Creator's Blog,record of the Designer's thinking

フィールドワークの映像、ドローイングとマーケティング手法を用いた小説、エッセイで、撮り、描き、書いてます。

京都暮らし139. 往事の住まいとしての建築

2009年11月10日 | Kyoto city
 京都御所御常御殿は、いにしえの宮廷人達の暮らしの場であった。そんな暮らしの場である住まいとして捉えれば私の専門分野である建築の話題になってくる。そう思いながら拝観してゆくと、これはとても住めるような設えではないと思われる。
 まずこの威風堂々とした建築、だが居室をみると天井高は、通例の住宅の二階分の高さがあり、居室の気積(居室空間の体積)が大変大きいのである。当時冬の暖房と言えば、囲炉裏や火鉢程度だとすれば、この大きな気積で用いる道具としては不十分だ。 しとみ戸を降ろし屋内の建具を閉めきり、僅かに天窓からの光をたよりに、着込んで暮らす他なさそうだ。 御所の冬は、部屋の中であっても極めて寒かったと私は推測している。
 そう考えていると、桂離宮や修学院離宮を思い出す。こちらの離宮は御所程の気積ではなく、むしろ通例の武家住宅などの気積に近い上に屋敷全体がこぢんまりしており、住まいとして成立しやすい。従って冬の寒さを避けるために設えたのが離宮だったのではないかと推測する。宮廷人達は、寒いときは御所に棲むのに耐え難く、離宮に避難されたと、私は想像した。
 御所を歩きながら、往事の住まいとしての建築に、そんな思索をめぐらしていた。

京都御所,御常御殿
Fuji FinepixS5pro,AF-SNikkor16-85mm/f3.5-5.6ED,
シャッター:1/142,絞りf6.3,焦点距離25mm,ISO100,
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