監督 田中徳三
脚本 八尋不二
「おおい ねえちゃん あれか跡目試験はー」茶屋に腰掛けた客の男 騒ぎをさす
茶屋の娘 半ば得意そうに話す
清見潟の女親分おもんには三千人から子分がいるが 夫になった相手に縄張りごと親分の座を渡すと言い出し ひっきりなしに男が試験を受けに来るが 皆 合格できず 褌一つで叩き出される
「おあいにく様 志願者は升で量れるほど来るけど みんな あのざまよ」
ああして 身の程知らずがー
今も一人叩き出された
話していた男 自信ありげに言う「この草なぎのかんたろう いっぺんの引けも取ったことがない男だ」
おもんの家へ入っていくが 留守番をしている子分のにょろ松(大辻司郎)が 女親分は喧嘩(でいり)に行き居ないが すぐに片付けて帰って来ると言う
「何ね 親分が出て行ったら じきにカタが着いちゃうんですよ」
程なく女親分おもん(京マチ子)が帰って来る
にょろ松「親分 待ってますよ」
おもん 「どうせ ろくな奴じゃないんでしょ ま 下調べだけは やってごらん」
おもんの弟の岩吉(小林勝彦)は かんたろうに「おめえさんが かんたろうさんてのかい うちの姉さんは そんじょそこらの別嬪とはー」と話しかけ 油断させて背後から押さえつける
腕試しの試験には算盤もあった
ー組を束ねる者は算盤くらいー
程なく 褌姿で追い出されるかんたろう
町の者は姿見て笑っている
おもんのいる部屋へ岩吉が入って来て話しかける「よう ねえちゃんようー」
おもん「姉さんてお言い」
岩吉「いくら捜しても姉さんの眼鏡に叶う男はいないさ 」
おもん「ヤクザはみんな人間のクズさ たった一人の弟を人間のクズにしたくありません
どうしても跡目を継ぎたかったら 姉さんと勝負するかい」
岩吉「姉さんと勝負しても勝ち目はあるもんか」
外で岩吉 茶屋の娘おたき(小桜順子)と話している
おたき「じゃ 親分にはならないの?」
岩吉は姉が自分に跡目を継がせまいと 夫捜しをしているが 理想が高すぎだと話す
ー光源氏のようにいい男で 源義経のように強くってー
婿は見つからないから結局自分が組を継ぐようになると言う
そこへ口笛吹きながら馬に乗り街道に姿を見せる風来坊 (市川雷蔵)
岩吉「あいつも 畜生 こうしちゃいられないや」
新たな花婿候補出現に 岩吉は走り出す
おたき「岩さん 待って」
おもんの組で 風来坊は仁義を 求められ「仁義? そんな暇潰しはしないよ 瓢太郎ってんだ」
通された部屋にいる瓢太郎へ岩吉話しかける「お前さんかい 瓢太郎ってのは おいら弟で岩吉ってんだ」 何をしているか書き物している瓢太郎に尋ねる
瓢太郎は日記をつけて 俳諧を五つ六つ ひねり出しているのよ おいら時間を無駄にしない男さーなどと答える
岩吉が姉さんは美人だと言えば 瓢太郎は「おいら そんなものは要らん 一皮むけば美人もおかめも同じことさ」
岩吉が瓢太郎も苦味走った男前ーと言えば「そうだろうな みんなそう言うよ これから一体何が始まるんだ」
後ろから押さえこみに来た岩吉を交わし 太った男(力士崩れか?後の場面で「お相撲」と呼ばれている)の攻撃もなんなく交わして「柔術は免許皆伝の腕前だ」と言う
算盤の試験には「何を入れるんだ」と尋ね 組の一年分の収支の計算と聞き 算盤をもう一つ持ってくるように言い 出入金を同時に読み上げさせ入れていく
赤字だなと数字を出し「算盤も免許皆伝の腕前だ」と言うのだった
剣は「柳生新かげ流の免許皆伝の腕前だ」
夜 岩吉が瓢太郎に言う「四つの試験をいっぺんに合格したのは あんたが初めてだ あにぃって呼んでいいかい よろしく頼むぜ兄貴」
姉さんと結婚したら兄さんになるんだからーと岩吉 調子がいい
「やなこった」と瓢太郎
また背後から襲いかかり かわされる岩吉「ごめんよ 念には念を入れただけだよ」
はちはちの瓢太郎は口八丁手八丁 あわせてはちはちの瓢太郎さーと岩吉に尋ねられ名前の由来を教える
襖越しに にょろ松は様子を窺っていて おもんに伝える
「あの岩ボンがですよ 兄貴お流れちょうだいーなんてやっているんですから
