迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

同じ場所にして違ふ街。

2017-05-23 18:09:42 | 浮世見聞記
横浜開港資料館の「横浜・地図にない場所」展を見る。

閑かな半農半漁の村だった横濱が、幕末の開港、関東大震災、第二次大戦後の高度経済成長と、“時代”といふ押し寄せる三つの大きな波によって港湾都市ヨコハマへと変貌していく様、そしてその波に吞まれるやうにして消へていった場所を、残された地図や古写真などで紹介した企画展。

埋め立てられ、商工業地帯化した場所が、かつては風光明媚な景勝地であったなど、あまりにも変貌しすぎた現在の景色からでは、思ひを馳せることすら難しい街─

それが、ヨコハマである。

上の写真のタペストリーに写ってゐるのは、かつての本牧の景色。

これ一つ見ただけでも、いまのヨコハマがかつての横濱でないことが、判然とするだらう。

それは、やりきれなさすら、覚える。


だが、わたしは実見したこともない昔日の景色に、「あの頃はよかったわい……」などと、回顧ジジイに成り下がるつもりは、ない。


わたしは現在のヨコハマから、多大なる恩恵を浴してゐる者である。


過去を見ることは、

すなわち、

明日を見ることなり。



山下公園の波打ち際を覗くと、海水から砂浜が透き通って見へる。



それはかつてここが、潮干狩りで賑はふ砂浜が広がってゐた名残と云はれ、所々に沈んでゐる赤茶色の破片はレンガ─この公園が、関東大震災で発生した瓦礫を埋め立てて造られたことを示すものだ。

干潮時には、この砂浜がはっきりと現れるらしい。



海に面して発展した都市らしく、

昔日の面影はどうやら、

海にのこされてゐた。
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