ラジオ放送の觀世流「浮舟」を聴く。
源氏物語の後半譚“宇治十帖”より取材した曲で、浮舟と呼ばれた一人の女性が、故人光源氏の血をひく二人の好色貴公子から求愛され、死後もなほ苦悩し救ひを求める、能樂の定型曲。
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素人の書いた詞を世阿彌が節付けしたと傳はる曲で、なるほど詞に不慣れが見えなくもないところを、華麗な節回しで補ってゐると見えなくもない。
よって演者は、舞ふにせよ謠ふにせよ、お素人向きではないと云ふことだらう。
玄人(プロ)と素人との境界が曖昧になってゐる現今の藝界だが、かういふ技量だけでは解決出来ない、風情を求められる曲は、下手クソなどにやらせてはダメだ。