瓢太郎って男には ころっと参っちまってます
明日の試験も難なくー」
おもん「誰があんな風来坊に負けるもんか よく見てるといい」
夜もあまり進まぬうちに部屋に籠もり鍵までかける瓢太郎
荷物は随分重く「俺の命より二番めに大切なもんが入ってるんだ」
部屋に籠もれば 岩吉がなんと呼ぼうと出て来ない
翌朝 町では瓢太郎の事が評判になっている
岩吉「あんな すげぇ奴は見た事がない 千手観音が裸足で逃げるというやつだ」
おもんは二刀流 見合って埒開かず おもんは着物の片袖を脱ぎ長襦袢に 足も開くから裾乱れ 瓢太郎ついふらふらと本気になれず 「参りました」
負けると百叩きの約束だが 孔明の伊三郎は二十多く叩くように お相撲に言いつけたと おもんに話す
怪我を瓢太郎がしやしまいか気になるおもん
岩吉におたき にょろ松も気を揉んでいる
と 叩きの音が止み 叩いていたお相撲の方がよろよろしながら戻って来る
瓢太郎は元気だ
心配し手当てした方がーというおたきに「いい娘(こ)だな」と声をかけ 岩吉へ「いい嫁さんになるぜ」と言う瓢太郎
「あの野郎 二十もオマケをつけやがった」按摩みたいで気持ちいいやー甲賀流忍術免許皆伝だから平気なんだと涼しい顔の瓢太郎
岩吉は忍術を教えてくれ 連れていってくれと瓢太郎に言い断られ「ケチ けちんぼ」
瓢太郎「おめえのたった一人の姉さんはな 子分といえど 三千人の男の中にいるんだぞ それにお前が居ないと淋しい思いをする人(おたき)がそこにいるじゃねぇかよ」
瓢太郎「甲州流早駆けは免許皆伝の足前じゃ」と去って行く
早く進む画像が漫画みたくで笑えます
にょろ松が瓢太郎について来ます
何処にでも にょろっと出てくるから「にょろ松」と呼ばれるらしい
瓢太郎「生憎と千里眼の修業はしてないんでな」
にょろ松「岩吉さんが どうしても会いたいから一年経ったら来てくれと」
瓢太郎「岩吉が 岩吉が 言ったんだな」と確認する
宿でまた早いうちから鍵かけた部屋に籠もる瓢太郎
おもんは一年を待ちわびている 岩吉「こんな所にいたのかねえちゃん」
おもん「お姉さんと お言い」
岩吉はにょろ松がいない 瓢太郎を追いかけて言ったかなーなどと言う 瓢太郎なら兄貴になってもいいやと
おもんは岩吉に お前 跡目を継ぎたかったのじゃないかー
岩吉「瓢太郎は いかしてるもん」
にょろ松の案内で訪ねた親分は殺されたばかりだった
途中擦れ違った般若面つけた三人の侍が殺したらしい
「その腕前の凄いこと あっという間にこれでさ」子分も大勢殺されている
親分の女房が死体に縋り泣く
葬儀に中風で寝ていてお坊様が来れず 他に寺はないーと話している
仏が成仏できないと困っている
瓢太郎「その和尚の数珠と衣装を借りて来なさい かつては僧籍にあった身じゃ 儂が代わりをして進ぜよう」
と読経する
どうやら一年経ち 岩吉 街道眺め瓢太郎を待っている
おたき「まァ 一年も あの人を待ってるの」と呆れる
おたき「あ 誰か来る」
岩吉「何だ あれは うちが呼んだ成田屋の一座だよ」
おたき「まぁ 楽しみね今夜」
にょろ松が親分のおもんに「入りは上々 今夜は大入り袋が要りますぜ」と言うが おもんは気が乗らないから芝居には行かないと言っている
おもん「あたしゃ行かないよ だって留守中に お人が見えたら悪いもの」
岩吉「ねえちゃんよォ 誰かを待っているのかい」
瓢太郎あにぃがいたらなぁと 姉の反応をからかう
おもん「じゃあたし芝居を覗いてくるからね」
芝居小屋では舞台の奈落から 蝦蟇がせり上がってくる 児雷也は瓢太郎 一緒ににょろ松も舞台に上がっている
見物客は「なんでも團十郎じきじきの弟子だそうですぜ」江戸仕込みの役者は違うーなどと話している
瓢太郎 見得を切り六方を踏み 客達に受けている
楽屋でにょろ松に怒るおもん「誰が役者になって帰って来いと言いました 」などにーとおもんが言えば 瓢太郎が「今 とおっしゃいましたね あなたは何者なんです」と詰問する
おもん「機織りという正業があります」
