◇お嬢さん(2016年 韓国 145分)
原題 아가씨
監督 パク・チャヌク
出演 キム・ミニ、キム・テリ、キム・ヘスク、ムン・ソリ、ハ・ジョンウ
◇サラ・ウォーターズの『荊の城』
なんでビクトリア時代のイギリスの物語が日本統治時代の韓国になったのかはわからないけれども、年表の上で西洋と東洋を移動させたらちょうどその時代になったってことかしら?
まあそれはそれとして、えらく評判のこの作品、いったいどうしてなのかって考えたんだけど、実はよくわからない。視点を変えて物語を再構築させるという手法は好きではあるけれど、だからといって評判をとっているのはそうした演出面だけではないだろうね。視点を変えることによって次々にどんでん返しの応酬がなされ、事件に巻き込まれていたはずのか弱き女中が実はそうではなくてなにもかも承知の上で陰謀をたくらんだ張本人のひとりというような展開が視点を変えるたびに煉瓦積みにされるというのは、視点を変えただけ以上の効果を持つ。そのあたりがうまいとおもわせたところだったんだろうね。
ただ、エロチックかどうかという点については、玉門と声に出したところで現代の観客はきょとんとするばかりで、朗読や晒し程度では誰の官能も刺激されないことはわかっているわけで、そうしたところ、この映画自体は実は官能劇ではないということになり、そんなものを期待して観に行った観客は肩透かしを食らったかもしれないね。