◇世界にひとつのプレイブック(2012年 アメリカ 122分)
原題 Silver Linings Playbook
staff 原作/マシュー・クイック『Silver Linings Playbook』
監督・脚本/デヴィッド・O・ラッセル
撮影/マサノブ・タカヤナギ 美術/ジュディ・ベッカー 音楽/ダニー・エルフマン
cast ブラッドレイ・クーパー ジェニファー・ローレンス ロバート・デ・ニーロ
◇心って壊れても治るんだよね
単純な好みの問題かもしれないけど、
どうしても心が壊れてしまうほど繊細な人間の方に、ぼくは惹かれてしまうところがある。
けど、この映画のように、
健気に明るく、哀れなほど傷つきやすく、それでいておもいきりキレることのできる人間は、
奈落の底に落ち込んでゆく人間よりも、あるいは癒されやすいのかもしれない。
おそらくだけど、少なくない人が、心が壊れてしまうほど傷ついたことがあって、
だから、この映画を見つけたときに、ふと、足を運んでしまうのかもしれないけど、
もちろん、劇場を出たときに「ああ、癒されたわ~」とかいえるほど現実は単純じゃない。
けど、まあ、ぼくもそうだけど、ぼろぼろになってもなんだか生きてる。
映画の中でおもしろかったのは、ふたつ。
ひとつは、
妻が、浮気相手とシャワーブースで乳繰り合っていたことでブチ切れ、
心に傷を負ったブラッドレイ・クーパーが、ゴミ袋を着てランニング中、
虎視眈々と狙っていたかのように、いきなりジェニファー・ローレンスが追い駆けてきて、
なんだかんだとあった末、ようやくシリアルと紅茶とディナーを取ることになったとき、
ジェニファーが夫と死に別れたショックで会社の社員全員とセックスし、
さらにレズも体験した後、そうした過激な奔放さが原因で職を失ったことを知ったとき、
「そんな話は聞きたくないからもうやめよう」といい、ありがとうとお礼をいわれてすぐに、
「ちなみに、何人としたの?」と聞き、さらにジェニファーも悪びれず「11人」と答える場面。
もうひとつは、
同じくブラッドレイ・クーパーがヘミングウェイの『武器よ さらば』を徹夜で読み終え、
「なんだ、こりゃ」
といって小説のラストに激怒し、その怒りを親父のロバート・デ・ニーロに叩きつけるところ。
この原作、実は2009年の『ベン・ヘミングウェイ賞』の最終候補らしい。
こういう秀逸なギャグが、アメリカなんだな~とおもえたりするんですよ。
日本でこんなことすると、カドが立つんだよね。