瓢太郎「出雲阿国から始まるー」と講釈を始める そして「わたしはこの歌舞伎界で修業を積み市川雷門 成田屋免許皆伝の腕前じゃ」と結ぶ
そしておもんの家でまたもや鍵かけ部屋に籠もる瓢太郎
一年一緒に旅したひょろ松も 瓢太郎が何をしているか知らないと言う
一計を案じたおもんは翌朝 部屋を出てきた瓢太郎に「瓢太郎さん今日は私に1日付き合っておくれでないかい」と言い
瓢太郎「へえ」と答える
神社で神様参りしおみくじ引くおもん
瓢太郎は神様参りもしないしおみくじも引かない
「女というものは何かに縋るように出来ているものですよ」と瓢太郎
おもん「あたしは男にすがったりしません」
瓢太郎「女というものは そういうふうに作られている」
言い合いながら石段を降りていて 足踏み外したおもんを瓢太郎が支える
瓢太郎に縋る形になってしまったおもん 「おはなし!」茶屋に座ってからも「縋ったのじゃないから!」と おもんは言い募っている
「口笛を吹くのは およし!」
怒ったおもんが瓢太郎を置き座敷を出て歩くと 酔った侍達が絡む
美人の酌をと 無理に連れて行こうとするが 瓢太郎は助けに行かない
おもんは暫く助けに来てくれないかと 弱々しい町娘の振りをしていたが 瓢太郎が来ないから自分で身を守るしかなく 怒った侍達と立ち回りになる
紫の傘も使った立ち回りがすごく綺麗 美しいです
瓢太郎「男には縋らない」おもんの意志尊重
侍達「天女かと思ったら夜叉だったか
こんな夜叉女の亭主になる奴の顔が見たい」と捨て台詞 逃げて行く
瓢太郎は破れたおもんの袖を縫う
針も持った事がない 料理もしたことがない 子分がいるからーと言うのを聞き「世話の焼ける親分だなぁ 亭主になる奴の面が見たいね」なんて言うものだから おもんは怒り「明日 試験します」と言い出す
瓢太郎「今度は手加減しないぞ」
親分は瓢太郎に惚れていなさるから ウインクでーと妙な入れ知恵するにょろ松
立ち会い瓢太郎が打ち込んでくれるのを待つおもんなのに 瓢太郎てば変なウインクを繰り返すものだから カッとなりおもん瓢太郎をぶっ叩いてしまう
おもん自ら「これでもか これでもか 少しは根性がついただろう さっさと 何処かへ行くといい」瓢太郎を叩きに叩いて行ってしまう
よろよろしながら歩く瓢太郎
得意の忍術は「親分の顔を見てると術をかけるの忘れてよ」
つまりは それほど惚れているのだった
瓢太郎についてにょろ松も旅立ったと知ったおもん
機場で岩吉と話す「松公 お金持っているんだろうね」
岩吉「瓢太郎あにぃは博打だけは カラッ下手なんだ 」
おもんは心配になります
瓢太郎は まだ痛がっています
「それが おもんさんの顔がちらついてよ~」と瓢太郎 甚だ頼りないです
にょろ松「この前ン時は ぽんと大金くれたんだ
兄貴これから どうすんの おけらですよ 俺」
瓢太郎「自慢じゃねぇが俺もおけらだよ」
賭場で負ける瓢太郎とにょろ松
そこへ現れたおもん
一回きりの勝負で勝った金を 瓢太郎にやる
「その代わり二度と来ないでおくれ」
瓢太郎「いや二度あることは 三度ある」 俺は諦めんぞ 断然諦めんぞ
頑張る方向が何処か違っているような瓢太郎ではあります
妙な笑い浮かべた孔明の伊三郎が おもんに近付きます
「親分に試合を申し込む人間はいなくなった」
跡目は身近な者から手近にいる者から選んではと じわじわ迫っていく
あたしも孔明の伊三郎と言われるほどの男 いつかお前さんをこの手に抱けると思えばこそ
瓢太郎あいつが来て抱かれるのを待っているんだ そんなことさせるもんかーと嫌がり抵抗するおもんに襲いかかります
あわやと言う時 人の声がし 伊三郎は立ち去ります
瓢太郎がいる宿ではお役人が殺されたと騒ぎになっています
あの般若面の三人の侍が自分達を捕らえに来た役人を逆に斬り殺したのです
以前と同じく三人の侍に口笛を吹く瓢太郎 殺し屋侍が瓢太郎に迫ったとき 呼子の笛が鳴り響き 侍達は宿を出ていきます
そして一年が過ぎ おたきと岩吉は瓢太郎を待っています
殺し屋侍がとうとう近くまで来たそうだから 外へ出るなと茶屋の主人が おたきに注意します
