迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

名珍遺寶!

2023-10-03 19:40:00 | 浮世見聞記
いよいよ閉館が迫った“初代”國立劇場の傳統藝能情報館にて、當劇場がこれまで収集した藝能資料の「代表的なもの」を一堂に紹介したと謳ふ企画展を覗く。國立劇場が開場して五十七年、しかしここまでよく集めたものだと感心しきりなところへさらに感心させたのが、東京喜劇の雄“エノケン”こと榎本健一の、晩年の義足。(※展示物の撮影可)へぇ、かういふものまで……! この収蔵品展いちばんの逸品であることは . . . 本文を読む
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抹香勝負の果て。

2023-10-02 19:55:00 | 浮世見聞記
ラジオ放送の、寶生流「卒都婆小町」を聴く。先日に橫濱で金春流前宗家の舞薹を觀たばかりで印象が色濃いこともあり、なかばお浚ひの氣持ちで樂しむ。抹香臭い問答は、やはり私にはさっぱりで、小町老女に言ひ負かされる前に降参だが、耳に心地良い重厚な謠ひは、やがて今なほ百夜通ひを叶へられなかった男の執念が憑依する恐ろしさよりも、むしろ哀れさを漂はせ、やがてひっそりと成彿していく様は、人の榮華などしょせんは脆き假 . . . 本文を読む
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不変不誇。

2023-10-01 23:30:00 | 浮世見聞記
あの建物の完成間近の頃に、私は町へやって来た。開業はその後すぐで、その後町を離れてからも、私はあの建物に用事があってたびたび訪れた。建物は變ってゐないが、變ったのはいつでも私の肩書きの方だった。あの建物が完成した日の私が、令和五年現在の私を見たら、必ずや愕然とするはずだ。ただ、肩書きはいつも異なれど、目指すものは何一つ變ってゐないはずだ。それだけは、あの建物の完成を現在(いま)はもふない部屋の窓か . . . 本文を読む
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尺取りしゃっくり。

2023-10-01 14:50:00 | 浮世見聞記
坂道を、何か黒いものが動いてゐるのでよく見たら、尺取り虫らしき近隣(?)住民なり。健氣にも映るその動きに、「あなた、踏み潰されないやうに、氣をつけてね」と、つひ聲をかける。實際、この坂道はヒトや、ヒトが動かす大きな物がちょくちょく通り過ぎて行く。ヒトには平穏に映るこの住宅地も、この小さな生き物の目線で見たら、あちこちにキケンの潜む地帯ではないか。いや、ヒトとても同じはずなのだが──同 . . . 本文を読む
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