△幕末(1970年 日本 120分)
staff 原案/司馬遼太郎『竜馬がゆく』より 監督・脚本/伊藤大輔
撮影/山田和夫 美術/伊藤寿一 音楽/佐藤勝
cast 中村錦之助 吉永小百合 三船敏郎 仲代達矢 小林桂樹 中村嘉葎雄
△慶応3年(1867)11月13日、近江屋、竜馬暗殺
伊藤大輔の遺作です。
さすがに伊藤大輔の作品はそんなに観る機会はないんだけど、
錦之助の作品では『反逆児』の方が好きかも。
というのも、原作と映画は別物なので、あんまり原作の話はしたくないものの、
どうしても『竜馬がゆく』という傑作が原案になってしまっているんで、
それにひきずられちゃってるな~という印象が強いからだ。
原案のダイジェストみたいな感じがして、
独立した映画作品って感じがしない。
もうひとつ、伊藤大輔は、これを撮る前に、
錦之助の舞台で『竜馬がゆく』を演出しているせいか、
ひとつひとつの場面が長く、台詞の応酬があって、ライティングも舞台的で、
なんだか映画というより舞台を撮ったような気がしてならない。
それと、どうも錦之助は強すぎて、竜馬のひょうひょうとした面白さが感じられない。
ていうか、錦之助にかぎらず、どの配役もテンションが高過ぎて、
観てるこっちがおもわずひいちゃうんだよね。
ただ、ときどき、ぞくっとするような編集があって、
たとえば、首を切り落としたかとおもった次の瞬間には、
転がった首のアップからカットが始まったりして、そうした飛躍は実に見事だった。
観てて「あれっ」とおもったのは、暗殺の日、ええじゃないかが踊られていたこと。
原田芳雄の『竜馬暗殺』も、たしか、ええじゃないかの群舞に紛れていかなかったっけ。
それと、音楽。
出だしは、お、なかなかいいじゃんとおもってたら、
やっぱり、いつもどおりの佐藤勝でした…。
とはいえ、このCD、たしか持ってたよなあ。
そうそう、忘れちゃいけないのが、吉永小百合。
たしかに小百合さんは可憐で、一途なところが見えていいんだけど、
寺田屋襲撃のときに、乱闘の真っ最中に拳銃の弾込められる?
っておもわず突っ込みたくなるのもさることながら、
高千穂いってから、眉を落としてお歯黒を塗ったときの顔はいけません。
サユリストが唖然とするようなぱつぱつのほっぺで微笑まれたりすると、
これはちょっとばかしひいちゃいますな。
でも、小百合さんは月琴を実際に弾いてないんだけど、
その手習いの行き帰りにそらで爪弾いたりして、いかにも習っている感じがよく出てるし、
竜馬の暗殺前夜に、それを暗示するかのように弦が切れたりして、
いやあ、さすが伊藤大輔、ほかにも象徴的なカットとか入れてくれてるし、
これが演出だよな~ってところをきっちり見せてくれてます。
土佐の海辺の大移動も、これぞイドウダイスキって感じで、
そのあたりは、うん、堪能しました。