迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

笑ひをお土産に。

2018-09-09 19:25:11 | 浮世見聞記
横浜市磯子公会堂にて、大藏流狂言師•善竹富太郎師による公演「笑いの芸術 狂言」を観る。


善竹富太郎師は私の好きな狂言師であり、また入場無料といふ良心的企画でもあり楽しみにしてゐた公演だったが、果たして期待以上に楽しく、笑ふてござる。


上演に先立っては富太郎師本人が狂言装束をつけた姿で登場し、狂言を楽しむ秘訣と演目の解説を平易な日本語で聞かせ、観客をいっぺんに惹きつけたのは、さすが傳統台詞劇の玄人ならではの技量(わざ)である!

自分だけの価値観と世界観でしか喋れないがゆゑに、話しの内容すら見へてこなゐ学者(評論家)センセイなどでは、まず無理な注文だ。



演目は、教養と器量は別モノであることをまざまざと見せつけてくれる「二九十八(にくじゅうはち)」、敵役であるはずの“蚊の精”が、見栄っ張りな大名との相撲に負けて投げ飛ばされ、“ぷぅ~ん……”と情けない鳴き聲(?)を立てる姿が却って哀れを誘ふ「蚊相撲(かずもう)」の二番。


最後にまう一度富太郎師が大藏流宗家門下の狂言師とともに登場し、漫才のやうな掛け合ひで観客を楽しませながら狂言の“笑ひかた”を伝授、しっかり“番宣”もして、賑やかなうちにお開き。



猿楽や狂言はもともと、京洛でも人が大勢あつまる場所で上演されてゐたはずで、だからこそ貴賎群衆の目に留まったのである。


公会堂といふ、その地域の人々が出かけやすい場所を会場に行なった今回の公演は、古への成功を現代に再現したものとも言へる──

と、私は考へてみたりするのでござる。








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