先週からずっと氣になってゐた、池上本門寺御會式の萬灯練供養を見物す。
正面から行くと露店とヒトで大混雑だと事前に聞いてゐたので、見たいのはそれではなし、
回り道をして本門寺裏から入る。
日蓮聖人入滅のとき、庭の櫻がにはかに咲いた故事に因んで始まったと云ふ萬灯練供養は、江戸町火消しに起源をもつ纏持ちを先導に、團扇太鼓に鉦、笛の浮きやかな音色にのせて、参道と佛庭に秋の櫻を降らせる。
全國の日蓮宗講中によって奉仕されるこの練供養、萬灯や笛の音色にそれぞれの工夫があるやうで、鳴り物を奏する男女の樂しさうな表情を觀てゐると、こちらもつひ口許がほころぶ。
もう少し長く見物してゐたかったが、俗世には時間と云ふ融通の利かぬ堅物あり、
讀經と團扇太鼓のこゑも厳かな本堂にて、今宵の御縁を結んでくれた御本尊に深く御禮を述べて、宵闇の浮世へと下りけり。