「現代川柳」63号(2018年9月)をお贈りいただいた。
事務局で企画・事業・校正担当をしておられる中野友廣さんから。
時実新子さんがお亡くなりになったあと、お弟子さんたちがその遺志を継いだかたちでの川柳誌。
隔月でもう63号だから、新子さんがお亡くなりになって間もなくから発行されている。
100ページ近い立派な本です。
読ませていただくと、新子さんの匂いがあふれている。
新子さん亡くなって10年にもなるのに、みなさん熱心なことです。
お贈りくださった中野友廣さんが今号に発表しておられる5句を紹介しましょう。
相談にのってほしいと神が呼ぶ
二人で降りて一人旅立つ無人駅
乗り換え駅で聴いたよ亡父のハーモニカ
父を探して泣いて歩いたことがある
忘却の中へは消えぬ八月忌
現代川柳は、ちょっと難かしいですね。
でも、言葉をそぎ落として余韻をふくらまし、読む者に想像を許す作品となっていますね。
それぞれの句に作者自身の個人的想いはあるのでしょうが、受け取り方は読者に任せると。
作者と読者と二人で作り上げるといってもいいような。
中野さんの今回の句にはそんなことを考えさせられました。
ただ、新子さんの句は、作者の血が滴るような作品も多かったような気がします。
それでも発表されてしまえばもう、その解釈は読者の自由ではあるのでしょうけれども。
本号の中で印象深かったのは次の句。
同人の小林康浩さんが「群舞を読む」で評論しておられる、谷本錦泉さんの、
「この国の総理大臣さんなのね」です。
小林さんはこう評しておられる。
《この時事吟はすごい。「 」のせりふのみで一句を成す。今年、原爆忌の平和祈念式典において総理大臣は、被爆国の代表者としてとても不甲斐ない、無感情且つ無味乾燥な式辞を朗読した。それを聞いた多くの国民、そして外国人までが、この、錦泉さんの句の言葉を漏らしたに違いない。そしてこの句は、女性の言葉である。多くの、特に女性を失望させた現実を、総理大臣さんには真面目に考えていただきたい。久々に胸のすく時事吟に出会った。》
わたしも小林さんに同感です。
この本、一冊で大分楽しませてもらえます。