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☆=☆☆☆☆☆
◎=☆☆☆☆
◇=☆☆☆
△=☆☆
▽=☆

ダイダロス 希望の大地

2017年09月15日 20時59分13秒 | 洋画2012年

 ◇ダイダロス 希望の大地(2012年 カザフスタン 133分)

 原題 Myn Bala : Warriors of the Steppe

 監督 エイケン・サタイヴ

 出演 クラレイ・アナルベコヴァ、アリーヤ・アニュアルベック、アリーヤ・テレバリソヴァ

 

 ◇Myn Balaは、1000人の騎士っていう意味ね

 で、まあ1000人じゃなくてわずか100人の手勢で、ジュンガルの派遣してきた植民地総督とでもいう立場の司令官の本陣へ吶喊していくのがクライマックスになるんだけど、この戦い、史実の上ではなんていう名前がつけられてるのか、ぼくは知らない。

 映画では物語の時代は18世紀の初めとされてるから、たぶん、カザフ・ハン国が東部、中部、西部に分裂して遊牧民オイラト(モンゴル族ね)が築いたジュンガル帝国の襲来と占領を受けていた頃にあたるんだろうけど、実はカザフはこの頃すでに100年以上もジュンガルに苦しめられてて、もうぼろぼろのありさまだった。だから、史実をいえばロシア帝国に庇護をもとめてジュンガルの侵略から守ってもらったんだそうだ。だから、この映画みたいなカザフの人々が(カザクっていうのは放浪の民とか独立不羈って意味ね)自分たちのちからジュンガルを撤退させたかどうか、ともかく僕はよく知らない。なもので、どこまでが史実なんだろう?

 ちなみに、邦題のダイダロスだけど、これはないだろ。

 ダイダロスってのはギリシャ神話に出てくる発明家で、カザフスタンとは縁もゆかりもない。いや、だいいち、物語にダイダロスとか出てきた記憶はない。なんでこんな題名をつけたのか、まじ、理解に苦しむわ。

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たかが世界の終わり

2017年09月14日 20時50分48秒 | 洋画2016年

 △たかが世界の終わり(2016年 カナダ、フランス 99分)

 原題 Juste la fin du monde

 英題 It's Only the End of World

 監督・脚本 グザヴィエ・ドラン

 出演 マリオン・コティヤール、ナタリー・バイ、ヴァンサン・カッセル、レア・セドゥ

 

 △死期を知ったときのリアリズム

 まあふつうはどれだけ疎遠にしていても、死期が迫ったことを知らせようとしたときに、電話やメールとかでまずはそれとなく前置きするような気がするんだけど、どんなもんだろね?

 そんなことをしてしまったら物語にはならないかもしれないけど、仲の悪い家族、ぎこちない家族、ほんとうはそんなことはないのについつい諍いをおこしてしまう家族、愛しているというのは簡単だし子供が帰ってきたらおもいきり楽しませてやろうとおもいつつもどうにも感情がちぐはぐになって喧嘩してしまう家族、世の中にはいろんな家族があるもので、けど、死期という問題はそういうことを超越したところにあるような気がするんだけどね。

 で、この作品なんだけど、ギャスパー・ウリエルが死期をつきつけられ、疎遠にしていた実家に戻ってきて、自分の長くない人生を語ろうとするものの、案の定、ばらばらの家族はささいなことから喧嘩をしてとても死の宣告をされたことを告げられない。嫁という立場から客観的に物事を見ることのできるマリオン・コティヤールがいても尚、感情の起伏の激しい家族の仲は上手に行かないのだという、そういうもどかしさと哀れさはよくわかるんだけど、実際の家族はどうなんだろう?

