バンビ・わーるど

プラダー・ウィリー症候群の息子「バンビ」を愛し、その成長を見守る母・suzuのつれづれ日記(&ときどき猫だより)

成長ホルモン療法の適用拡大の話

2017年06月03日 | プラダー・ウィリー症候群
プラダーウィリー症候群に対して、成長ホルモン療法が日本で認可されたのは2002年だから、今年で調度15年になるんだけど...。

これには「適応基準」があって
染色体検査によりプラダーウィリー症候群と確定診断された者で、身長が同性、同年齢の標準身長の-2SD以下
または年間の成長速度が2年以上にわたって標準値の-1.5SD以下である場合。

となっている。

また、「治療継続基準」として、1年ごとに以下の基準を満たしているかどうかを判定する必要がある。
・成長速度≧4cm/年
・治療中1年間の成長速度と、投与前1年間の成長速度の差が1.0cm/年以上の場合。
・治療2年目以降で、治療中1年間の成長速度が下記の場合。
 2年目≧2cm/年
 3年目以降≧1cm/年

ただし、以上のいずれも満たさないとき、または骨年齢が男17歳、女15歳以上に達したときは投与を中止すること

となっている。

つまり、身長(と年齢)に縛りがあり
だから、PWSだと診断がついても、身長高めの子にはGHが使えない。
実際、バンビもこの制限に引っかかり、使い始めたのは9歳になってからだった。

そして、身長が低くても、もう成人しているお子さんにほとんどの場合、GHは使えない ということになる。


ただ、成長ホルモンが、単にPWSの低身長に対して効果があるだけでなく、体組成の改善にも有効である という論文が出てきて
また、知的あるいは精神面にも効果をもたらすのではないか という説を唱える医師も出てきているらしい。


それでこの制限を外して、PWSと診断されたら誰でも成長ホルモン療法が受けられるようにしたい というのは
まぁ 以前からの私達保護者の願いだったわけだけど。


で、厚生労働省の「未承認薬・適応外薬検討会議」というのがあるそうで
そこに”医療上必要性が高い”と認めてもらえたらいいんじゃないか という話が耳に入ってきた。
それは患者会の(いや患者会じゃなくて有志の集まりでの)陳情であっても会議には掛けてもらえるかもとか、なんだとか...。


というわけで、私なりに少しリサーチを掛けてみた。
まずは親の会から。

かつて、PWSに対して成長ホルモン療法が認められたのは 親の会の働きかけもあったからこそ と聞いていた。
でも、当時メインで動かれていて、強力にプッシュしてくださったのは D大病院のN先生で(もう引退されたけど)
親の会はバックボーンとして、アンケートのデータを提供したりしていたようだ。

なので、陳情に関するデータ等は全てドクター側のものであって、会にはないらしい。


では、D大病院のN先生に代わるドクターは いるのだろうか?

たまたま、バンビの診察があったので 主治医の先生に世間話的に聞いてみたところ...

「医者としては、すべてのPWS患者にGHを使えたら とはもちろん思う。
 ただ GHの投与が体組成の改善につながり、PWS患者のQOLを上げる というだけでは
 申請は難しいだろう。」 という見解だった。

そもそも国はお金がないから、厚労省の立場としては出したくないわけで
余程きちんとしたバックデータがないと難しい。

例えば、体組成の改善が、糖尿病の発生の減少につながった とか
脳血管の疾患の発生が減少したとか(でも、元々PWSは脳疾患の発生率は低いらしい)
そういう 具体的な数字が出せていれば、可能性は上がると思われる とのこと。

”ヨーロッパでは既に体組成改善目的で認可されている”と言っても
アメリカはまだ身長による制限が設けられているから(日本よりは緩いみたいだけど)
アメリカが変わらない限り、日本は おそらく変わらないだろう という話。



他にも医療関係者や、成人の方の親御さんにも話を聞いてみたけど
そもそも GHは糖尿病や重度肥満、呼吸障害の人には禁忌だけど、成人してる人には肥満して糖尿病になってる人も多い。
つまり使えるようになっても、どっちにしろ使えなかったりもするわけで...。


