テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

《おもちゃ》と、筆と。

2017-07-03 22:16:09 | ブックス
「こんにちわァ、テディちゃでス!
 またしてもォ~あくてんこうゥ?」
「がるる!ぐるっるる!」(←訳:虎です!雨ばっかり!)

 こんにちは、ネーさです。
 夏風邪の苦しさにもメゲず、
 今日もツール・ド・フランスの結果を追いながら、
 さあ、読書タイムもスタートダッシュ!
 本日は、こちらの小説作品を、どうぞ~♪

  



           ―― おもちゃ絵芳藤 ――



 著者は谷津矢車(やつ・やぐるま)さん、2017年4月に発行されました。
 時代小説好きな活字マニアさんはもとより、
 アート好きさんにもいま大好評の書下ろし作品です。

「おもちゃッ??」
「ぐるがるるぅ?」(←訳:絵がオモチャ?)

 御本の表紙を見ただけで、
 分かる人には分かっちゃうと思うんですけれど、
 ええ、《おもちゃ絵》というのは、
 敢えて角が立つ言い方をしますれば。

  お子ちゃま向け。

「ええッ? おこちゃまむけッだッてェ~」
「がるぐぅる!」(←訳:いいじゃん!)

 そうよ、そうなんですよ本当に。

 お子ちゃま向け、いいじゃないですか。
 可愛らしい双六の絵や、
 百面相みたいな判じ絵(はんじえ)や、
 ニャンコやワンコを主題にした
 現代でいうキャラ画風の作品だって、
 いいじゃん素敵じゃん、と私たちが思っても。

 お江戸の昔の絵画界のヒエラルキー――
 どういうものが“上”で
 どういうものが“下”か、
 きっちり決めれてしまっていると、
 いいじゃん!とは、言えなくなってくる……。

「おもちゃはァ、だめェでスかァ?」
「ぐるるがる!」(←訳:可愛いのに!)

 そもそも、浮世絵というジャンルが
 “下”だ、とされていたのです。

 “上”に位置するのは、
 城閣や寺社に依頼されて筆をとる、
 御用絵師・狩野派の一族の、トップ・オブ・トップたち。

 浮世絵などという、
 庶民が買うペラっとした一枚絵は明らかに“下”で、
 その中でも、
 美人絵や役者絵でもない、
 名所図でもない、
 “下”の“下”とバカにされていたのが、
 お子ちゃま向けの《おもちゃ絵》でした。

 そんな《おもちゃ絵》に、
 絵師の誠意をもって対峙したのが、
 歌川芳藤さん。

「ばくまつのひとォ、でスねッ!」
「がるぐる!」(←訳:開国近し!)

 変革の兆しが忍び寄る時代、
 師の歌川国芳さんを亡くした芳藤さんは、
 国芳さんの残した画塾の運営に携わりながらも、
 悩み、迷います。

 弟弟子の月岡芳年さん、
 画才の富む河鍋暁斎さん、
 自分と彼らは……どう違うのか。

 その違いとは、
 絶望なのか、希望なのか――

「いつもォ、いつまでもォ~…」
「ぐるがるる!」(←訳:絵師たらん!)

 近年、再評価が進む歌川国芳さん一門と、
 目立たなくはあったものの
 一門の中核であった一人の絵師さんのものがたり。

 浮世絵コレクターさん、
 江戸期の美術が大好きな御方、
 そしてニャンコ好きな方々にもおすすめですよ。
 ぜひ、一読を♪
 
 
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