田辺さんの『姥ときめき』の中の「姥ひや酒」を読んでいたら「サックドレス」なる言葉が出てきた。
昭和30年前後に若い女性に流行った洋服。
わたしの子どものころだ。
今、懐かしく思い出したことがあるので書き留めておこう。
うちの店(父親が経営していた米屋)に事務員としてきておられたお姉ちゃんがこれをさっそうと着こなして出勤していた。
5分もあれば来れる所に住んでおられたが、オシャレだったのだ。
女学生のころは「ミス市西」と呼ばれていたと聞いた。
色白で彫りの深い顔の美人だった。
わたしの頭を撫でながら「わたしの彼氏、まだこんなん」と言われたことを記憶している。子どもながらにドキドキしたのかもしれない。
前が日本盛の酒蔵だったが、蔵人が高い窓から彼女目当てに覗いて騒いでいることがあった。
また近所のお兄ちゃんが横恋慕していたと聞いたことがある。
今思えば、三船美佳さんによく似たスレンダーな美人だった。
その後、うちをやめて今津でバーを経営しておられた。
「黒猫」という名前だったか?
よく流行っているようだった。
それから何年もしてわたしは米屋を継ぎ、配達の途中で彼女に一度だけ出会ったことがある。西宮満池谷池のそばの道だった。
子どもを乳母車に乗せておられた。
その辺りに住んでおられたのだ。
幸せそうだったと記憶する。
それから会うことはないが、お元気なら90歳近いおばあちゃん。
今どうしておられるかなあ?K野輝子さん。