神奈川縣相模原市の相模女子大學グリーンホールにて、第三十四回相模原薪能を觀る。
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薪能と銘打ちながら初めから野外ではない屋内での演能會で、肝心の篝火は假設能舞臺の両脇にそれを模したものが置かれ、風情には欠けるものの天候不順が續く近年の夏の様子からいっても、このはうが賢いやり方ではある。
が、今までは前方數列が有料席のほかは入場無料の自由席で、當日に會場へ行けば比較的樂に觀られたが、いまは無料席も含めて座席指定制で、そのため入場には切符が必要となる。
それは會場窓口で入手の場合は無料だが、發券代行屋(プレイガイド)經由で入手すると、發券手數料として一枚につき¥330と云ふ、ムダな出費を強いられる羽目になる。
席は無料なのに、そのための入場券で手數料を獲られる、なんか納得いかないやうな……。
さて、演能は寶生流宗家がシテをつとめる「黒塚」。
陸奥國安達ヶ原に棲む人喰ひ鬼は、一夜の宿を頼んだ山伏におのれの因果を脱してもてなさうと薪を採りに出かけるが、閨を覗かないと固く交わした約束を破られ、その怒りから本性を露はにして襲ひかかる──
後シテの鬼女が揚げ幕から登場するときに背負ってゐる薪は、さうしたもてなしの真心を象徴するものであり、それだけに鬼女の悲しみと怒りがより際立つ効果をあげてゐる。
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(※福島縣二本松市に傅はる黒塚の旧跡)
件の薪は後シテが登場すると間もなく外して後見が片付けてしまふため、ぼんやりしてゐるとその物を見落としがちになる。
今回は後見をつとめた辰巳満次郞師の事前解説のおかげで、觀たかった能が深掘りできた樂しい一時間。