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ラジオで放送された、觀世流銕仙會の「敦盛」を聴く。
十六歳で一ノ谷に儚く散った平家の公達
敦盛の印象そのままに、世阿彌が優美な謠に仕上げた名品。
かつて私も地謠方の一人に混じって、蓋臺で後場だけを謠ったことがあるが、前日の申合せ(舞臺稽古)では音階が上手く取れず、玄人と愛好者との技量の差を思ひ知らされたものだった。
水道橋の舞臺で寳生流の若手によるこの曲を觀たときは、後シテの平敦盛の靈がクセのなかで、長絹の左袖を内側からフワリと巻き上げて枕に見立てる型の優雅さが、強く印象に殘った。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/19/72/7f0430c5a90b9cedb10a62147b0a193c.jpg?1685626073)
私はそれを、のちに現代手猿樂の型に取り入れた。
國立劇場で傳統藝能の基礎を學んでゐた當時、人間國寳となった今は故人の講師が、「(技藝の)“抽斗”をたくさん作っておくことです」と、よく話してゐた。
それはかういふことを云ふのだらうと、今さらになって思ひ當ったことだ。