「伊賀に耳あり、信楽に耳なし」。
昔、陶芸の先生からよく聞いた言葉だ。信楽と伊賀とはさほど離れていない距離なのに、伊賀で作る壷には耳があり、信楽のものには耳がない。それが何故なのか、教えてもらわなかったのか、聞いたのに忘れてしまったのか、今では定かではない。しかし、この壷をつくるたびにその言葉を思い出す。
つらつら考えみるに、それはどうやら機能の問題ではなく、デザインの問題でありそうだ。いい粘土があり、水と薪があれば焼き物は作ることができた。だから、産地は、互いを意識し、真似を嫌い、個性を尊んだということなのだろうか。 鎌倉時代にはすでに、信楽や伊賀では盛んに焼き物が焼かれていた。
今回は「伊賀壷」を意識して「耳付き花器」を作ってみた。一部に白化粧土を施し、灰釉を半掛けして、焼き占め風に焼成した。高さ20cm口径8cm。写真は、クリックすると拡大します。