 そういうことからいえば、あんまりリアリティを感じなかったな。

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手紙は憶えている

2017年09月13日 00時23分12秒 | 洋画2015年

 ◎手紙は憶えている(2015年 カナダ、ドイツ 95分)

 原題 Remember

 監督 アトム・エゴヤン

 出演 クリストファー・プラマー、ブルーノ・ガンツ、マーティン・ランドー

 

 ◎ルディ・コランダーを探す旅

 いったい誰が元ナチスの将校で、誰がアウシュビッツの生還者なのか。

 腕に入れ墨をされているからといって、戦犯として裁かれる恐怖から逃れるためなら入れ墨くらいする。認知症になったら自分の忌まわしくも鮮烈な記憶すらあいまいになってしまうものなんだろうか?70年前の罪を知ったとき人間は自裁できるものだろうか?70年間も使わずにいた拳銃の腕前は色褪せないものなのだろうか?そもそも認知症になって満足に出歩くこともできない人間に銃を持つことが可能なのか?それほどナチスは凄いのか?

 そんなことを訴えられているような気分になるんだけど、いやまあよくもこのハードな役を老年のクリトファー・プラマーが演じたなあ。トラップ大佐の真反対じゃんね。役者魂を見せられたような気がしたわ。いやそれは、ほかの出演者たちもおんなじか。

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ロスト・エモーション

2017年09月12日 00時00分00秒 | 洋画2015年

 ◎ロスト・エモーション(2015年 アメリカ 102分)

 原題 Equals

 監督 ドレイク・ドレマス

 出演 クリステン・スチュワート、ニコラス・ホルト、ガイ・ピアース

 

 ◎人類の共同体イコールズ

 人類を破滅させる元凶は感情であるにもかかわらず、感情を呼び起こす感染症が発生する。

 いかにもリドリー・スコットが制作総指揮だけあって、単純明快な題名だ。SF青春物としてはかっちりしているし、共同体に疑問をもった新人類かもしれない若者が恋をし、欲望に身をゆだね、共に脱出していくっていう筋書きは決して目新しいものではないけれども、人間はどこまでいっても自由を欲するしまた自由であってこそ人間なのだっていう主題は明確になってるんだから、これでいいのだ。

 安藤忠雄の建築物が未来の共同体の建物だっていうのは、わかる気がする。感情を排除したような無機質な建物は、モノトーンの画面構成にいかにもよく嵌まってるんだね。いや、クリステン・スチュワートたちが無味乾燥とした空間で、色彩に溢れた絵を描いているっていう印象的な場面には特にいいね。

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紙の月

2017年09月11日 22時47分59秒 | 邦画2014年

 △紙の月(2014年 日本 126分)

 監督 吉田大八

 出演 宮沢りえ、小林聡美、大島優子、池松壮亮、田辺誠一、石橋蓮司

 

 △貢ぐのではなくて

 新聞やら雑誌のようなありきたりな褒め方はしたくない。

 お金を介在にしてしか恋愛ができない女っていうのが原作者の主題だったみたいだけど、この作品はそうではないんだよね。そうではなくて、鬱陶しくてたまらないくらいに抑圧された生活から開放されてゆく切っ掛けとなるための恋愛がたまたま横領だったという世界観だったんじゃないかと。銀行に勤めてるから預貯金の横領になっただけの話で主人公の置かれている状況が別なところだったらそれなりの事件が起こったはずなんだけど、あ、それじゃ貢げないか。ま、いずれにせよ、抑圧された状況からの解放っていう吉田大八の得意な世界が広がってるようにおもったよ。

 けど、おっそろしいことに、この映画、封切りで観てたらしい。

 いやまあ僕もあかんな。すっかり内容を忘れてて佳境にいたったとき、なにもかもおもいだしたわ。

 でもさ、なんだか『禁じられた遊び』のラストみたいな終わり方なんだけど、あのバンコクってのはつまりは自由だけれども混沌とした別な世界の入り口っていう捉え方でいいのかしら?