それに費用の面からも
バイオシミラー(バイオ医薬品のジェネリック)は既に出ているけど
ジェネリックで半額と言えども、元々が高額。
全額助成はとても無理だろうし、成人になったら保険適用で3割負担。

例えば、バンビの今回の成長ホルモン剤の料金は、軽く10万円を超えているんだよね。
もちろん、今はそれを小児慢性疾患の医療費助成で 月5,000円が上限で支払い
しかも中学生の間は 小児医療費助成でそれも戻ってくる。
でも、小慢が切れたら(確か18歳?)3割負担...。
もちろん、量によって金額は変わるし、体組成改善目的なら量は多くなくていいらしいし
だから一概に言えないけど、今のままで考えたら決して楽ではない出費。

うーん...。
なかなかおいそれとはいかないようだ。


きちんとしたデータを揃えればいいんじゃないか って思うけど
ネットで拾える論文なんて そもそも玉石混交。
(私なんて英語はからきしだけど、仕事で日本語の論文をちょちょっと探した時も
 中には 何じゃこりゃ?的なものもたくさんあったなぁ...。)
だから、例え英語が堪能であったとしても
医療的に素人では 論文の山の中から玉を拾い出すのはなかなか難しいのではなかろうか という気がする。

だから、ここは かつてのN先生のような、強力なリーダーシップを発揮してくれるドクターが是が非でも必要。
そういう人を巻き込めるかどうか が、まずは勝負の別れ道なのでは。

それに、例え強力なリーダーがいたとしても やっぱりバックデータが必要なことには変わりなく
そこは 親の会が支えないと難しいと思うんだよね。
(データだけでなく、患者会としての会員数も大事らしい。)


でも、最初にも書いたけど、日本でPWSに成長ホルモン剤が使われるようになって15年。
まだそんなもんです。

当時使い始めた人も やっと青年期から成人になったところくらいだと思う。
だから使ってみてどうなったか、あと 成人になって使えなくなってからどうなったか
その辺のデータがたくさんあるわけではないはず。
(海外はどうか知らないけど。)


それでも、やらないよりは 少しずつでもやっていった方が良いとは 思う。
ただ、事はそれ程簡単ではなさそうだし
誰かがやってくれるのを待っても きっとそれは無理。
やりたいと思っても、自分達だけでできることじゃなければ、人を動かしてくしかない。

極端な話、旗振って先頭きってくれるドクターを 自分達で見つけてくるぐらいじゃないと
で、外堀全部埋めて 後はここんとこ親の会お願い くらいにしないと難しいかもしれない。
親の会は親の集まりの会だからね。


今の私にできるのは 取り合えず、ここまで。


あと蛇足ながら、付け加えると
成長ホルモンは 決して魔法の薬ではないから、これさえあれば問題解決とはならないのだよね。

それに薬だから、当然副作用もある。
副作用欄読むと結構怖くて、それもあって私はバンビにGHの投与を焦ることはなかった。
実際、使い始めて一時的に肝機能の数値が下がったり、心臓手術の後発疹出たり、いろいろあったしなぁ。
自分もバンビがそうなるまではそれ程意識してなかったけど
GH使うなら、そこは親として忘れちゃいけないことのように思う。
(Dr.がもうちょっと啓発してくれるべきじゃないのかねぇ。)

今は 側弯症状のある子もバンバン使っているようだけど... 私は素人ながらちょっと怖い。

あと、認知面での効果を謳われると、親としては期待したくもなるけれど
認知が良いからと言って、必ずしも幸せではないのもPWSだしね。
(嘘ついたり、良からぬことをしでかす知恵があるということだから。あと、対人面で苦労するとか。)


PWSの治療の基本は、あくまで食事と運動。つまり生活習慣。
それに、行動に対する対処の仕方。→メンタルの問題の方が、食より余程重要かも。

これがきちんとできた上でのGH。なんじゃないかな。



子ども達の未来が平穏で幸せであることを願う親の気持ちは同じ。
できるならPWSという障害そのものが解決する薬が いつの日か開発されることを心から願ってる。

メールはこちらまで → yakkoxhs@gmail.com

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