テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

異界、往来。

2015-02-15 21:47:13 | ブックス
「こんにちわッ、テディちゃでスッ!
 うむッ!きょうはァ~」
「がるる!ぐるぐる!」(←訳:虎です!読書です!)

 こんにちは、ネーさです。
 ショコラへの未練を振り捨てて、
 本日はがっちり読書タイムですよ。
 さあ、こちらの御本を、どうぞ~!

  



              ―― 神坐す山の物語 ――



 著者は浅田次郎さん、2014年10月に発行されました。
 (『坐す』には『います』とルビがふられています)
 現在は文庫化されている浅田さんの著作『あやし うらめし あな かなし』に続く、
 《お山の怪談》、いえ、《お山の夜語り》シリーズともいうべき
 “こわいおはなし”の御本です。

「ここここッ、こわッ??」
「ぐるる~!」(←訳:鳥肌が~!)

 短編7編から成る連作集の舞台は、実在の土地です。

 東京の、奥多摩にそびえたつその山の名は
 武蔵御岳山。

 御岳山と書いて『みたけさん』と読みます。

 木曽の御嶽(おんたけ)と混同されがちですが、
 多摩地域に住む者にとっては
 御岳といえば『おんたけ』よりも、まず『みたけ』、なんですよ。

「おくたまはァ、すごいィのでス!」
「がるるぐるるる!」(←訳:東京とは思えない!)

 そうね、
 緑深く、谷は険しく、峰は高く。

 そんな東京とは思えない土地の、名所のひとつが
 御岳山の神社です。

 古くから尊崇を集める神社は
 古い血を伝える神職一族の《家》でもありました。
 物語の語り手である《私》は、
 《家=一族》の一員ではあるのですが、
 住まいは都会の一隅です。

 お休みのたび、
 少年の《私》は、国鉄の電車に揺られて
 《家》へと向かいました。

「ふァ? こくてつゥ~?」
「ぐるがぅるるる?」(←訳:JRじゃないの?)

 《私》が少年であったのは、昭和の30年代でしょうか。

 《家》に着けば、待っているのは
 神職の伯父と、
 同じ年頃の大勢のいとこはとこたち。
 そして、“こわいおはなし”を聞かせてくれる
 美しい叔母……。

「うううゥ~ッ!」
「がるぐる!」(←訳:また鳥肌!)

 山上の神社と《家》へ向かう道すがら、
 もうすぐ御嶽山最寄りの駅に近付く様子を
 《私》は次のように形容します。

    ―― いよいよ異界である ――

 ええ、確かに、そこは人ならざるものの領土、
 神の住居に接するゆえに
 不思議が不思議とは見えぬ土地であるかのようですが……

 本当に、そうでしょうか?

「ええッ?」
「ぐるっ?」

 異界は、どちらでしょう?

 千年も昔とさして変わらぬ御山と、森と、社(やしろ)と。
 数十年前には影も形もなかった
 アスファルトと鉄骨と硝子で出来た都会と。

 ふいっ、と消えてしまう蜃気楼に似ているのは、
 御山と、町の、どちら?

「うううゥ~んッ?」
「がるるぅ~…」(←訳:それはァ~…)

 確固たる存在は、山か、町か。

 この地の本来のありよう――
 武蔵野の姿を感じてみたい御方は
 ぜひ、一読してください。
 折り目正しく凛々しい文章が教えてくれますよ、
 太古の御山の息吹きを。



コメント
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