客に方々も、あまりに近くまで鴨や白鳥が来てくれるので、大興奮でした。
昨日の最低気温は-17.0度。最高気温-3.9度でした。
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YouTube: 都月満夫の白鳥2013 01 24
したっけ。
■ まず「冬靴」を用意しましょう。
「冬靴」には雪道用に靴底に溝が彫られています。
道外からいらっしゃる方は、靴が雪道仕様になっていない方も多いのです。そのような方は、新千歳空港からJRに乗れば、札幌まで外に出ないで移動することができます。
そのまま札幌駅や、地下通路でつながっている大通エリアの地下街やデパートなどで、まず、冬靴を購入してください。安全な旅を楽しむ対策のひとつでしょう。その際は、お店の方に相談することをお勧めします。
絶対に滑らない靴というのはありませんが、靴底選びや歩き方を工夫することで、滑りづらくすることができるからです。
雪の種類によって底材は考えられています。無難なのは、柔らかい底材です。路面に密着するので滑りにくい性質があります。これは、街中用としてはよいと思います。
固い底材の場合は、種類にもよりますが、比較的大きな溝の方が雪で溝が埋まりづらい一面もあります。これは郊外用に最適です。
■ 歩き方
次に歩き方ですが、かかとから踏み込まずに、歩幅は小さく、足の指に力を入れて、靴の裏全体を道路につけ、膝の関節をやわらかくして歩くイメージで「すり足」を意識して歩くといいでしょう。
特に、固雪(かたゆき:雪がカチカチに固まった状態)、アイスバーンの時は、ゆっくりと歩くと良いと思います。冬はヒールが高すぎる靴はおすすめしません。
路面が斜めになっていたり、薄い氷が張っていたりする場所はもちろんですが、雪の下にツルツルな氷の路面が隠れている場合は、要注意です。
たまに、路面にデザインとしてタイルが張ってある場合がありますが、そこは絶対に避けてください。確実に滑ります。
市内の交差点や公共施設内には、ツルツル路面の対策用に砂箱が用意されていることがあります。砂は袋に入ったものや、ペットボトルに入ったものがあり、自由に散布することができますので、自分の足元に撒きながら歩くのも転倒防止対策のひとつです。
また、靴底に雪がついたまま室内に入ると滑りやすいので、室内に入り前によく雪を落とす事をお勧めします。
■ 服装は「重ね着」がポイント
デパートや観光施設などの屋内や交通機関は、暖房がきいていることが多いです。
そのため、外気との気温差が激しく、汗をかいたり、体が冷えたりして温度調節が難しいかもしれません。脱着が楽な、暖かい服を重ね着して調節しましょう。脱いだ上着や、マフラー、手袋をしまうことができる大き目のカバンを持つのもおすすめです。
郊外の観光をおもな目的としている方は、フードつきのコートをお勧めします。風邪が冷たいので重要なポイントです。
また、以外かと思うかもしれませんが「紫外線対策」も重要です。新雪は太陽の光の80%~90%の紫外線を反射するのです。下からも日焼けします。鼻の下や顎などにも 日焼け止めクリームを塗ることをお勧めします。サングラスもあるといいでしょう。
また、空気が冷たいのでマスクも重宝します。
■ 冬道の運転は無理です
レンタカーを借りて旅行をと考えていらっしゃる方は、差し控えは方が安全だと思います。そういった事故が急増しています。地元の方にも迷惑がかかります。公共交通機関を利用することをお勧めします。
■ 天候
道南は北海道では初級編。道央は中級編。道東、道北は上級編といえます。日高山脈を越えると天候は激変します。
2月の北海道は、まだ真冬です。くれぐれもご油断めさるな。
楽しい北海道旅行を無事に過ごされるようお祈り申し上げます。
諸君の転倒を祈る。あ、間違い。健闘を祈る。
したっけ。
さんかん‐しおん【三寒四温】
晩秋から初春にかけて、3日間くらい寒い日が続いたのちに4日間くらい暖かい日が続き、これを繰り返すこと。中国北東部や朝鮮半島などではかなり規則的な現象としてあらわれる。《季 冬》
大辞泉
『大辞泉』にもあるように、冬は「三寒四温」と昔から決まっていました。
ところが、下の表を見てください。
2013年1月の気温 | ||
日付 |
最高気温 |
最低気温 |
1日 |
-2.5 |
-13.5 |
2日 |
-3.9 |
-14.5 |
3日 |
-4.2 |
-14.1 |
4日 |
-6.2 |
-19.0 |
5日 |
-7.3 |
-21.5 |
6日 |
-3.2 |
-16.8 |
|