歯が立たない役人達は おもんになんとかしてくれと頼む始末
さて瓢太郎の姿を見かけた伊三郎は 殺し屋侍達から路銀の用立てを言われ「幾らでもご用立てします その代わりこちらの頼みも聞いてほしい」と手を組むのでした
ひょろ松と伊三郎が仕切る賭場へ行った瓢太郎ですが やはり勝てません
伊三郎は刀も着物も返す代わり おもん親分へ手紙を書いてくれーと瓢太郎を騙します
「ここに来てくれ 会いたい」-来るよ きっと来るよ 親分はおめえに惚れていなさるーと煽てあげます
手紙を書かせると「これでおめえは御用済みだ」と伊三郎 殺そうとしますが 勝てません
しかしにょろ松が人質となり 瓢太郎とにょろ松 縄をかけられ監禁されます
伊三郎からの言伝を聞いたおもんは使いの者に「人質にとったつもりだね 帰って伊三郎にお言い おもんが直に受け取りに行きますからってね」
「清見潟のおもんが来た!」喧嘩(でいり)支度で待ち構えている伊三郎とその手下たち
「おや 春雨だねえ」と傘さすおもん
歩いていくと前に伊三郎
おもん「伊三郎 望み通りに来てやったよ さア瓢太郎を受け取ろうじゃないか 私の恋しい人は何処にいるんだい」
伊三郎は 賭場の負けで おもんが来ないと瓢三郎とにょろ松の命はないーと脅しをかけたのでした
さて おもんに追い詰められた伊三郎「見ろ!じたばたしたってこっちの勝ちでい」隠しておいた殺し屋侍の三人を出しますが おもん役人と準備しておりました
おもん「そうもいくまいよ」用意の短筒一発ぶっ放します 合図で役人が出てきて取り囲みます
「じたばたするでない ケダモノに情けは無用 じたばたすると真鍮の弾ご馳走するよ」
殺し屋侍のリーダー格 捨てセリフをおもんに向かって吐きます「おう女親分 この借りはきっと返しに来るからな」
一方縄を解いてもらった瓢太郎はのんきなものです「いやあ 有難う 有難う きっと助けに来てくれると思っていたよ」
おもん「修行で足りないものが二つ 女の心と博打の才 もっと勉強おし」
牢役人が殺し屋侍に騙され脱獄されてしまいます
風呂に入っていたおもん 急いで着物を着ますが あの伊三郎が入ってきました
「得物を持たなきゃ ただの女だ それともその姿のまま膾になりたいか」
殺し屋侍も「約束通り借りを返しにきたぞ」
おもん絶体絶命です
知らせを聞いて弟の岩吉が刀を持ってきましたが おもんは腕を斬られ・・・・男達に引き立てtられ駕籠に乗せられそうになりますが 駕籠には瓢太郎が乗っていました
瓢太郎「おう 先客だよ」しれっと言ってのけます
「二度あることは三度ある 仏の顔も三度って知ってるかい」そう言う瓢太郎の表情はいつもの暢気者ではありません 少しだけ精悍です
一人目はカゲロウ斬り 二人目は霞み斬り で三人目は何斬りかしらと思ったら 逃げ出して短筒も持ってた瓢太郎が射殺
いわく「砲術は免許皆伝の腕前じゃ」
「瓢さんー」と言っておもんは気を失います
今度は医者の白装束でおもんを治療する瓢太郎 おもんが「あたし助かるでしょうか」と甘えれば「患者は医者を信用する わたしは十年も長崎でオランダ医学をー」
呆れる岩吉らに おもんが言ったのは「だって最初から 瓢さんの方が強いってわかってたもん
女ってのは男に縋らなきゃ生きていけないようにできてんの」
さて部屋に鍵かけてまで毎晩瓢太郎が勉強していたのは「ばくち必勝法」でした 重い荷物はその本だったのです
こちらの修行は・・・免許皆伝とはいかなかったようですね
そしてまた何年か経ち 町人の髪型となった瓢太郎は「え 皆さん 本日の献立はー」とハモの骨切りのしかたを教えています
赤ん坊が泣きだし おもんから受け取り 赤ん坊をあやします
赤ん坊をあやすのも・・・・瓢太郎のほうがうまいようです
かわりにおもんが料理の講習の続きを始めます こちらも眉を落とし女房姿
さてさて 剣術・忍術・柔術・砲術・料理・裁縫・算盤・書道・生花・お茶・歌舞伎芸能・医術・・・・・
顔がよくて頭がよくて腕が立ってー
おもんの高い高い理想以上の相手が見つかったわけです
まずはめでたし チョンチョン