さて、一座のみんなが旅館へ引き揚げてから、杏子さんにマンツーマンで稽古をつけてもらったわけなんですけど、これがまたアバウトでしてね、杏子さんが役のセリフをサラサラっと喋りながら簡単に動きを見せて、
「…まァこんな感じ。あとは“よろしく”で」
で、おしまい。
わたしが「?」となっていると、
「ウチら大衆演劇にはね、基本的に台本なんて無いの。セリフは、本来なら座長が“口立て”と云って、口頭で伝 . . . 本文を読む
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- 嵐悳江(あらし とくえ)──手猿樂師にして、傳統藝能創造家にして、鐵道愛好家にして、古道探訪者にして、文筆家氣取り。
雅号は「李圜(りかん)」。
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