年に一度、岩国市内の小学校で行われる子ども歌舞伎公演を見学した。
演しものは歌舞伎十八番「勧進帳」。およそ1時間の一幕を、ほとんど出ずっぱりでセリフも半端な量ではない主役「弁慶」。今年も5年生の男の子が演じた。
「配役が決まったのが夏休みの8月。それから毎日、ビデオを見ながらセリフを覚える独り練習。週に1日の全体練習がみんなと会えるので楽しみ」と屈託なく話してくれる。
よくやったね~と褒めると「じゃろ、きょうはよく出来たんよ、嬉しい」白い歯を見せにっこり笑う。幼い小学5年生の素顔がある。
体育館に集まった350人を超える観客はほとんど大人。出演者の保護者や親戚縁者など関係者が多いようだ。中には、子供たちの一生懸命な姿に涙を流しながら見入っているお年よりも。その反面、小学生の観客は数えるほどしかいない。
何故だろう。学芸会には全員参加だろうに・・・。今は学芸会などというものもないか。
小学生が、教諭に教わって歌舞伎を覚え、学校の体育館を使って上演する年に一度の「こども歌舞伎公演」。それなのに肝心な小学生の見物客がいないに等しい現実。
飽くまでも学校行事ではない歌舞伎公演。クラブ活動でももちろんない。いわゆる任意の演劇団体で、スポーツ少年団などの大会と同じ扱いということ。
まあ観衆やいきさつはともかく、よくやるものではある。
花道から登場して先ずは長いセリフ。関守富樫とのからみ、勧進帳の読み上げ。大酒を飲み干すしぐさ、一指しの舞。そして飛び六法という伝統振り付けで花道を下がる。
思わず、シャッター押すのを忘れて拍手を贈る。
衣装は教諭の知人などが手助けをするが、演技指導、振り付けは東京から現役の役者さんがやってきて直接指導するという。それに応える出演者諸君の努力を、全学年の子供たちに見せるのも教育上悪くはないと思うのだが・・・。