陶芸工房 朝

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カンパネルラ

2022年05月21日 | 日記・エッセイ・コラム

カンパネルラがたくさんの花を咲かせました。山野草でなくて園芸種のイタリア原産の花を育てたのは、私としては珍しいことです。「カンパネルラ」という名に惹かれて小さな苗を2本買ったのが去年の秋だったでしょうか。ほっておいたのが雨続きの中で急生長し1メートルもになって薄紫の美しい花を咲かせたのでした。

 

   

 

「カンパネルラ」という名でとっさに思い出したのが、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」の、あの星空を走る列車でした。

 

 ジョパンニとカンパネルラは,その日の理科の授業で先生から天の川の話を聞きます。                               

もしもこの天の川がほんとうの川だと考えるなら、その一つ一つの小さな星はみんなその川のそこの砂や砂利の粒にもあたるわけです。 またこれを大きな乳の流れと考えるならもっと天の川とにています。 つまりその星はみな、乳のなかにまるで細かに浮かんでいる油脂の粒にもあたるのです。 そんなら何がその川の水に当たるかといいますと、それは真空と言う光をあるはやさで伝えるもので、太陽や地球もやっぱりその中に浮かんでいるのです。 つまりは私どもも天の川の水の中に棲んでいるわけです。 ・・・・」‎

その夜、孤独で哀しかった少年ジョバンニは、銀河鉄道に乗って星の世界の旅に出たのでした。すると偶然そこに友だちのカンパニュラが乗っていて、二人はいろいろな人やことに出会い、とても楽しい旅をすることになるのです。それは不思議な宇宙の旅のようでもあり、また賢治の世界への旅のようでもあり、不思議な優しさへの旅のようでもありました。

ジョパンニが夢から覚めると、夢とも現実ともつかない哀しい出来事がまっていました。川で「星祭り」の支度をしていた友人が流され、それを救おうとしたカンパニュラが命を落とした、というのです・・・・。ほんの先刻まで一緒だったカンパニュラが・・・。

 

   

 

イタリア語では Canpanella は鐘の意味、花言葉は 感謝・誠実・想いを告げる。

ギリシャ神話では、美しい妖精カンパニュラが、オリンパスの果樹園で黄金のリンゴを守っている時にリンゴを盗もうとした兵士に撃たれて命を落とした。それでカンパニュラを「鐘」のカタチに変えて、花言葉を「守れなかった命」とした。

どうして賢治が二人の少年の名をジョバンニとカンパニュラとしたのか、特別な想いがあったのかどうか私にはわかりません。でも「銀河鉄道の夜」が特別な世界であるように「ジョバンニとカンパニュラ」も国籍不明の特別な名前でなくてはならない、そんな気がするのです。