『川のほとりで』だが。
「健康への出発」という項がある。
《わたしが2009年に初めて直木賞候補になった時、同じ歴史時代小説家の山本兼一さんと北重人さんが一緒だった。
三人とも中年から小説を書き始めた遅咲きの作家で直木賞候補になった時は、五十歳を過ぎていた。(略)
だが、北さんは直木賞候補になったこの年の八月に亡くなられた。(略)
ところが、山本さんも2014年二月に病で亡くなった。気が付けば、初めて直木賞候補になった時、そばに並んでいたふたりの先輩作家を相ついで亡くしたのだ。(略)
これからなそうと思う仕事のために自分自身のメンテナンスをしっかりしなければ、人生の最終コーナーをまわることはできないのだから。
そんな思いが三日坊主に終わらないことをいまはひたすら願うばかりだ。》
これは2017年7月10日発行の『ヘルシスト』238号に掲載されたもの。
そして葉室麟さんはその年の12月にお亡くなりになっている。
なんという無常。
生きておられたら、あとどれほどの傑作を生みだされただろうか。惜しい。