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パッセンジャー

2017年09月10日 00時38分07秒 | 洋画2016年

 ◇パッセンジャー(2016年 アメリカ 116分)

 原題 Passengers

 監督 モルテン・ティルドゥム

 出演 ジェニファー・ローレンス、クリス・プラット、ローレンス・フィッシュバーン、アンディ・ガルシア

 

 ◇アヴァロン号人工冬眠システム故障

 なんていうのか、この頃のSF映画は神の啓示的なものが多くなってるのか、この冬眠システムの故障もそんな印象を受ける。

 アヴァロン号という人類の希望を託された宇宙船の故障を期せずして救うことになる連中の誰にも知られずに行われる犠牲的行動の顛末が物語になってるんだけど、このときまちがって目覚めてしまうという事態そのものが目に見えない摂理だったのではないかと解釈することによって神の啓示があったんじゃないかっていう雰囲気を漂わせてるからだ。

 いずれにしても宇宙船っていう密室劇はどうしても似たり寄ったりの世界になっちゃうのは仕方のないことなのかしらね?冬眠カプセルの故障で目覚めた男が孤独に耐えかねて美人を目覚めさせるのはいいとして、パニックになったとき相次いでカプセルが故障して一部の集団が次々に目覚めてそれが協力して船内でコロニーを作っていたっていう展開にしてほしかったな。

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ストックホルムでワルツを

2017年09月09日 21時37分07秒 | 洋画2013年

 ◇ストックホルムでワルツを(2013年 スウェーデン 111分)

 原題 Monica Z

 監督 ペール・フライ

 出演 エッダ・マグナソン、スペリル・グドナソン、シェル・ベリィクヴィスト

 

 ◇異国の歌は母国語で歌え

 モニカ・ゼタールンドを知らないからなんともいえないんだけど、ジャズ歌手なんだよね?

 なんでワルツなんだろ?という疑問はおもったけど、まあ、邦題なんだからあんまり深く追及したところで仕方がないかもしれないね。

 まあ、それはそれとして、モニカが行き詰ったときに気づいた「母国語で歌えばいいんだ、それでないとほんとに心に沁みる歌詞にならないんだ」というのは、すごくわかる。だって、外国語がまったくわからない僕は、英語やフランス語で歌われるとかっこいいとはおもうんだけど、なにを歌ってるのかちんぷんかんぷんなんだもん。

 とはいえ、日本語訳が悪かったらどうすんだろ?ともおもうんだよね。

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キングコング 髑髏島の巨神

2017年09月08日 00時34分02秒 | 洋画2017年

 ◇キングコング 髑髏島の巨神(2017年 アメリカ 118分)

 原題 Kong : Skull Island

 監督 ジョーダン・ヴォート=ロバーツ

 出演 トム・ヒドルストン、サミュエル・L・ジャクソン、ジョン・グッドマン、ブリー・ラーソン

 

 ◇伊福部昭が聴こえてこないんだけど

 イカリ・グンペイとかいう日本人まで登場させただけでも、このジョーダン・ヴォート=ロバーツっていう映画マニアが『エヴァンゲリオン』とゲーム・クリエイターの横井軍平を贔屓にしてるのはよくわかる。けど、とってもよくわかるんだけど、これ、まじに邦画の『キングコング対ゴジラ』の設定じゃん。

 まあ、1973年っていう、ベトナム戦争の時代になってるっていうことと、執拗なまでのヘリコプター作戦っていうことからも想像できるとおり『地獄の黙示録』そのままなんだよね。いや、そんなことはいいんだけど、ラストの壁画は大丈夫なのか?

