岡本喜八監督作品
大東亜戦争末期 北支戦線 山岳地帯
将軍廟にいる部隊は児玉大尉(三船敏郎)を大隊長とはしているが 彼はある事故の後遺症から言動がおかしくなり 実権は副官の藤岡中尉(中丸忠雄)が握っている
そこへ流れてきたのが記者と称する荒木(佐藤允)と言う男
馬に乗り腰には二丁拳銃という 胡散臭い出で立ちだ
映画の冒頭 彼は起き上がり馬に乗り荒野を駆けてくる
まるで西部劇の始まりのように
藤岡中尉は捕らえてきた馬賊の人間を退屈しのぎの暇つぶしに・・・間諜だからという理由で射殺しようとしていた
男が倒れると次には娘 小紅(上原美佐)が引き出される 娘は強い視線で自分を殺そうとする相手をにらみつけ 仁王立ち
そこへ現れた荒木は 藤岡に話しかけ 気を逸らせ 馬賊たちの言葉で「早く立ち去れ!」と 逃がしてやる 倒れていた男も起き上がり駆け出す
射撃がド下手な中尉の弾は全く当たっていなかったのだ
荒木は的を次から次へ当て 中尉をおびえさせる
自称・記者の荒木は記事ネタを探していると・・・心中で死んだ見習い士官・大久保のことを尋ねて回る
そんな荒木に強い視線を当てていたのは慰安婦のトミ(雪村いづみ) 彼女は急に姿を消した荒木の本名を知っていた
それは死んだ見習い士官と同じ大久保・・・大久保軍曹は優秀な軍人だった 大久保の子供を身ごもっていたトミは 当時看護婦だったが・・・周囲に妊娠が分かると そのまま病院へはいられなかった
流産し苦しんでいるところを慰安婦の花子に救われたのだ
事情を知らぬ花子はトミに 乗り逃げされたのかい ちゃんとお金取るんだよ 自分でとれなかったら「花子」ってお呼びーと見当違いだが親切心からのアドバイス
日本人ではないらしい花子は慰安婦をして貯めた金で銀座に喫茶店を出すのが夢だ
戦時中 自国では生きていけない 暮らしていけない女性は・・・日本で自分の体を元手にし・・・稼いで お金持ちになり 自分の店を持ったり 不動産など物持ちとなるのが夢だった
夜 荒木を訪ねて「大久保」の名前を出したトミに 今は荒木と名乗る男は「その名を出すな」と厳しく言う すぐに愛嬌ある ぱかっとした笑顔になるのだが
帰国せず 慰安婦のトミとなった事情を聞く男の表情が翳る
見習い士官・大久保は 男の弟だった この将軍廟の部隊のことは問題になっていて・・・・・男は秘密任務で脱走兵を装い 軍を離れた
身分を隠した秘密の任務
大久保兄は・・・弟が死んだ 独立愚連隊と呼ばれる部隊が守る場所へ出発する
将軍廟も独立愚連隊がいる場所も中国の兵隊に囲まれており 大久保兄も襲撃されるが なんとかかわす
夜休んでいると トミが現れ・・・逃げ回るうちに・・・ぐるぐる回っていただけだと気づく
そんな大久保兄を見張る男女は 彼に助けられた馬賊
小紅の兄で馬賊の首領(鶴田浩二)は保安隊と名乗り 水を欲する大久保兄と会話する
只者ではないと気づきながらも 大久保兄は正体を追求しない
仲間と妹を救われた馬賊の首領も 大久保兄の人柄に好感を抱き男装の小紅に 独立愚連隊のいる場所まで案内させる
大久保兄はすぐに あの馬賊の娘と気づく
口は悪いが気持ちの良い性格の小紅 なんとなく大久保兄に好意を持っているようにも見える
愚連隊のいる場所へ行く途中 死体を拾う大久保兄
愚連隊の連中は賭け事したり 自由きまま
早速死体をざっくり埋葬する
その死体は死んだ見習い士官の大久保をよく知る人間だったと 大久保兄は聞かされる
心中事件があり立ち入り禁止となっている部屋を 大久保兄が調べていると 行き倒れとなっていたトミが運ばれてくる
八年兵だから自分が看病すると女を運ばせてきた古参兵を煙に巻き どうにかトミの貞操を 古参兵の毒牙から守る大久保兄
彼は最初は石井軍曹を疑う 石井軍曹(中谷一郎)は骨のある男で兵の信頼も厚い
大久保が心中したことになっている女性へ気持ちがあったらしい
だが見習い士官の大久保は他の男を近づけなかった・・・
三角関係か・・・・大久保兄は冗談まじりに追求するも・・・真相はまだ見えない
弟の死んだ部屋には弾丸がいっぱい・・・・心中なら そんなに弾丸はいりはしない
真実 何があったのか 誰がどんな動機で弟を殺したのか
石井軍曹の副官に訊けーこの言葉に大久保兄は将軍廟へ戻ろうとする
と弟の墓の前で馬賊妹の小紅に出会う
大久保見習い士官の心中相手として殺された女性は 小紅の姉だった
小紅は姉から形見となった預けられた品物をお守りがわりに肌身離さず持っており・・・
その中には大久保見習い士官が記した藤岡中尉一味の悪事の証拠が書かれていた
「敵討ちに行く」と小紅に言う大久保兄
藤岡は電話でトミが不用意に話した「大久保」の名前から調査し・・・・荒木が偽記者の偽名だと 死んだ大久保には兄が一人いたこと 家族はそれだけなことを知った
脱走兵の身分詐称で逮捕するよう藤岡中尉へ命令を出す
その間にも中国兵は迫る 西の部隊も全滅したらしい
