必要があって古い本を出してきました。
足立巻一先生の『親友記』です。
1984年2月20日発行。この翌年、1985年8月14日に先生は急逝された。
あとがきに記された言葉。
「(略)思えば、わたしはそれぞれの時期において相交わった少なからぬ師友の人生を、こう
して断続する一連の作品の流れのなかに書きこめてきた。それはまた、自分自身の歴史を、
生を告白することでもあった。そうしてどうやらわたしは終点にたどりついたらしい。
この『親友記』はその終点にあたる作品のつもりである。ここに去来する何人かの友は、文
学によって結ばれた生涯にわたる親友であり、すでに前記『鏡』において登場し、『やちまた』
『夕暮れに苺を植えて』にも一部を触れたが、かれらの全人生とその友情とは本編でほぼ完
結し得たと思っている。(略)」
いかにも情にあつい足立先生の言葉である。
この本の出版記念会にわたしは出席し、足立先生のスピーチ(講演だったか)を聞いた。そ
の時、わたしのそばにおられた、この本に登場する親友の一人の目から涙が一筋流れ落ち
るのを見た。美しい涙だった。
〇
この時、わたしはこの本に署名して頂いた。
〇
西の夕空に、細い細い月が。
見えますでしょうか?
この月を、遠い被災地でも見ている人がいるでしょうか?同じ月を、どのような思いで。