 恐竜、翼竜、蛾、三つ首の竜とくれば、もうこれはまちがいなくゴジラ、ラドン、モスラ、キングギドラだぞ。

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エリザのために

2017年09月07日 00時00分57秒 | 洋画2016年

 ◎エリザのために(2016年 ルーマニア、フランス、ベルギー 126分)

 原題 Bacalaureat

 監督・脚本・製作 クリスティアン・ムンジウ

 出演 アドリアン・ティティエニ、マリア=ヴィクトリア・ドラグシ、リア・バニャー

 

 ◎ルーマニアという縮図

 チャウシェスクの独裁政治に終止符の打たれたのが1989年だった。ぼくがルーマニアに行ったのは1982年だった。当時東欧はどこでも似たようなもので社会主義国ってのはこんなに自由がなく活気もなく汚職と不正が横行してるんだろうかっておもった。そのいちばん顕著な国がルーマニアだった。だからブカレストの印象はかなり悪かった。

 この映画で、娘エリザことマリア=ヴィクトリア・ドラグシのために右往左往する父親アドリアン・ティティエニもまたチャウシェスクの時代に祖国に絶望してドイツへ移住してたんだけど、革命が起こって国が変わったと信じて帰国したという設定になってる。

 祖国のことが好きなのに、その祖国にいたら自分の人生がだめになってしまうという、あまりにも辛い境遇の男だ。けど、かれは帰国したものの、以前よりもさらにひどい状態になってしまったルーマニアで生きるしかなくなってしまい、結局、医師というまずまずの地位と収入に甘んじながら、英語の教師でエリザの家庭教師でもある子持ちのマリナ・マノヴィッチと不倫を続けるという人生に埋没している。

 このまるで見栄えのしない医者が、愛人マリナ・マノヴィッチとのエッチの真っ最中に愛娘のエリザが暴行されるんだな。よくある設定といえばそれまでだけど、ともかく娘マリア・ドラグシはその衝撃から留学試験に失敗しかけちゃう。

 これに、アドリアン・ティティエニは泡を食って、コネを頼りに東へ西へと町の顔役たちのもとを駆けずり回って留学試験を通そうとするんだけど、かつて不正に怒って国まで捨て、さらに今もなお郷土愛と正義感と良心から祖国に絶望して娘の未来を案ずる自分が不正に必死になるという矛盾に満ちた構図は、なにもルーマニアの国情うんぬんってことじゃないっておもうんだよね。

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ワンダー・ウーマン

2017年09月06日 18時12分19秒 | 洋画2017年

 ◇ワンダー・ウーマン(2017年 アメリカ 141分)

 原題 Wonder Woman

 監督 パティ・ジェンキンス

 出演 ガル・ガドット、クリス・パイン、エレナ・アナヤ、デヴィッド・シューリス

 

 ◇セミッシラ島の王女

 なにがびっくりだといって、監督のパティ・ジェンキンスだ。2003年、シャーリーズ・セロンの『モンスター』で初演出して以来ずっと沈黙してきたのが、いきなりこの作品の監督になるってのはどういう展開なんだろうか。1作目と2作目の違いというより、14年間もなにをしてたんだろっておもうし、作品の選択肢はほかになかったのかって気もする。ただ、女性監督の作品としては史上最高の大ヒットだっていうんだから、これはこれでよかったのかもしれないね。

 次にびっくりしたのは、ガル・ガドットだ。祖国イスラエルで18歳から2年間兵役に就いていたせいで、この作品はレバノンで上映不可らしい。なんなんだ、それは。いや、レバノンにしてみれば、イスラエルは共に天を戴かずというほどの敵国なんだから上映禁止にするというのもわからないではないけど、なんだかな~とはおもう。

 その昔『アマゾネス』を見たとき、なんだかもうたまらずわくわくしたものだけれども、そのアマゾンの王女っていう設定かとおもえばそうじゃなくってまるで異次元のアマゾンの王女だったのね。なるほど~。だから第一次世界大戦のときにこっちの世界に来て現代になってもおんなじ姿かたちなわけなのね。とはいえ、この時代設定、ちょっと難しくないか?ことに日本人には馴染みが薄いし、どれくらいの観客が理解できてるんだろう?

