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20世紀少年 最終章 ぼくらの旗

2013年03月05日 20時10分03秒 | 邦画2009年

 △本格科学冒険映画 20世紀少年 最終章 ぼくらの旗(2009年 日本 155分)

 英題 Twentieth Century Boys 3: Redemption

 staff 原作/浦沢直樹 監督/堤幸彦 脚本/長崎尚志、浦沢直樹 脚本協力/渡辺雄介

     撮影/唐沢悟 美術/相馬直樹 主題歌/T・レックス「20th Century Boy」

     音楽/白井良明、長谷部徹、Audio Highs、浦沢直樹

 cast 唐沢寿明 豊川悦司 常盤貴子 香川照之 佐々木蔵之介 平愛梨 宮迫博之 黒木瞳

 

 △一六、三八、四九、五十

 いちろく、さんぱち、しく、ごっとう、というのは、朝市の出る日の数え方だ。

 ぼくの故郷では、

 4つの路地に野菜を中心にした朝市が出、それぞれの市が立つ日は決まっている。

 月の内、一と六の日、三と八の日とかいって、それぞれ、いちろく、とか、さんぱちとか、いう。

 二九(にっく)は、市がお休みの日なんだけど、

 日曜だけ休んで、後は年がら年中、常設されている市もあった。

 雑貨や洋服をあつかっている市場で、戦後の闇市がそのまま残ったものだ。

 といっても、こちらの雑貨市は昭和40年代の前半くらいまでしかなかった。

 神社とお寺の隣り合った小路が、ひと筋そのまま市場になっていて、

 お寺の門前には団子屋が、薬師堂の前にはおでん屋があった。

 洋服屋や電機屋もあり、どれもみんな戸板を立てたようなバラック建てか、

 三島屋のように幔幕を張り巡らせただけのものもあった。

 ただ、簡易式の屋根だけはどの店にもあったから、

 若造時代の万丈目がフクベエ達を相手にしていたような露天商というわけでもなかった。

 アポロ11号が月面着陸したとき、酔っ払いが「あれは嘘だ」とくだを巻いていたのも、

 この市場の入り口になっている辻に立つ串専門の屋台で、

 やけに顔立ちのいい、白髪の退役軍人さんがトン串を焼き、ドテを煮てたっけ。

 原作で、昭和のテーマパークを「ともだち」が造ったとき、

 下町の匂いまでそのままになっているというユキジの台詞があったけど、

 たしかに市場は特有の匂いがあった。

 懐かしく、離れがたい匂いだ。

 くれよんシンちゃんではヒロシの靴下の匂いがその懐かしい匂いに勝つんだけど、

 たしかに、市場の匂いは懐かしさに満ちた昭和の象徴なのかもしれない。

 それはさておき、

 原作と映画が異なるのは当たり前のことで、

 それぞれ別個な作品とおもった方が気が楽だ。

 だから、この最終章もそういう気持ちで見ればいいんだけど、

 なんていうのか、ちょっぴり違和感みたいなものも感じてしまった。

 原作うんぬんの話ではなく、独立した映画作品としての話だ。

 たとえば、

 北海道でコンチと13号が出会い、ヘリで飛び立ってゆくとき、

 ぼくらの旗を掲げた蛙帝国のトラックとがほぼ一緒に旅立ったんで、

 あ~これは途中でトラックが立ち往生してヘリが助けて一緒に行くんだな~、

 だって、別れ別れになった友達が旗の下にひとりずつ戻ってくるのが主題でしょ、

 とおもってたら、あにはからんや、まるで並行移動だった、

 とか、

 円盤が飛来するのは、実は万博のコンサート会場で、

 しかも、ようやく駆けつけたケンヂが歌を歌おうとしたときで、

 さらに、細菌の雨が降る中、ヘリが駆けつけて、

 仲間がちからをあわせてワクチンを打ってくんだろな、

 だって、そのために12時間の潜伏期間を設定したんでしょ?

 で、ここに細菌をまき散らすから二足歩行ロボットに乗って撃墜するんだろな~、

 主人公たちが「ともだち」は万博会場を破壊しないと信じているのに、

 それがおもいもよらない形で裏切られるのが映画の醍醐味だもんね、

 とおもっていたら、2015年のウッドストックとロボットとの対決はまるで別場所だった、

 とか、

 フクベエの正体はかなり早い時期にわかって、

 鮒の解剖の前日に死んじゃったカツマタ君の疑惑が徐々に出てきて、

 その正体を暴くのは昭和のテーマパークの中か、コンサート会場になるんだろな~、

 「ともだち」との対決はやっぱり万博会場で、ラストは昭和の秘密基地でなくっちゃな~、

 とおもっていたら、一連のクライマックスが終わってから野っ原にフクベエの登場で、

 しかも、いまさら本格サスペンスまがいのヨシツネ犯人説とか展開しちゃうわけ~?

 とか、

 「ぼくらの旗」っていう副題にしてるんだから、

 ひとりひとりの再会を丁寧に描いていって、

 みんなで揃って戦いに挑んで、やがてコンサート会場に翻るんだろな~、

 そのときはボブ・レノンを40万人が大合唱しないとケツが締められないでしょ、

 とおもっていたら、旗の話なんて途中でどっかにいっちゃって、

 なんだか小さなロックコンサートのスタッフみたいになってるだけの仲間達なんだね、

 とか、

 中学の放送室占拠の日が、

 ケンヂとカツマタ君の終わりのやりとりで、それが新しい始まりになるんだろうけど、

 そのときまで「ごめんなさい」はいえずにいるんだろうな~、

 とおもってたら、なんのことはない、駄菓子屋ジジババの店先でやっちゃうんだ~、

 とかね。

 ともかく、途中から期待してた展開がことごとく裏切られるとは、

 まるでおもってなかったわ、まじで。

 つまり、原作は置いといた上での話だけど、

 脚本の流れが途中でぶつぶつと途切れて、

 クライマックスが2度あるのは仕方ないとしても、

 最初の対ロボットのクライマックスに収束していかないのは、

 なんだか燃焼不良なまま、だらだら続いている観があったし、

 CGが見せ場になるよりも秘密基地の仲間の友情の復活と、

 世界の憎しみの対象になってゆく旗の復権が見せ場になった方がよくない?

 とおもわず口に出てしまいそうだったわ。

 とはいえ、

 おかげで懐かしい風景をおもいだすことができただけでも見た甲斐はあったのかも。

 ちなみに実家のちかくの旧闇市(常設市場)が無くなったのと、

 大阪万博expo70が開催されるのと、ほぼ同時期だった。

 そうしたことからすると、大阪万博(一般博)ってほんとに時代の変わり目だったんだね。

 万国博覧会は、その後、

 沖縄海洋博(特別博)、つくば万博(同)、大阪花博(同)、愛知万博(登録博)とか、

 4回あったけど、どれもいまいち盛り上がらなかった。

 愛・地球博はちょっぴり期待したけど、

 もう「人類の進歩と調和」なんて綺麗事を信じられるような時代じゃないのかな。

 映画では、東京万博は2015年に開催されるんだけど、

 やっぱり、半世紀ぶりの2020年に大阪で開催されないかな~、

 もちろん、認定博覧会(旧特別博)じゃなくて登録博覧会(旧一般博)ね。

 てなことを夢想してしまうのでした。

 おしまい。

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