◎大列車強盗(1903年 アメリカ 12分)
原題 The Great Train Robbery
staff 製作/トーマス・エジソン 原作:スコット・マーブル
監督・脚本・撮影/エドウィン・S・ポーター 助監督/ギルバート・M・アンダーソン
cast ギルバート・M・アンダーソン ユースタス・D・バーンズ マリー・マリー
◎ラストカットの衝撃
110年も前に作られたとはおもえないほど秀逸な無声映画。
なにが凄いって、カットの数は10数ショットしかないのに、
それだけで筋の展開がありありとわかるなんて奇跡みたいじゃない。
映画史上初のドラマ仕立ての作品とはとてもおもえない。
でも、もっと凄いのは、カットのすべてが動いているということ。
駅舎の中を撮っているとき、窓の向こうには列車が入線してくるし、
列車内で強盗をはたらくとき、車輛の扉が開いていて風景がしっかり流れてるし、
止められた列車から客が出されるとき、ものすごい数の客がぞろぞろ出てくるし、
機関車と客車を切り離すとき、機関車だけが逃げるように画面奥へ走っていくし、
強盗団が逃げてゆくのは奥へ奥へ、
保安官が追いかけながら銃撃してくるときは前へ前へと、
そりゃもう見事なスペクタクルが展開してるし、
保安官や町の人々が踊り子マリー・マリーを中心に踊っているときは、
画面の中央で民衆のつくった円陣がちゃんと回転してる。
すべてのカットが動いてる。
ぼくが観たのはフィルムのひとコマひとコマに色付けしたものだったので、
登場してくる少女の衣装の赤や、発砲の火花とかがしっかり発色してた。
でも、なにが凄いって、
映画本編が大団円を迎えて終わったかとおもったら、
強盗ユースタス・D・バーンズがバストショットで現れて、
やにわに拳銃を抜くや、観客めがけて一発放った!
110年前の観客は度肝を抜かれたろうし、卒倒した人とかいたんじゃないだろか。
これってつまり、
映画の動きは左右だけじゃなく、前後も動くんだぜっていうメッセージなわけでしょ?
映画と観客は決して切り離されてなくて、一心同体なんだよともいってるわけでしょ?
そんなことを映画ができたばかりの、それも初めてのドラマでしちゃえるなんて凄い。
ちなみに、
この監督のエドウィン・S・ポーターが1907年に演出した、
『鷲の巣より救われて』てのがあって、同時上映で観たんだけど、
鷲にさらわれた赤ちゃんを助けるために、
その巣まで降りていく父親の樵を演じたのが、後の大監督D・W・グリフィス。
しかも、映画デビューらしい。
いやまあ、ええもん、観させてもらいましたわ。