 まあ、そんな余計な心配はともかく、ようするにヒッポリタ女王の娘ダイアナの紹介篇っていうわけで、冒頭とラストは現代だし、もうバットマンことベン・アフレックからのメールが届いて、正義の戦いを予感させるわけで、これからは『アベンジャーズ』みたいになっていくのねって感じだ。ふ~む、なんだかな。

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バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生

2017年09月06日 00時57分21秒 | 洋画2016年

 △バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生(2016年 アメリカ 152分/183分)

 原題 Batman v Superman: Dawn of Justice

 監督 ザック・スナイダー

 出演 ベン・アフレック、ヘンリー・カヴィル、ガル・ガドット、エイミー・アダムス

 

 △スーパーマンは死んだのか?

 実際、ガル・ガドットの登場で「あ~ワンダー・ウーマンへの繋ぎだったのね?」と感じちゃうのは僕だけなんだろうか?それはさておき、もうぎりぎりのところでバットマンとスーパーマンの対決させるんだけど、たしかに地球外生命体であるスーパーマンのちからは人類がまのあたりにするものではないし、バットマンの異常とも執拗ともいえる過激な懲らしめは異論の出るところではあるだろう。まあそのあたりはわからないでもないんだけど、結論ありきの混戦にしては上手に纏めようとしてた観はある。

 まあ、あとは好きか好かないかっていう問題だけだ。

 で、最後に浮遊しかける墓の土はなんだ?

 わかってていってるんだけどさ。

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エヴォリューション

2017年09月05日 00時12分36秒 | 洋画2015年

 △エヴォリューション(2015年 フランス 81分)

 原題 Evolution

 監督・脚本 ルシール・アザリロビック

 出演 マックス・ブラバン、ロクサーヌ・デュラン、ジュリー=マリー・パルマンティエ

 

 △スペイン・カナリア諸島ランサローテ島

 おもせぶりなだけの退屈な物語っていう印象は拭い去りがたい。

 エヴォリューションってのは変異と淘汰による進化をいうらしいんだけど、女と少年だけの島が未来のありさまなのか、それとも進化の過程の中の実験場なのか、あるいは異星人の侵略の過程なのか、それともこの島だけが特異な進化を遂げてしまったのか、それはわからないし、映画も明確には結論づけてないんじゃないかしら。

 まあ、胎児が体内に埋め込まれて、いわば培養体のようにされたとおぼしき少年マックス・ブラバンの真っ赤なセーターと真っ赤なヒトデがやけに鮮烈で、そのヒトデをマックス・ブラバンが石でみずから叩き潰してしまうのはなんとも暗示的だし、女の背中にある蛸のような吸盤も謎のままだ。

 とはいえ、マックス・ブラバンがこの島を抜け出していくことによって、このふしぎな進化のありさまは世界の知るところとなるのかもしれないし、もしかしたら世界のすべてがとうにこの島のようになっているかもしれないんだけど、そんなことはどうでもいい。つまりは、マックス・ブラバンの自我がめざめ、それによって幼年期から脱していくさまが抽象的に描かれているとおもえばいいんじゃないかと。

 前作の『エコール』もなんとなく似たような世界観で、あちらは少女から女性へ育て上げてゆく一種の孵化器めいた施設を想像させたけれども、この監督ルシール・アザリロビックはやっぱり誕生と進化がモチーフなんだね。どちらも子供と女性だけの世界だけど。ただ、2004年に前作を撮ってまもなくこの作品の製作を希望したらしいんだけど、スポンサーを集めるのに10年も掛かったっていうのは、う~ん、なかなかこういう世界を映像にするのは理解と賛同が得にくいのかしらね。わかるようなわからないような…。

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シークレット・オブ・モンスター

2017年09月04日 00時18分58秒 | 洋画2015年

 ▽シークレット・オブ・モンスター(2015年 イギリス、フランス、ハンガリー 116分)

 原題 The Childhood of a Leader

 監督 ブラディ・コーベット

 出演 ベレニス・ベジョ、ステイシー・マーティン、リアム・カニンガム

 