日に幾度かは正気となる大隊長は出発する 大隊長の大尉がおかしくなった原因は・・・・藤岡中尉が目の上のたんこぶの指揮官を突き落とし殺そうとしたからなのだ
命拾いはしたものの 大隊長は頭がおかしくなった
副官達は金を持ち逃げ切るつもりだ
戻ってきた軍旗など利用しつつ
石井軍曹は ー妻子持ちは先に帰してやれー
待つ家族ないチョンガーを残して
引き上げ準備完了
慰安婦達も出て行く
敵が行く手に潜むことを教える大久保兄だが 身分詐称などで逮捕されてしまう
案の定 敵の襲撃にあい トミは撃たれて死ぬ
「一緒に逃げてくれる」
それがトミの最期の言葉だった
大久保兄は何とか日本兵達を救おうとする
彼は弟の敵は討たないといけないし なかなか忙しい
将軍廟で大久保兄は営倉へ入れられるが隣の牢に押し込められていた若い兵士から 副官が大尉を殺そうとしたことなど教えられる
藤岡は貯めた金を詰めているところを 他の士官に見られ 懐柔できず手下に撃たせる
そこへ現れたのが大久保兄だった
「てめぇ どんなつもりで戦争に来た
金儲けか
日本軍の恥晒しって奴だ」
「(弟は)用心深い奴でね」
死んだ大久保弟は副官の悪事の証拠を残していた
副官の仲間も逃げようとしていたが 馬賊兄(鶴田浩二)が馬賊率いて現れる
副官は大久保兄を狙って撃つも ちっとも当たらない
大久保兄「へったくそ~!」
挙げ句弾切れとなる
大久保兄「弾入れるまで待ってやらあ
こういうのを暇つぶしって言うんだぞ」
その辺を撃って遊ぶ大久保兄
副官にとどめさす大久保兄
馬賊兄現れ 大久保兄に「敵討ちに間に合わなくて悪かった」
大久保兄は馬賊兄に頼む
営倉にいる日本兵を日本軍の所まで届けてほしいと
副官が持ち逃げしようとした大金を手に入れている馬賊達は快諾する
馬賊兄は大久保兄がこれからどうするつもりか尋ねる
石井軍曹らがいる愚連隊の所へ行くと答える大久保兄に 馬賊兄は言う
「ちみのような馬鹿やろうは初めてだ」
大久保兄も返す「俺も」と互いに意気投合 笑いあう
将軍廟へ来た石井軍曹は大久保兄に声かける
「どうしたい」
大久保兄「なんとなく片付いた」
薄々石井軍曹は大久保兄の事情に気づいていた
独立愚連隊の面々は誰も残らず皆 引き揚げていたことから自分達も行こうとする
石井軍曹は仲間達に言う
「待て みんな 俺は反対なんだ
たとえ上官がどんな奴でも 命令だけは守りたいんだ
死ぬのは 馬鹿馬鹿しいから ごめんだが
軍人として命令は守りたい それが独立愚連隊としての意地なんだ
とにかく俺に任せてくれんか」
大久保兄が案じる「あれで 抵抗するのか 勝てるのか」
石井軍曹「勝てん
ここに穴を掘って隠れるだけさ
つまり雲霞のような大軍が津波のごとく通るのを お見送りするだけさ」
彼らの部隊は隠れている
バカみたく数いる中国兵達が ヤマト ヤマト ヤマト ヤマトと叫びながら 日本兵がいないか探し 見当たらない為
逃げたらしいな
各隊急いで本隊と合流
とっころが屋根に隠れていた日本兵がサイコロを落として見つかり撃たれる
反撃にかかったもう一人もやられた
石井軍曹と大久保兄は「まともにぶつかったら 一人で五十人か ちょっとな」
などと言っていたが「こうなると話が違ってきた」
いっそ嬉しげに石井軍曹「よぉ~し やっつけろォ」
いかんせん 敵の数は余りに多い
中国兵もどんどこ死ぬが 日本兵も死んでいく
一夜明けて 馬賊達がやってくる
そこいら中 死人だらけだ
馬賊妹と兄は大久保兄を見つける
「おい 生きているか 凄い奴だ」
大久保兄 撃たれてはいるが そこそこ元気
しかし彼以外は 皆死んでいる
馬賊達は死んだ日本兵を「丁重に葬る」きちんと埋めてくれた
大久保兄「死にたくない奴は みんな死んだ
生きていてもどうにもならん俺だけが生きててーこれからどうしようか」
馬賊兄「じゃあ 馬賊はどうだ
君はどっちかと言うと馬賊向きだ
馬賊はさ 弱きを助け 強きをくじく ほら日本人 次郎長と同じだ
次郎長 次郎長 清水の次郎長だよ」
大久保兄は取りあえず愚連隊がいた方向へ行きたいと言う
忘れ物があるからと
トミの死体を埋葬し
大久保兄は言う
弔いではない祝言だ 結婚式だ 派手にやってくれと
馬賊兄 祝砲を撃ち続けてやる
やがて馬賊達も大久保兄もその場所を離れていく
墓標には大久保トミとあった
他の出演者
丹羽少尉(夏木陽介)
酒井曹長(南 道郎)
運転手(ミッキー・カーチス)
慰安婦・花子(中北千枝子)
慰安婦・あけみ(横山道代)
慰安婦・梅子(塩沢とき)
山岡少尉(瀬良明)
細川(山本廉)
小玉清(児玉清)
全体としてハリウッドの兵隊モノのようなカラリとした雰囲気です
大久保兄と石井の男の友情
バカを承知でバカをやる
貧乏クジを敢えて引き受ける
それでも人は死んで行く
それが戦争というものだから
楽しんで生きて 生きていられる間は
生きていられる間だけでも