「遺族への賠償請求相次ぐ」との記事。賃貸住宅での自殺をめぐり、遺族が貸主側から損害賠償を求められるケースが相次いでいる。自殺があった物件は「事故物件」として賃料が安くなり、資産価値が下がるのが理由である。
このようなケースは実際数年前から話には聞いていたものの、その当時は「(遺族の胸中を察すると)人道的に出来ない」とまだ消極的な立場をとっていた弁護士も少なくなかった。実際問題、オーナーさん側からすると死活問題である。当社の管理物件においては幸いにもまだ自殺物件は無いが、ニュースで取り上げられる残忍な事件を目の当たりにする度、事件現場となった管理会社の立場として事件を見てしまう。
先日アパートの入居者さんがお亡くなりになった。入居されてからしばらくして病気になったとは聞いていた。毎月賃料のお支払い時にお会いしていたが、数ヶ月前からかなり体調が悪くなっているのが目に見えて分かった。最後にお会いしたのは連絡のあったわずか二日前だったが、かなり衰弱している様子で一年前に入居された時と比べ、かなり体力的にもきつそうだった。故人はご高齢ではあったものの、入居当時は仕事をされていて非常にお元気で、とても気さくで穏やかな方だった。最期の瞬間とはその人のこれまでの生き方や人柄を象徴していると思っているので連絡があった際も、私はとても穏やかに受け入れる事が出来たのかも知れない。
ただこのような自然死の場合でも告知はすべきなのだろうか?病室ではなく貸室で亡くなることも当然あるだろう。高齢化が進む中では確率も当然増えるだろう。一般的に「自然死」の場合は、告知しなくても良いとされているのが通例のようだ。また弁護士や同業者によって「五年(または十年)は告知義務有り」とか「一度入居者が入ったらそれ以降は告知義務なし」と様々な見解が分かれているのだが、それはあくまでも「事故物件」の場合である。そもそも自然死の場合の告知義務自体に明確な取り決めが無い。では自然死は告知しなくても・・・と考えそうになるがもし私が入居する立場だったらやはり知らせて欲しいと思う。自然死での発見が遅れた場合や、事件での「加害者」「被害者」とではまた事情が変わって来るだろう。
だから当社では自然死でも告知をするようにしているのだが、残念ながら成約率は低くなる。そうなると賃料を始め、契約条件を下げる必要が出てくる。結局「自ら命を絶つ」自殺の場合と何ら変わりは無くなってしまう。じゃあそうなると遺族へ賠償請求するのか?となるとそれこそ人情的に出来ないだろうと思うし、すべきではないと思う。またおそらく司法は「死亡の可能性を含んだ上で貸し出している」との判断になるであろう。
最近餓死事件を始め、様々な残忍な事件を目のあたりにする度、大家さんや管理会社サイドで事の成り行きを案じてしまう。今後、まったく手つかずの状態である法整備がどのように進んで行くか注目している・・・そんな事を考えていたが、内容が内容だけに書いては修正してを繰り返していたら、もう10ヶ月が経過してしまい、画像の記事は昨年9月の内容である。すると先日、業界の新聞社より取材を受けた。テーマは「孤立死の対応」についてだったので、今回書き綴ってきた内容をベラベラと喋ってしまった・・・
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