 ▽一指導者の幼年時代

 ラスト数分で独裁者になっているとはいえ、それまではもう延々と単にわがままな癇癪持ちのくそ生意気で悪賢いだけの小僧の日常を追いかけてるだけで、こいつが成長して一国を手に入れることになるとはとてもおもえないんだよな。

 もちろん、ヴェルサイユ条約締結の頃というから世界史的に観ても不安定この上ない時代で、父親はいないわ、母親は不倫してるわで、家庭はなかば崩壊してるし、妙にまわりがエロい世界だったりもするんだけど、そんなものは独裁者になっていく上では必須のことではないし、こんな金持ちの家は履いて捨てるほどあったはずで、つまり、核心から遠いんだよね。

 で、もともとは原作があってサルトルの「一指導者の幼年時代」だそうで、つまりはヒトラーを匂わせてるわけなんだけど、だったらそのままヒトラーの幼年時代をまっこうから描いた方が良かったんじゃないかっておもうわ。そんなことないのかしら?

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マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ

2017年09月03日 21時50分47秒 | 洋画2015年

 ◇マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ(2015年 アメリカ 95分)

 原題 Maggie's Plan

 監督・脚本 レベッカ・ミラー

 出演 グレタ・ガーウィグ、イーサン・ホーク、ジュリアン・ムーア

 

 ◇なんてまあわがままな三角関係

 そもそも大学で働いていて充分に恵まれた生活をしているグレタ・ガーウィグがいくら恋愛下手とはいえシングルマザーになろうと決意するのが飛躍し過ぎな気もしないでもないけれど、まあそれはさておいて、ちょうどうまい具合に小説家になろうとかいう甘っちょろい考えの文化人類学者イーサン・ホークと出会っちゃうのもご都合主義な気もする。

 で、さらにいえば、小説なんて読んですぐに書いた本人を好きになっちゃうものなんだろうかっていうところが嘘っぽいし、もうちょっというと、イーサン・ホークと大学教授のジュリアン・ムーアを離婚させ、ていうか略奪して再婚したものの、結局はまたジュリアン・ムーアのもとへ返そうと計画するとかって…いくらなんでも自分勝手だろうっておもう。

 ところが、この不器用な3人のこじれた三角関係がなんだかお洒落に展開していくのに「まあぎりぎりおもしろいんじゃない?」とかっておもっちゃう。なんか騙されたような感じだ。

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はじまりへの旅

2017年09月02日 18時54分03秒 | 洋画2016年

 ▽はじまりへの旅(2016年 アメリカ 118分)

 原題 Captain Fantastic

 監督・脚本 マット・ロス

 出演 ヴィゴ・モーテンセン、フランク・ランジェラ、キャスリン・ハーン

 

 ▽『モスキート・コースト』のワシントン州版か

 アメリカ北西部ワシントン州の山奥にこもってサバイバルライフを実践している父と6人の子供たちという設定だけは妙に『北の国から』みたいで魅惑的だったんだけれども、ところがどうして父親のヴィゴ・モーテンセンはなんとも偏屈すぎて、その偏執すぎる生活と教育に妻のキャスリン・ハーンは心を病み入院の果てに死に、娘の死に堪えられなくなった舅フランク・ランジェラがちからづくで孫たちをひきとるっていう展開はまだ納得できるものの、それが結局、爺さんちから脱走して母親の遺灰を散じて弔うという、もういつの時代だよっていいたくなるような内容に、実は辟易した。

 アナログにはアナログの好さがあるし、自然回帰はそれなりに有意義だろう。もちろん、そんなことはわかってるけど、過激な行為の果てには無理が祟って周りや家族に迷惑をかける。そんなことをしてまで押しとおさなくちゃいけない拘りは、ぼくは認めたくないな。でも、ふしぎなくらいに評価が高いんだよね。ぼくの目が曇ってるのかな?

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