映画「とんび(2022年公開)」を観た。
【解説】直木賞作家・重松清のベストセラー小説を、阿部寛と北村匠海の共演で実写映画化。「糸」「護られなかった者たちへ」の瀬々敬久監督がメガホンをとり、幾度途切れても必ずつながる親子の絆を描き出す。昭和37年、瀬戸内海に面した備後市。運送業者のヤスは愛妻の妊娠に嬉しさを隠しきれず、姉貴分のたえ子や幼なじみの照雲に茶化される日々を過ごしていた。幼い頃に両親と離別したヤスにとって、自分の家庭を築くことはこの上ない幸せだった。やがて息子のアキラが誕生し、周囲は「とんびが鷹を生んだ」と騒ぎ立てる。ところがそんな矢先、妻が事故で他界してしまい、父子2人の生活が始まる。親の愛を知らぬまま父になったヤスは仲間たちに支えられながら、不器用にも息子を愛し育て続ける。そしてある日、誰も語ろうとしない母の死の真相を知りたがるアキラに、ヤスは大きな嘘をつく。
暴力と喧嘩は違うと語る短気で頑固一徹で不器用な父親であるが、母の死因を隠すこと自体が私にとって不可解なので、明らかにするシーンにも特に感銘を受けず。全く歳を重ねない阿部寛が息子の結婚を許さないのは劇中でもあるように意外だったが、その結果子離れしていない父親が浮き彫りになってしまうし、息子が随所でポケットに手を入れたままの無礼さに親の躾を垣間見る。「山あり谷ありの方が景色は綺麗」の台詞は舞台となった備後の街並み同様素敵だったが、町中みんなで育て上げる感に乏しく、現代ではそのようなコミュニティ自体が夢のまた夢物語なのだろう。
心配はするなと言いながら栄養失調や大酒生活を繰り返す姿はどこか自家撞着(じかどうちゃく・同じ人の言葉や行動、文章が前後で食い違うこと)で一貫性のなさを感じてしまう主人公であったが、麻木久美子はやはり素敵だった。