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エリザのために

2017年09月07日 00時00分57秒 | 洋画2016年

 ◎エリザのために(2016年 ルーマニア、フランス、ベルギー 126分)

 原題 Bacalaureat

 監督・脚本・製作 クリスティアン・ムンジウ

 出演 アドリアン・ティティエニ、マリア=ヴィクトリア・ドラグシ、リア・バニャー

 

 ◎ルーマニアという縮図

 チャウシェスクの独裁政治に終止符の打たれたのが1989年だった。ぼくがルーマニアに行ったのは1982年だった。当時東欧はどこでも似たようなもので社会主義国ってのはこんなに自由がなく活気もなく汚職と不正が横行してるんだろうかっておもった。そのいちばん顕著な国がルーマニアだった。だからブカレストの印象はかなり悪かった。

 この映画で、娘エリザことマリア=ヴィクトリア・ドラグシのために右往左往する父親アドリアン・ティティエニもまたチャウシェスクの時代に祖国に絶望してドイツへ移住してたんだけど、革命が起こって国が変わったと信じて帰国したという設定になってる。

 祖国のことが好きなのに、その祖国にいたら自分の人生がだめになってしまうという、あまりにも辛い境遇の男だ。けど、かれは帰国したものの、以前よりもさらにひどい状態になってしまったルーマニアで生きるしかなくなってしまい、結局、医師というまずまずの地位と収入に甘んじながら、英語の教師でエリザの家庭教師でもある子持ちのマリナ・マノヴィッチと不倫を続けるという人生に埋没している。

 このまるで見栄えのしない医者が、愛人マリナ・マノヴィッチとのエッチの真っ最中に愛娘のエリザが暴行されるんだな。よくある設定といえばそれまでだけど、ともかく娘マリア・ドラグシはその衝撃から留学試験に失敗しかけちゃう。

 これに、アドリアン・ティティエニは泡を食って、コネを頼りに東へ西へと町の顔役たちのもとを駆けずり回って留学試験を通そうとするんだけど、かつて不正に怒って国まで捨て、さらに今もなお郷土愛と正義感と良心から祖国に絶望して娘の未来を案ずる自分が不正に必死になるという矛盾に満ちた構図は、なにもルーマニアの国情うんぬんってことじゃないっておもうんだよね。

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